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人は俺たちを呼ぶ 南雲艦隊 南雲艦隊

本艦隊あらば十分戦局の逆転も可能。

 大湊にやってきた連合艦隊司令長官と南雲長官が会った。お互いの参謀長と南雲艦隊参謀達も参加している。


「南雲君、だな」

「古賀さん、お久しぶりです。南雲です。連合艦隊司令長官になられたとか。山本さんはどうされたのですか」


 南雲忠一と言っても書いてもこの世界では ´ が付いていない。 ´ が取れたのだ。それが元の世界だと確信を深める原因にもなっている。全員元の名前に戻したが、一部の乗組員からはせっかく格好良い名前になったのにと残念がる声も上がった。不死身じみた体がどうなっているかわからないが、元の名前は大事だった。

 大湊の艦隊では陽炎が銘板を元に戻す作業をしている。そして性能を確認してみることになっている。銘板を元に戻したら艦の性能も戻ったなど笑い話にもならない。もし性能が元に戻ったらまた銘板を戻して名前も変更したものに戻そうという話にはなっていた。


「山本さんは辞められてしまってな、お鉢が回ってきた」

「辞められたのですか」

「君たちの艦隊が纏めて消息不明となって、戦況は劣勢となった。消息不明となった原因は不明だがその責任は重かった。山本さんをよく思わない人間が中心となって突き上げを始めたのだ。真珠湾攻撃を纏め上げた主要な者達も責任を取らされてな。連合艦隊も軍令部も」

「君たちからは十二月八日を過ぎても、なんの音沙汰もない。消息不明で謎の大量遭難事件として大騒ぎになった」

「ご心配をおかけしました。しかしなんと言いますか。それは我々の責任ではありません。何か不可思議な存在によって巻き起こされたのです」

「不可思議な存在?」

「我々もまた確認出来ておりません」

「どういうことだ?」


 いろいろ資料として纏めてあったものを示し、言葉と共に経緯を理解してもらう事になった。


「信じられんが、この写真やあちらの文献だという書物から事実だと認めざるを得ない」

「そうですな。長官。しかし、この信じられない性能の向上とは事実なのでしょうか」


 伊藤整一連合艦隊参謀長が信じられないという面持ちで発言をした。


「伊藤参謀長。それは事実だ。これから陽炎が性能試験に出るが乗ってみるか」

「さすがに私では現場に邪魔でしょう。駆逐艦の艦橋は狭すぎます(場違いに過ぎる)」

「それならば、そこの君。参謀か。中佐だな。彼ならば良いでしょう」

「陽炎に乗せてくれるというなら良いだろう。通信参謀、陽炎に乗り組み性能を確認せよ」

「ハッ、通信参謀、陽炎に搭乗し性能試験に立ち会います」


 その日の午後、陽炎は大湊を出港した。周囲の漁協には性能試験と何発か発砲すると通達を出してある。


 通信参謀は陽炎の艦橋で信じられない思いだった。速力計が四十ノットを超えてもまだ加速する。そして最大戦速ではなかった。エンジンテレグラフを見るとまだ第四戦速。その後、最大戦速では速力計を振り切ってしまった(陽炎は出ても三十五ノットのはず!)。主砲は仰角を余り取らなくても一万まで届いたそうだ(砲術は苦手だったが三十度くらい取らないと無理だろう?)。おまけに電探室を覗いたら見たことの有る計器が、とても快調そうに作動している(作動は不安定でいつも真空管で悩まされているのに)。極めつけは厠だ。どんなに掃除していてもだいたい匂う。それが匂わない。艦内を歩けば電灯が明るい(こんなに明るくないぞ)。


 通信参謀は陽炎帰港後に会議室まで戻り、ありのままを報告した。

 俺も乗ってみるかという連合艦隊司令長官の希望を断り、横須賀に帰投してもらう。

(まだ、新鮮なカニとシジミを味わっていないからな。リンゴもな。精神を安定させるためにもまずは休養だ。戦争はそれからでも遅くあるまい)

 そう、艦隊から重油や小型船舶用の石油などを提供する引き換えに海産物やリンゴを届けてもらっている。やたらしょっぱい新巻鮭は保存食として元々大量に積んであった。

 現在の戦況は聞いた。かなり不利でもう降伏もやむを得ないというところまで来ているそうだ。だが、この艦隊があれば十分戦局の逆転は可能だろう。ただ、むやみやたらに行動も出来ないのでここにしばらくいるだけだ。



 横須賀に帰投した古賀連合艦隊司令長官と伊藤連合艦隊参謀長は精力的に活動を開始した。

 あの戦力が復活したこと。経緯はわからないが強力になっていること。それらをかんがみどこに投入するのが最適か。軍令部や大本営などを巻き込み確認と投入場所を最短時間で決定した。


 マリアナ強襲である。


 マリアナは開戦当初グアムを占領したものの、日本海軍から有力な空母がいなくなりあっと言う間に奪還されたどころかサイパン島まで占領されてしまった。

 情報に入ってくる敵超重爆の性能によるとサイパン島から日本全土がほぼ爆撃圏となる。超重爆によるサイパン島からの日本全土爆撃を防ぐには、配備以前に奪還が不可欠だった。ただでさえ敵機動部隊による攻撃で本土と通商路は痛めつけられている。超重爆によるサイパン島からの日本爆撃はトドメとなるだろう。

 超重爆によるサイパン島から日本全土爆撃を阻止するためのマリアナ奪還の前段階としてマリアナ強襲が最適であるとされた。

 

 そして参加戦力は南雲艦隊だけだった。日本には参加出来る大型艦艇は無い。戦艦などは重油不足で軍港に根が生えそうだった。以前の海戦で損傷したまま資材不足で修理出来ない艦艇もある。

 動いているのは船団護衛艦艇と対潜艦艇だけだった。


次回更新はぼちぼちと不定期。十一月中に終了予定。投稿予約時間は午前五時です。

人物名は偉いさんのみで後は階級や役職名で。


十八年中に敗戦と思いましたが意外と頑張っている。あるいは米軍が手を抜いている。主力空母の無い日本は海上封鎖されておしまいなので、多分手抜きというかゆっくりでしょう。十九年の夏頃に簡単に片を付けるくらいのつもりで。それかBー29の実用試験に使われて成功すれば全力で。かな。

ヨーロッパも先が見えている状態でしょう。


通信参謀の感想(ヤック、デカルチャー!)


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