日本の力が 尽きるとも 不滅の力 南雲艦隊
サイパン強襲作戦が発動、といっても南雲艦隊の都合で決行日時が決まるのだが、発動はされた。
南雲艦隊は補給艦を各地に派遣し重油を降ろす。まず各地で重油を降ろし火力発電所の運転率を上げることにした。各艦艇も海軍艦艇に重油を提供している。他にも各種物資と特に航空揮発油と航空滑油は泣いて喜ばれた。
戻ってきても十の付く日に減った分が復活していたのだ。
年は明けて昭和十九年となり、一月十日に五回目の提供が終わると出撃した。
潜水艦戦隊はトラック方面の偵察と南シナ海の対潜戦闘に分かれて出かけた。潜水艦で対潜戦闘とは?と言う声も艦隊内部から出たが、潜水艦艦長は性能が上がった今十分やれると意気軒昂に出撃して行った。補給部隊は台湾と半島へ重油と航空機揮発油の提供に。
その間、敵機動部隊の襲撃はない。クリスマスでも祝っているのだろうか。馬鹿にされている気がする日本だった。
昭和十九年一月十三日〇九:三〇 硫黄島南南西二百海里
「逆探に反応あり」
「方位は」
「二時方向です」
『艦橋、電探室。逆探に反応、二時方向』
「二時方向だな」
『二時方向です』
「引き続き監視を」
『了解』
「艦長」
「総員警戒配置。旗艦にオルジスで通信」
「ハッ」
比叡の逆探は、帰ってきてから装備された。苦労して開発したものでまだ数が少ないのを装備してくれた。比叡なのは大和級戦艦のテストベッドとなった艦橋があって高さもあり装備に都合が良かったからだ。動作が不安定だったが、回路の真空管や真空管ソケット・電線などを手持ちで使えるものに交換すると安定した。ちなみに比叡しか装備していない。数がないのだ。
なお、艦名は陽炎が戻しても性能低下が無かったので全艦元に戻した。
「赤城から返信『艦隊右一斉回頭用意』」
「面舵十六点回頭用意。他艦の動きに注意」
「赤城、回頭発動しました」
「面舵十六点回頭」
全艦回頭が終わると
「赤城より信号。読みます『艦隊第二戦速 総員警戒配置 対空警戒航行序列』」
「第二戦速」
「本艦位置は赤城右前方です」
「赤城の右前方に艦を持って行くぞ」
「五航戦増速、隊列を離れます」
「発艦させるんだろう」
五航戦は索敵機と護衛機を発艦させるために風上へと舵を切った。幸い西風であり電波源から離れる向きだ。九七艦攻が翔鶴・瑞鶴それぞれ二機と零戦が二機ずつ着く。三機編隊四個、計十二機の索敵機は発艦した。艦隊進行方向二時方向とわかっていればこその機数だ。
順調に飛行している索敵編隊は翔鶴編隊。
『翔鶴二番三番機、三時上方に機影』
隊内無線で報告をする。機影が見えたときに電波管制は解除して良いことになっていた。
「よく見えるな、あいつ。どうだ見えるか」
「機長。見えました。複数の模様」
「貴様達、向こうに行くべきか。このまま直進すべきか。どう考える」
『翔鶴一番が向かうので他の編隊は現在針路を保つように』
「隊長機が向かうのか。ではものままの進路を取って飛行を続ける」
「「了解」」
当然のように翔鶴一番は邀撃に来ただろう戦闘機四機と空戦になった。
『こちら二番機。敵機視認。四機です』
「他に見えないか」
「「『『見えません』』」」
「飛曹長と一飛曹は迎撃に向かえ」
『『護衛がいなくなります』』
「防弾はしっかりしている。何故かだが」
『万が一ということもあります』
「わかった。一飛曹は残れ」
『飛曹長行きます』
「偵察員は敵機と遭遇したと打電せよ」
「打電します」
敵機と接触した飛曹長が
『敵機はグラマンの新型。向こうでやり合った奴です』
瞬く間に二機が墜落していった。残り二機はその間にこちらへ接近してくる。
「一飛曹、頼む」
『一飛曹了解』
一飛曹が一機撃墜する間に接近されたが、飛曹長が追いついて最後の一機も撃墜した。
「二人とも良くやった。グラマンの新型はどうか」
『一飛曹です。向こうと変わりません』
『飛曹長も同じく』
「被弾はしたか」
