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――80――

ブクマが18,400名様、評価してくださった方も5,200名様超えました!

あとお気に入りユーザー登録も90名様超えていました、嬉しいです!

ご意見とコメント、感想、誤字報告もありがとうございますー!

本当に応援が続きを書く意欲になります! がんばりますー!

 グリュンディング公爵とセイファート将爵が前に出てきて、変わってノイラートとシュンツェルが後ろに下がった。礼をしようとした俺を将爵が止める。


 「非公式じゃ。気にせんでもよい」


 無茶言わんで欲しい。けどそう言われた以上仕方がない。簡易的な礼だけで済ませる。


 「あまり驚いてはいないようだな」

 「驚いてはいますよ」


 公爵がいかつい顔のままそう言ってきたんで一応抗弁。事実驚いてはいる。ただまあ、どっちかというとそこまでしなきゃならん状況なのか、と言う意味でではあるが。どうやら予想は当たっていたんだろう。


 「卿は今、卿自身が語らなかった点についてはどう思うかね」

 「ラウラ殿下のご意向をぜひ拝聴したいところです」


 俺がそう即答すると将爵がまた笑い出した。公爵は何とも言えず苦い表情をしている。


 「卿は聡いな」


 その顔で言われてもあまり褒められてる気がしない。だが非公式なら不躾な質問も許されるだろうから確認させてもらおう。


 「失礼な言い方になりますが、やはり殿下が目的の方がいらっしゃいますか」

 「かなり多い」


 やっぱりなあと内心でため息。うん、おかしいとは思ったんだ。年齢層の偏りが。


 貴族なら十歳程度の年齢差での結婚は珍しくないんで、三〇代前半ぐらいならワンチャンあり。そうでない場合息子がちょうどラウラと会いそうな世代の貴族。中間がいなかった。

 要するにここでいいところを見せて、美貌のお姫様であるラウラの婿候補に名乗り出ようって魂胆なわけだ。ラウラもちょうど適齢期ではあるしな。

 ネチネチ言ってきた伯爵家の面々は本人のか息子のかは別にして、年齢的にライバルになりうる俺をこの際貶めておこうとしていたわけだ。面倒な。

 同時に王太子殿下が近隣国からの援軍を受け入れないと言うか、受け入れたくない理由の一つでもあるんだろう。近隣国に恩を売られて代わりにラウラとの婚約とか持ち込まれると面倒くさいこと甚だしい。


 つまり本来ならフィノイが最優先のはずがどっかで目的がねじ曲がりそうになっている。敵は魔軍だが問題は魔軍のみにあらず、ってわけだ。もうひとひねりすれば歌劇かなんかのタイトルにならんかね。


 「卿はラウラに会ったことがあるのだろう。どう思ったかね」

 「お美しい方だとは思いましたが私には高嶺の花ですね」


 祖父としての発言なのだろうが呼び捨てにはちょっとびっくりだ。確かにこれは非公式でないとできんわ。そう思いながら俺が答えると公爵は大きくため息をついた。


 「皆が卿ほど分をわきまえておればな」


 何気に酷いことを言われてる。俺がラウラと釣り合うかどうかと問われれば確かに釣り合わないだろうけど。否定できんけど。この人実は親馬鹿ならぬ祖父馬鹿だろ。

 まあラウラとお似合いなのはマゼルなんでその点は流す。馬に蹴られて死にたくないし。だから将爵もそう忍び笑いしないでください。あとノイラート、笑いを我慢するのはしょうがないが顔真っ赤にしてるんじゃねえ。


 「その見識を見込んで卿に頼みがある」

 「一応、お伺いいたします」


 頼みじゃなくて命令だろうと思わなくもない。と言うか公爵が子爵に言うんだからどんな表現使ってても実質命令だよな。どんな無茶な命令を出す気だよと思っていたら想像の斜め上の事を言い出された。


 「この戦いで全員を納得させるだけの結果を出してもらいたい」

 「……は?」


 いやいや。まさかそのためにそんな格好してまで俺に会いに来たわけですか。


 「つまり『あれだけの功績を上げたツェアフェルト子爵でさえそんなことは言っていない』と言う口実で殿下に群がる虫を追い返そうと?」

 「端的に言えばそうなる」


 俺に何を求めてるんですか公爵。いや確かにラウラを褒美にくれとか言う気はねぇよ。ねぇけどさ。口が悪くなったのは内心だから許せ。


 「直接呼び出すと別の勘繰りがある。だからこんな場所に非公式かつお忍びで訪ねてきて、功績をあげたうえで殿下に興味ない態度をとれ、と」

 「その通りだ。そのかわり、無断戦線離脱の件も含めて纏めて評価、対応する」

 「無茶すぎる……」


 非礼の極みだが公爵ほどの目上を前に素でそう口走り頭を抱えてしまった。さすがに無茶を言っているという自覚はあるんだろう。俺の態度に公爵は何も言わなかったが、だからと言って俺の頭痛がなくなったわけじゃない。

 笑いを収めた将爵が口を開く。


 「卿には面倒ごとを押し付ける形になってしまい済まぬと思っておる。が、事は政治的な面が大きくての」

 「政治的……ですか」

 「卿は殿下にそのような考えを持っておらぬようなので伝えてしまおう。この戦場に大軍を引き連れてきた者たちは、殿下の婿候補としては全員落選しておる」


 とっさにノイラートとシュンツェルに視線を向けた。これは結構やばい。


 「ノイラート、シュンツェル、ここで聴いた事は他言無用だ。どこかに漏れていたら二人とも俺が斬る」

 「は……はっ!」


 二人が直立不動の姿勢で返答をする。流石に二人とも現状の把握はできているようだ。

 公爵と将爵もこのやり取りに対しては口を挟まない。あくまでも二人は俺の部下だから。その代わり責任は俺になる。二人から漏れたら俺も処罰対象ってことだ。二人の表情を確認したうえでもう一度将爵に向き直る。


