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――194――

いつも感想、評価、ブクマ等で応援、本当にありがとうございますっ。

誤字報告もお世話になっております。ありがとうございます。

 ちょうどそこに軽食が届いたので一旦その話を中断。どうやら俺が来るまで食事を待っていたらしく申し訳ない。

 さすがに秘密にしておくべきような話を続けるわけにもいかないので、ウェイターが料理を並べる間、あたりさわりのない話題で誤魔化すことにする。


 サラダのほか、仔羊、鹿、馬、兎、鳥は鳩かな。それぞれローストされていたり煮込んであったりと豪勢な料理が並ぶ。肉ゼリーなんかもあるな。一品一品の量は多くない。贅沢をしているとかいう噂が流れないような配慮があるようだ。

 王族(ラウラ)がいるからいい加減にもできないだろうし、店の方も大変だね。


 そんなことを考えながらマゼルたちの冒険譚を聞く。ダンジョンのマップまでは覚えていないものの、罠とか出没した魔物とかは俺の記憶にあるゲームと同じような気がする。

 とはいえ、ゲームの方をそこまで詳しく覚えているか、というとはなはだ疑わしい所だ。とりあえず罠を見つけた事を説明した時にどや顔を浮かべたフェリを軽く小突いておく。


 「そういえば、子爵は旧トライオットで評判でしたよ」

 「は?」


 そんな事をしていた途端に飛び出したエリッヒの台詞に思わず妙な表情を浮かべてしまう。

 詳しく聞いてみると、旧トライオットにもかろうじて無事な町や村がいくつもあり、そういう所でトライオットの魔将を斃したヴァイン王国の評判は高いらしい。そしてその中でもなぜか俺の名前が広まっているそうだ。何故。


 「グレルマン子爵やツァーベル男爵が中心となって、そういう無事な町へと支援をしているのだそうですが、その際に子爵の名前が出ているそうですよ」

 「いや、私は支援には何も関わっていないんですが」

 「支援が来るのと同時に、外部から情報が入るようになっただけでも彼らからすると大きいのです」


 ラウラとエリッヒからそんなことを言われてしまい、反応に困る。というか俺はそんな旧トライオットへの支援活動が行われている事さえ知らなかったんだけどなあ。

 とはいえ、確かにいつまでもヴァイン王国内に難民を置いておくわけにもいかない。魔王討伐後に戻ってもらうための準備は必要だ。受け入れ先に復旧してもらわないと困るという事だろう。もうそこまで手配を進めていたのか。


 「魔将がいたころは町の結界があっても攻め込まれるのを恐れていましたが、魔将が斃れてからは少なくともその心配だけはなくなっていますから」

 「王都にいるとそのあたりが鈍くなっているかもしれないが、小さな町や村だと夜にゆっくり寝られるというだけでも大きいぞ」


 エリッヒの後に続いたルゲンツの台詞に納得せざるを得ない。なるほど。確かに住人にとってはそれだけでも随分違うか。そこは確かに理解できる。


 「アンハイムからの支援などもありますから、そのあたりから自然と評判になっているのだと思います」

 「面倒臭いというのが本心」


 エリッヒに思わず真顔でそう応じてしまった。確かに労働力としてアンハイムの住人やアンハイムを拠点にした冒険者なんかも支援活動に参加しているだろう。けど俺は有名になりたいわけじゃないんだがなあ。

 それにアンハイムの城門ぶっ壊されたりと、どちらかと言えば敗北一歩手前だった。マゼルたちがいなかったら俺の方が死んでいた可能性の方が高いし。


 「アンハイムの住人からすればむしろ自慢の種でしょうから」

 「とりあえず俺の方で忘れることにする」


 これは現実逃避です。解ってるよ。


 「というか、伯爵家当主は父だから俺の評判が高くなりすぎると困るんだよなあ」

 「そうなの?」


 フェリが口を挟んでくる。こういう生臭い話もどうかと思うが、まあいいか。


 「俺をこれ以上出世させようとするとややこしい。今、父は大臣だから伯爵家当主という立場を変えるわけにもいかない。伯爵家の世代交代をしようとすると大臣職まで辞職する必要がある」

