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帰ってきたぞ 帰ってきたぞ 南雲艦隊

帰ってきたはずですが、確証は無くうかつに動けません。

 日本が敗色濃厚となった昭和十八年十一月。

 単冠湾に奴らは帰ってきた。


 去る昭和十六年十二月八日以降消息不明で、謎の集団遭難と考えられていた真珠湾攻撃部隊一行様である。



「参謀長、我々は帰ってきたのか」

「どうでしょう。航海参謀天測急げ」

「ハッ」

「しかし、見覚えのある山並みだぞ」

「なんとなくありますな」


「なあ、時間がわからんぞ。どうやって天測する?」

「なんとなくだが、アレは択捉島だと思う」

「じゃあそういう仮定で天測を行うか。寒いし、出撃したときと同じ日時に当て嵌めてみよう」


「艦長!大変です!!」


 通信室から駆け上がってきたのだろう。息も切れ切れな通信科の中尉が焦ってやってきた。


「落ち着け、何事か」

「ハッ。先程受信したラジオですが、日本語で放送しています。コールサインJOAK。NHKです」

「ここは日本か」


 しかし内容は深刻だった。 

 アメリカ海軍から空襲を受けたらしい。被害は深刻ということだ。


「作戦室に参謀と艦長も来てくれ。艦隊は現状維持。攻撃には反撃してよい」

「ハッ、通信長。各艦に通達。艦隊は現状維持。攻撃には反撃を許す」

「復唱「艦隊は現状維持。攻撃には反撃を許す」・・艦長、無線は使って良いのでしょうか」

「待て。長官。電波は出しても」

「かまわん」

「オルジスと無線で通達を出せ」

「ハッ」


「遅くなりました」

「おお、航海参謀か。天測結果はどうだった」

「推定ですが現在位置は単冠湾です。ただ正確な日時まではわかりません。月が1個だと良いのですが」

「そうか。では続けるぞ。ここが我々の元いた世界なのか、また違う世界なのかはまだ不明だ。ここまでは良いな」

「「「ハッ」」」


 一回異世界転移を経験したので物分かりが良くなっている面々。


「そこで、まず大湊に向かおうと思う」

「横須賀ではなく大湊ですか」

「横須賀にいきなりこんな艦隊が現れた、としよう。どう考えるか」

「難しいですな」

「ここが元の世界でなければまた助っ人稼業ですか」

「助っ人稼業か。もう疲れたのだよ」

「「「長官。それは我々も同じです」」」

「そこで大湊で様子を見ようと思う。もし、異様な日本であれば元の世界では無い。どこかでほとぼりを冷まそうと思う」

「可能でしょうか」

「可能かどうかか。そうだな。各艦の能力や機体の性能がここに来る寸前だったら可能ではないか」

「あの十の付く日にですか」

「異様に強力になっておりますな」

「ならば、どこかの中立国で日和見も可能です」

「うむ。まずそれを確認しよう。その後、大湊に向かう。異論のある者は」

「「「「有りません」」」」



 翌日、艦隊は単冠湾を出航した。目的地は真珠湾ではなく大湊である。夜間に月が1個であることを確認しほっとしている。あとは元の世界かどうか確認するだけだ。


 重巡天野 ( 筑摩 ´ ) 艦内では


「電探、作動良し」

「反応はどうだ」

「本艦左のこれは駆逐艦で、右前のこれは赤城・もとい、葛城でしょうか」

「ずいぶんはっきりとした反応だが、着けたばかりはよくわからんかったな」

「まさか、こいつもレベルアップとか」

「見張りからです『本艦左にあるは里見。右前方は葛城』」


 各艦とも電探の能力を確認したり艦に性能を発揮させるために散らばっている。


『艦内各員に告げる。これより全力運転に入る。揺れに注意』


 その日、重巡天野は全速四十ノットを超え四十三ノットを記録した。

 主砲は最大射程三万八千に届いた。

 艦隊で一番鈍足の出羽( 加賀 ´ )でさえも三十五ノット出た。


 補給部隊の輸送艦さえ二十四ノットという高速を発揮している。

 潜水艦も水上二十六ノット、水中十二ノット出る。

 航空機といえば

 零戦     三百五十四ノット

 九九艦爆   二百五十二ノット

 九七艦攻   二百五十一ノット

 零式三座水偵 二百三十三ノット

 九五式水偵  百九十ノット

 と軒並み前の世界よりも二十ノット前後高速になっている。

 零戦など高度六千まで五分三十秒というとんでもない上昇力を発揮した。

 防御力も補充部品の機体外板に7.7ミリ機銃を撃ち込んでも貫通されないどころか傷さえもつかなかった。20ミリ機銃を撃ち込まなかったのは、大砲並みと言われる炸裂弾を飛行甲板上で使うことなど出来ないからだった。

 海面に25ミリ機銃を撃ち込むと盛大な水柱が上がった。

 これで防御力も攻撃力も前の世界並と思われた。後は交戦までわからない。


    

 艦隊は襟裳岬沖を通過。もちろん陸から目視で発見出来ない距離を保っている。 

 しかし、三沢の機体だろう哨戒機に発見される。


「慎重だな」

「日章旗と軍艦旗を掲げていますから。それに見覚えがある艦型かもしれません」


 ゆっくりと近づいてきて旋回している。

 チカチカと信号を送ってきた。艦橋の中からでは時々見切れてしまう。


「信号員、読めるか」

「ハッ、読みます『貴艦の所属と艦名を教えられたし』」

「長官」

「うむ。我赤城 だ」

「信号員、『ワレアカギ』発信」

「ハッ、『ワレアカギ』発信します」

「そうだ。通信」

「ハッ、長官」

「最大出力で打て『ワレアカギ』とな」

「長官。良いのですか」

「かまわん、見つかったのだ。もし元の世界なら健在なことを知らせる」

「打ちます」


 三沢も連合艦隊も軍令部も各地も大騒ぎになった。消息不明だった赤城と思われる空母を含んだ艦隊が発見されたのだ。しかも『ワレアカギ』と返信をし、その後無線で『ワレアカギ』と発信した。



「長官。どうされますか」

「赤城と称する空母を含む艦隊はどこに向かっている」

「三沢からの報告では大湊と」

「本当に赤城か」

「現在三沢から写真が空輸されてきます」

「行方不明になったのではないのか」

「わかりません」

「そうだな」


 三沢から届いた写真は赤城そのものだった。他にも加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、比叡、霧島、利根、筑摩など行方不明と思われる全艦が潜水艦と補給艦も含め揃っている。何故か電探が載っているが。


「大湊に行き確認する。三沢まで機体の用意を」

「私も行きます」

「参謀長はここで「行きます」・わかった。同行を許す」

「ありがたく」


 翌日、連合艦隊司令長官は参謀長を伴い三沢に着いた。


次回更新 近日中 

五話から十話程度の予定です。見切り発車とも言います。


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