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ブックマークも三十件超えましたー。読んでくださる人がいると思うと頑張れます。
誤字報告もありがとうございます。結構恥ずかしい誤字でしたね…(赤面)。
王城を退去し続いて向かったのは商業ギルドである。流通を含む商売ならここを通した方が確実だし通さないと後で色々嫌がらせがあったりする。
貴族相手にそんなことがあるのかと思われるかも知れないが、貴族だからこそメンツが必要な事がある。たとえば別の貴族同士の結婚祝いとか。
そういう時にありきたりの物しか揃えられないと軽く見られることになるわけで、商人ギルドにレアものを抑えられたりすると困るのだ。餅は餅屋? ちょっと違うか。
「先日は大口のお取引ありがとうございました」
「いや、こちらも急な依頼に応じてもらい感謝している」
実際交渉したのはノルベルトだけどな。内心付け加えつつ縦横比が樽といい勝負できそうなおじさんの前に座る。
ビアステッド氏は王都では大手商人の一人で商業ギルドの重鎮でもある。貴族が商人に氏をつけるなと言う向きもあるが内心でつける分には構わないだろう。
ターペンタインを大量に集める際には相当に面倒をかけたが言い値で買ったので利益も出しているだろう。商人ってそういう生き物だ。この点で言えば前世の企業もそうか。
「ところで本日は何の御用でございますか」
「遠方の町で購入して欲しいものがある。信用できる商人に商隊を結成して欲しい。護衛はこっちで雇う」
「それはそれは」
探るような目を向けてきた。子爵を名乗れるとは言え学生が取引を求めてきたんだ。まあ気持ちは理解できなくもないか。無茶振りしてるのは自覚がある。
「行ってもらう町のリストがこれだ。購入品予定も記載してある。それとは別に各町ごとに品ぞろえの確認も頼みたい」
「拝見いたしましょう」
魔皮紙のリストを手渡す。羊皮紙みたいなものだがこの世界では羊より魔獣の方が多いせいか魔獣の皮を加工した魔皮紙の方が安かったりする。
一部の魔獣限定ではあるが、その魔獣にしてみれば肉は食われるわ皮は利用されるわで人間を憎むのも理解できなくもない。なお内臓は農地の肥料にされる。
昔から言われることだが一番怖いのって人間じゃね?
「ずいぶんと珍しい……と言うか本格的ですな」
体感時間でたっぷり五分は書面をにらんでいたビアステッド氏が顔を上げてそんなことを言った。
まあそうか。普段から流通してるなら王都に売っているはずだ。普段売ってない新しいものを調べに行くという事は遠征に近いもんな。貴族の思いつきにしては本格的だと思ったんだろう。
「知っていると思うが、先日の魔物暴走は今までと違っていた」
「存じております」
どこまで存じているやら。だが商人の情報網ってのは馬鹿にできない。王城にも口が軽いのもいるしな。酒と女の前ではどうしたって口は軽くなるから仕方がないんだが。
「魔族が暴走を発生させた。そういう事ができるとなると、第二第三の魔物暴走が起きるかもしれない」
このぐらいならぎりぎり口に出しても問題ないレベルだろう。魔王の事は知ってるかもしれないがこっちから口にしないし向こうもしないはずだ。
「それにどういうわけか私は武門の人間と言う印象が付いているらしい」
「先日のお働きは耳にしております。お若いのに優れた判断であったと」
「ありがとう」
見え透いたお世辞だがこの世界では謙遜・謙譲は必ずしも美徳ではない。スルーしておくだけにする。
「つまりそういう事で装備を整えたい。理解してもらえるだろうか」
魔物暴走の再発の危険性。今まで文官肌の家で突然武官としての活躍を期待される立場。いきなり優れた騎士をそろえられるはずもないのでせめて装備を充実させたい。
口実はそういう事だが要するに本来ゲームでは後にならないと購入できないような高性能な装備品を先に手に入れようとしているわけだ。
「なるほど。了解致しました。簡単ではございませんし値段も張りますが」
「それは理解している。とりあえずリストの武器は各八本、防具は八領を伯爵家に納品して欲しい。その分の費用は出す」
可能であれば王城の兵士分もだが、これは次の段階になる。現時点では伯爵家分の装備すら揃えられない。カネがかかるんだよ。
今回納品分の半分は王太子殿下に献上する。今はどういうわけか国の上層部に話が行っていない高性能装備の現物を知ってもらう事が優先だ。
王城強襲イベント前に騎士や兵士の装備を充実させないとな。
「それ以上を仕入れても?」
「運べるなら。商会費用で購入するならそっちで売っても構わない。当然だ」
流通をコントロールしたいわけじゃない。それに王都の中で高性能装備が売られるようになるなら悪い事じゃない。
現状ではそんな装備があると知られるだけでもこの場合は重要だからな。下から突き上げがあればまた状況も変わるかもしれん。ただ鎧ってそんな数運べるのかね。
ゲームだと鎧もたくさん運んでたけどな。高く売れるドロップ品の鎧ばっかり所持品欄にためてた事もあった記憶が。
この場合も魔法鞄持ちを集めればいいのか。とは言え魔法鞄はそれなりに高価なんだけどなあ。ビアステッド氏なら持ち主を集められるのかもしれんが。
「とは言え聞いたこともない町の名がありますが」
「地図は用意する。国境越えの許可証は王太子殿下から頂いている」
地図、と聞いて商人の目が光ったのはさすがだ。大商人が俺ぐらいの年齢相手に興味を隠しきれないあたりに地図の価値が良くわかる。
「その図も頂けるのですか」
「伯爵家の人間が持っていく。一度行けば二度目に道案内はいらないだろう」
「ごもっともです」
おとなしく引いたな。俺がへそまげてこの商談を別の商会に持って行かれることを恐れたか。
なぜそんなものがあるのかとは問わなかった。国境越えの許可証の話を先に出したからだ。王太子あたりからの密命も兼ねているのだろうと思われるような話の運び方をしてはいる。
海千山千の商人相手にどこまで通じているかはわからんが。
「それに、ご期待通りの質の装備があるかどうかは行ってみないと解りません」
「それは当然だな」
ゲームの世界では売ってるがこの世界でもあるかどうかはわからない。外れる事も一応は想定している。
ただゲームでいうところのフィールドの敵が強くなるのに人口の少ない町や村が襲われないのはそういった装備で自衛しているからじゃないかと俺は思ってる。
だとすると問題なく手に入るだろう。後は時間だな。装備の優秀さが解れば国が動くだろうがイベントが進めば今後フィールドの安全性が下がるだろうからな。
そうなると今までなら行けたはずの所に行けなくなる可能性が出てくる。それまでに何とか最低限足跡を付けたい。タイムイズマネーな状況だ。
この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…
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