『『ありません』』
「ではこのまま直進する」
同じ頃、瑞鶴索敵二個編隊も邀撃に遭っていた。同じように敵戦闘機を撃墜。索敵を続ける。
敵艦隊を発見したのは瑞鶴二番だった。
敵艦隊は、空母四隻基幹の機動部隊が二群。それぞれ戦艦二隻が付いている。それぞれに巡洋艦が六隻で駆逐艦は十二隻。それと離れたところに駆逐艦がいる。外側の監視鞘代わりだろう。
概要を打電し悠々と帰途につく索敵機。瑞鶴二番。
それを驚愕の表情で見ているのはまさしく発見された艦隊、33任務部隊の将兵だった。
「飛行長。邀撃にいった奴らから通信は?」
「ありません」
「ないだと」
「まさか全機やられたのか」
「他には考えられません」
「最初の通信だと『古いゼロだ。初期の塗装だし、型も古いぜ』と聞いたが」
「はい。その後で『助けてくれ、奴らの方が速いし機動性も良い。回り込まれた』でその後はありません」
「新しいキャットよりも速く機動性も良い。旧式のゼロがか」
「特別な機体に選りすぐりのパイロットを乗せてきているのかもしれません」
「わざわざ旧式でか?」
「日本軍に聞かないとわかりませんよ。空母が無いのに戦争を仕掛けるような奴らですよ」
「アカギか。どこ行っちまったんだなろうな。まあ仕事が楽で助かるが」
「上空の機体もケイトだそうです」
「旧式なのに今も上空で電波を長々と出していやがった。しかも、対空砲で撃ちまくられながらも。アレも特別か」
「そうでしょうね。本当になんなんでしょう」
「俺が知るか。それよりも索敵機を出す準備は」
「対空砲が撃ち終わったら出せます」
「よし。艦隊撃ち方止め。索敵機を出すぞ。対艦装備を素早くやれ」
「やる気ですか」
「どうせ日本には商船改造空母しかいない。すぐに片が付くだろう。あんな機体だが数は乗らないだろ」
「まあそうですが」
「どんな機体でも帰るところが無ければ海の藻屑だ。さっさと片付けて台湾に向かうぞ」
「ついでに日本の奴らを片付けるんですね」
「今回の出撃任務は台湾の航空基地攻撃。台湾周辺で潜水艦の未帰還があったので安全確保しろと言われたから出てきたんだ。もっとも台湾にたいした機数はないからパイロットの連中にはレクリエーションみたいなものだ」
「そうですね。これが終われば交代でハワイへ休暇に向かいますから」
中小改造空母の寄せ集めで機数もせいぜい100機程度だろうと予想し、またスコアが増えてしまうと考えているアメリカ海軍33任務部隊。
この時点で南雲艦隊との距離が五十海里(57マイル)という至近距離になっていることに気が付かないまま。どうせ日本はここまで出てこないと高を括りピケット艦を配置せずに索敵機も飛ばしていなかった。邀撃機はレーダーに索敵機の反応が出てから慌てて発艦させた発艦待機状態の戦闘機だ。
アメリカ海軍33任務部隊には油断していたツケが回ろうとしていた。
次回更新 11月22日 05:00
一斉回頭が終わったのは、レーダーで発見される距離の少し手前。アメリカ任務部隊は巡航速力なので離れていきます。索敵機が発見されるまでは。
南雲艦隊は高速になりすぎたので巡航速力以上の艦隊速力は他の艦との整合性をあえて取らずに南雲艦隊だけで通用する速力に変更しています。一番遅い加賀で三十五ノットも出るようになったため。他の艦と共同で行動する作戦は無いものとしています。機関性能が上がっているので燃費も良くなり燃料の問題もありません。十日ごとに重油はほぼ一杯になるし。
巡航速力十八ノット、第一戦速二十一ノット、第二戦速二十四ノット、第三戦速二十七ノット、第四戦速三十ノット、第五戦速三十三ノット。それ以上はノットで指示。
アメリカ陸軍はヨーロッパに注力しているため、太平洋方面の戦力は小さいです。誰かが喚いていますが小さいままです。対日戦は海軍と海兵隊が主役なんでしょうね。南雲艦隊が消息不明というなんというラッキーでここまで楽勝でしょうし気持ちもユルユルでしょう。