 「大軍を連れてきている者は全員ですか」

 「全員じゃ。殿下が歴代最高水準の聖女だということは」

 「どこかで聴いたことがあります」


 ゲーム内知識だが。


 「ならば話は早い。そして神託を受けることができる存在が複数いるということは知っておるな」

 「はい」


 ゲームでは歴代最高聖女のラウラが一番優れているという設定になっているが、確かマゼルを鑑定するように進言したのは別の神官だったはず。ラウラかと思っていたら違うんだよな。

 もっともラウラの性格なら神託を受けた時点で自分からマゼルに会いに行きそうな気もする。二人が初対面だったのはそのあたりが影響しているのかもしれん。


 「別のものが別の神託を受けておる。殿下の子は高位につくであろう、と。このことは殿下本人ですら知らぬ」


 ノイラートやシュンツェルが息を飲んだ。一方の俺は驚きこそしたが、ゲーム内知識で言えばマゼルが王になるエンディングを知っているだけに妙な納得もある。

 ゲーム中にそんなことは話題にすらならなかったが、このレベルなら高位貴族内での最重要機密事項だろうから理解できなくもない。と言うよりこの言い方だとほとんどの貴族が知らないんじゃないか。

 そのあたりを頭の中で整理したうえで、半ば確認のために口を開いた。


 「だからここに大軍を率いてきたものは全員落選と言う事なのですね」

 「確かに魔軍がフィノイに向かったということは大問題だ。だが、それを好機ととらえるような考えの持ち主が国の高位につくことがあってはならん」


 代わって返答をしたのは公爵だ。現在、既に爵位貴族の子がさらに高位につくということは下手をすると王位と言う事さえ考えられる。だがそうなるとルーウェン殿下の立場はどうなる?

 変に欲深い奴が殿下の配偶者、もしくは義父の立場に立てば神託を現実にするために反乱でも起こしかねん。実のところ神託って必ず当たるわけじゃないんだが。魔王の強さとか肝心なところの神託はないし。


 しかしこの神託は結構悪質だな。これが「王位」なら逆方向に大問題だ。いっそラウラを殺してしまえと言うような過激派も出かねん。王太子殿下だってラウラを一生監禁するとか考える可能性もあるだろう。

 けど「高位」だと宰相とか公爵とか、その水準だってあり得るわけだ。一概に排除するには躊躇するレベル。宰相クラスに欲ボケが影響力持っていても困るには困るんだが。


 しかも内容はラウラの子、だ。娘なら王妃だってあり得る。もっと言えば養子だって可能性の範疇だ。予想できる選択肢が多すぎて王室至上主義派もラウラを利用したがる奴も暴走しようと思えばいくらでも可能。

 ゲーム的なエンディングを予言している神託としては正しい。正しいと言うか間違ってはいない。ただそれにしても微妙なラインだ。だから極秘扱いになっているんだろうけど。


 ラウラの子ってことは公爵自身のひ孫になるがその頃にはさすがに公爵生きてないだろうな。ああ公爵の跡継ぎがどう考えるかも考慮しなきゃならん。勇者(マゼル)との関係も全く触れられてないし。なんだかこの神託に悪意を感じるのは俺だけか?


 いやまてよ。よく考えたらゲームでも魔族はなんでラウラを狙っていたのかは説明されていない。あの当時のゲームだからなんかこうお姫様が狙われるのは様式美だったから気にもしてなかったが、考えてみれば殺さないようにしていたのには何か理由があるんじゃないか。もしそれが同じ根っこだったとしたら?


 いろいろ気にはなるが先の事はひとまず置こう。正直考えたくもない。目の前の問題に限れば遠回しな言い方してるが、要するに欲ボケかどうか(ふるい)にかけてもいるわけか。ただ欲ボケが動員できた兵力が予想以上に多かったんで深刻な食糧不足に陥ってるんだろうけど。

 もっともラウラの美少女っぷりを知ってればワンチャン狙うのもわからなくはないな。王族の皆様、自分たちの周囲が美貌の人間ばかりなんでその辺マヒしてませんかね。


 「王族に生まれた以上、惚れた好いただけで婚姻と言うわけにはいかぬ。国のためになるか否かも考慮せねばならぬのだ」


 公爵がそう続けた。正論ではある。けど結構な比率で私情も混じってませんか。公的には王女かつ聖女が狙われてて、私的には孫娘の命の危機。それをチャンスだとか思う奴に任せたくないのは解るけどさ。


 「他者と同程度の功績でよい。同程度であれば理屈をつけて押し通す。報酬も十分に払う。今後の卿の立場にも配慮しよう。引き受けてもらえないだろうか」


 ここまで聞かせて俺に拒絶って選択肢あるんですかねー。報酬って口止め料の事だろ。逃げ道なんかないんですけど。


 「微力を尽くします……」


 俺、泣いていいですか。

※切りのいいところまで書こうと思ったら

 1.5話分ぐらいの長さになってしまいました…

 長さの調整って難しいです。

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― 新着の感想 ―
お姫さまだから魔王に狙われる で終わらずに何か理由がある 世界が深くて素敵
[良い点] もしかしなくても、現状一番泣きたいのは多分 ノイラートとシュンツェルw
[一言] ラウラの'子'が'高位'につくという予言は上手いなと思いました。
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