 「ああ、そっか」

 「かと言って金銭報酬ならともかく、俺を別の家の貴族にするとなると、俺には家臣団がいない」


 いないどころか、どさくさ紛れに変な奴が入り込んでくる可能性も捨てきれない。内側にスパイや刺客どころかテロ犯を抱え込むような余裕はさすがにない。そういえばこの世界は家に対する飾り紋はあるが、それ以外に個人への勲章みたいなものはないな。

 とはいうものの、国からの報酬が勲章だらけになるのも嫌だから余計な発案は止めておこう。


 「相手が兄貴ならおいらが家臣になってやってもいいぜ」

 「その時は高い給与を用意してやるよ」

 「約束」


 フェリと軽口をたたき合いながら時間を潰し、軽食が一通り並びウェイターたちが出て行ってから改めて話に戻る。こちらからは現状の説明と状況の説明をしておく。とはいうものの、だ。


 「肝心な部分は地下の調査が進まないとどうにもならんか」

 「しかも簡単にできる事でもなさそうだな」

 「場所が場所ですからね」


 ウーヴェ爺さんの台詞にルゲンツやエリッヒも頷いた。実際、俺の方はあまり調査が進んでいるとは言えないのが申し訳ないというか何というか。

 政治情勢に関しては状況を説明はしたが、そっちは国と俺に任せろ、まず魔王を斃すことだけ考えてくれと全面的に面倒を引き受けておく。説明中、一時ラウラの目が笑ってなかった事は気が付かなかった。絶対に俺は気が付いていない、うん。


 「ヴェルナー、王都襲撃の可能性があるなら僕らも王都にいたほうがいいのかな」

 「いや、多分お前さんたちが王都にいるときは奴らの方が王都にこないだろう」


 マゼルがいないときに王都を襲おうとするのが相手の計画だろうから、マゼルがここにいる限り王都は無事かもしれない。ただ、そうなるとその間に他の所の被害が大きくなったり、最悪の場合廃墟が増える事になる。

 やはり最優先は魔王を斃すことにしてもらわざるを得ない。むしろ王都を囮にしてマゼルの自由を確保する、ぐらいの覚悟で立ち向かう事にするさ。


 「調査内容としてはちょっと実験してみたい事もあったんだが、今日これからやる予定だったんだよな」

 「そうなんだ。悪かったかな」

 「気にするな」


 マゼルたちに会いたかったことも事実だからそこはまあ気にしない事にしよう。ああ、この際だからついでに言っておくか。


 「直接関係ないが、そういえばな、マゼル」

 「ん?」

 「リリーとつきあわせてもらってる」


 俺の台詞にマゼルがきょとんとした顔を浮かべてから苦笑。そしてその隣のラウラが興味津々という顔を浮かべてるんですが。女の子は本当にこういう話好きだよなあ。フェリとルゲンツも面白そうな顔してやがる。エリッヒは笑顔でウーヴェ爺さんは興味なさそう。爺さんらしいわ。


 「……そっか、解った」

 「あっさりしてるな」

 「ヴェルナー以外だったら違う態度だったと思う」


 ルゲンツのツッコミにマゼルがまだ苦笑交じりに応じている。


 「けど、ヴェルナーなら疑う理由がないからね」


 兄も妹も揃ってこう無条件に他人を信頼するなよ。むしろこっちが心配になってくるんだが。けどここまで信じてくれているんだから、それには応えないといけないよなあ。

 

 「それで、一体どんな経緯でそうなったのですか?」


 えーと。とりあえずこの食いつき気味のラウラをどうしようか。


 


 一通り情報交換を済ませて先に引き上げさせてもらうことにする。俺もマゼルたちを心配していないし、マゼルたちも俺を信頼してくれている。お互いに悲壮感はない。期待に応えるだけだ。

