序章
38年前、全ての始まり。
いつの時代だって虐げられるものたちがいる。
不運が重なったもの。
友人に騙されたもの。
他人に唆されたもの。
道を踏み外したもの。
あるものは絶望を心に。
あるものは憤怒を心に。
あるものは苦悩を心に。
あるものは嫉妬を心に。
あるものは憎悪を心に。
けれどどんな激情を胸に宿したとして、現実が変わるわけではなかった。
どうして自分たちだけが取り残され、迫害され、虐げられ、泡沫の如く消えてしまうのか。
虐げられた者達が安らぎを求めて一堂に集ったのは必然といえよう。
初めはただの悪ふざけ。
魔術結社(仮)。馬鹿らしい名前ではあるが、彼らにとって何よりも安らげる場所。
昔話に、今は亡き夢に花を咲かせ、時には茶を、時には酒を飲み交わす、そんなただの座談会。
人は誰だって一人きりではないから、こうして虐げられたもの同士でならば集うことが出来る。
そんな怪しげな名前の、ちょっとした集会が彼等にとっては何よりの救いになったのだ。
全てはそんなちょっとおかしな、でも安らぎに満ち溢れた集会から始まった。
30年前、その魔術結社(仮)に所属する一人の男性が1冊の魔道書の原典、或いは聖典を持ち込む。
"魔術結社なんだ、時にはそれらしいことでもして楽しもうではないか"
ただの娯楽の為の1冊が、けれど確かな力でもって全てを歪め始めてしまうことも知らずに。
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『The Book of the Law』
『法の書』
Do what thou wilt shall be the whole of the Law.
汝の意志するところを行え。それが法の全てとならん。
The study of this Book is forbidden. It is wise to destroy this copy after the first reading.
この書を学ぶことは禁じられている。最初に読んだ後にこのコピーを破棄する事が賢明である。
Whosoever disregards this does so at his own risk and peril. These are most dire.
これを無視する者は自らを冒険と危険に晒すものだ。これらは最も恐ろしいものである。
Those who discuss the contents of this Book are to be shunned by all, as centres of pestilence.
本書の内容について議論する者は疫病の中心にあるが如く人々に避けられる者となるであろう。
All questions of the Law are to be decided only by appeal to my writings, each for himself.
法に関する全ての質問は、わが著作への懇請によってのみ決定される。それぞれが自分自身の為に。
There is no law beyond Do what thou wilt.
汝の意志する事を行えを超える法はない。
Love is the law, love under will.
愛は法であり、意志の下の愛である。
The priest of the princes,
王子らの司祭
Ankh-f-n-khonsu
著:アレイスター・クロウリー 法の書-忠告-より
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