 そう思いながら王都の夜道を歩んでいると、徐々にノイラートとシュンツェルが周囲への警戒感を露にしながら俺の周囲を警戒し始める。


 「人通りの少ない方に行くか。邪魔だし」

 「解りました」


 露骨なまでに俺たちの後をつけてきていることを確認し、二人と共にわざと裏道を通る道に入り込む。周囲に人影が現れるまではそれほど我慢の必要もなかった。


 「ヴェルナー・ファン・ツェアフェ……」


 俺に呼びかけようとした相手に対し、魔法鞄(マジックバッグ)から槍を取り出すと同時に突き込む。言葉が途中で途切れ、相手がその場に血飛沫をあげて倒れ込んだ。

 こっちを囲んだ相手が一瞬絶句して立ちすくみ、その隙をついたノイラートとシュンツェルが更に一人を切り倒した。


 「一対一になるな。確実に一人ずつ削るぞ」

 「はっ」

 「承知しました」


 殺気を溢れさせるどころか垂れ流しているような相手に手加減も警告も不要だ。囲んできた以上相手の方が数は多いはず。先手先手で打って出る。


 相手が剣を振り回すが、それを打ち払うと連続して穂先を突き込み、一人その場に突き倒す。手ごたえが十分だったからこいつは生きていないだろう。

 その隣でシュンツェルが相手と打ち合いつつ巧みに位置を入れ替えると、そこに斬り込んだノイラートの一撃が相手の腕を切り落とした。


 「くっ、怯むな、一人ずつ……」

 「遅い!」


 槍を突き出す速さも強さも本気だ。どうせろくでもない奴らであることは間違いない。捕縛する気もなく全力で槍を振るい、三人目を突き斃す。ノイラートとシュンツェルも合計で三人斬り斃し、そこで相手が身を翻して逃げ出した。


 「追いますか」

 「いや、無用だ」


 追った後で待ち伏せされている可能性もある。何より、騒ぎを起こすのが目的なんだろう。無駄なことをして騒ぎを大きくすると逆に相手の手にはまりかねない。


 「こいつらは俺が襲われたという事実だけがあればいいんだろう。だから今日は何事もなかった。いいな」

 「ははっ」

 「解りました」


 どうせ身元を確認できるようなものは持ってないだろうから、相手の持っている武器だけを確認。何か塗ってあることは確かだ。一本だけもらっておいて明日国の方に提出するか。


 「どこで知られたのでしょうか」

 「さあねえ」


 ツェアフェルト邸の周囲の建物こそ安全だろうが、館からある程度離れた道路に見張りがいてもおかしくないから、そこは考えるだけ無駄だろう。

 当面は油断だけしないようにしておくしかない。


 「お前たちも今日は館に泊まってくれ」

 「お世話になります」


 後でやる予定の実験の場にいてもらうかどうかはどうするかな。後で考えるとするか。まずは無事な顔を館に出すことからだ。

 ついでにマゼルたちに代わって土産話もする事にしよう。気になっているだろうからな。

ちょっとリアル状況が忙しくて手が回らなくなってしまっておりますので、明日から一週間ほど更新をお休みさせていただきます。

体調不良等ではありませんので、ご心配なきようによろしくお願いいたします。

再会は22日(土曜日)か23日(日曜日)になると思います。ご了承ください。

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フェリくんかわいい 冗談のようで、でも本当に家臣団募集してたら、助けてくれそう マゼル 貴族と妹の付き合いなら警戒するけど 親友(一応貴族)と妹の付き合いなら 裏表なく安心てすね
フェリくんかわいい 冗談のようで、でも本当に家臣団募集してたら、助けてくれそう マゼル 貴族と妹の付き合いなら警戒するけど 親友(一応貴族)と妹の付き合いなら 裏表なく安心てすね
[気になる点] レベルは人間を倒しても上がる仕様ですか?
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