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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Blade! 皇子は得物を探す。【後】

 結果として、オレの様子を見た前店主のご老体が俄然に張り切ってしまったという。

「しかし、益々けしからん!最近は剣を芸術品のように扱い過ぎからいかんのじゃ!」

 大丈夫かな?

ポックリ逝ったりしないかな?

「武器の美とは、計算尽くされた実用性を突き詰めた事による洗練だという事を理解できぬとは・・・。」

 どうしよう・・・何処で止めに入ろう・・・。

「そもそも、完全なる美とは、武器と使い手が合わさる事で成立し完成するのじゃ!」

「奥が深いんですねぇ。」

「おうおう、お嬢さん、若いのにそれが解るとは感心、感心。」

 ミリィ・・・変な合いの手はいらんて。

仕方なく盛り上がる(?)二人を横目で見つつ、店内の剣を見る。

一応、双剣は必ず買わなくちゃいけなくて、あとは長剣を予備を含めて二振り・三振りは欲しい。

エルフの森や城での戦闘で思ったが、長剣を二振り腰にさして時に双剣のような扱いを視野に入れた形が一番しっくりくる気がする。

双剣は双剣、長剣は長剣で別々に考える必要も特にないんじゃないだろうか、オレの場合は。

バルドには一通り仕込まれたしな。

何だかんだ言っても、オレも"ヴァンハイト"だよな。

この血から逃げられるものでもない。

手頃の握り易そうな剣を持っては、戻しを繰り返す。

「お客様、これを。」

 ふと、ミリィとの会話を終えた老人がオレに一本の木の棒を渡す。

「お客様、本当は双剣より長剣程度の長さの方が得意なのでしょう?」

 この老人、流石。

「これを持って構えてみて下さい。」

 老人に促されるままに構えを取る。

流派とか良く知らないんだよな。

きっとバルドに聞いたら、"バルド流"とか答えられそうだし、答えられてもイヤだ。

「ほぉ。」

 人に見られて、木の棒を剣に見立てて振るとか・・・何やら幼い子供みたいだな。

「お客様、盾はお使いになりますかな?」

「一応。円盾を。」

 質問はこれだけだった。

老人は店内をうろうろと一周し、オレの所に戻ってくると三振りの長剣を広げる。

「この辺りがオススメですが、説明致しますか?」

 首を振って、一本一本を抜いて握る。

どれも多少のクセがある代物だが、成程、それはオレのクセと合っていて短所というような部分が相殺される。

これが、さっき言っていた"武器の美"の一端なワケか。

形的にはディーンの剣に近い印象のモノが多い。

特に一振りだけ刀身が細く、片刃状態のディーンの剣に近いが両刃という剣もあった。

イイトコ突いてきやがるよ、全く。

「この細いのと、少し反りが強めのその剣を頂けるかな?あと下取りもやってる?」

 細剣より幅広く長剣より細い刀身の剣と、長剣の長さで双剣のような少し反りがある二品を選ぶ。

モノの良さで二振りあれば十分に感じるし、今持っている剣はこの二振りに比べて圧倒的に劣る。

オレは、下取りに出す剣を背負っていた荷物から、老主人に渡す。

「そうですな、これですと・・・こんな感じで・・・。」

 オレの手の平に指で書かれる値段。

「って、御老体、いいのか?」

 老人が示した金額は相場にして、中級の剣一本半分の値段。

この二振りなら、合わせて三本分の代金を最低限取られてもおかしくない。

というか、それくらいは余裕で取られると思っていた。

つまりは、下取りの金額も剣の金額も破格値。

「剣だけは、行く者の所に行くもんで、こればかりはワシ等には止められん。」

 老人は下取りの剣をさっさと店の奥にしまうとそう答えた。

「それに・・・。」

「それに?」

「昔、若い時分にな、同じ様に剣を買いに来た少年がおっての。」

 ヲイヲイ、急に遠い目に・・・。

「似とるんじゃよ、構えが。お客様の方が少し前傾姿勢で速さ重視な印象があるが。」

 ・・・まさか・・・まさかじゃないだろうな・・・。

「彼も"ヴァンハイト"に行くと言っておったからな。コレも縁じゃて。」

 どう考えても・・・あのクマな気がします。

オレは色んな意味で、師弟揃ってかけてしまった迷惑を返すつもりも含めて、他にも短剣や投擲用の短剣を買った。

だって、そうでもしないと気が済まないだろ?こりゃ。

偏頭痛のようなものに悩まされながら、代金を支払うと紙キレを老人に渡された。

「これは?」

「少し値が張るが、特殊なモノを売っている店への地図じゃ。そして、これが紹介状。」

 地図と一枚の紹介状。

「双剣と、もう一本くらい長剣。運が良ければ盾も揃うハズじゃ・・・ちと、店主がアレじゃが。」

 アレって何だよ?

アレとかそういう抽象的なのヤメて欲しい。

だが、正直ここまでの至れり尽くせり。

これはもう行くしかないじゃないか!と叫びそうになる程。

「ありがとうございます。この街にいる間は、手入れもここにしますから。」

 もう常連になるしかないよな。

あの師匠の分も。

感謝に感謝を重ねて、店を後にする。

「面白かったですね!」

「そ、そぉ?」

 何が面白かったんだろう、ミリィは。

「剣の構えをしていたアルム様、格好良かったです!」

 あれ?

 オレが剣を振るうのって・・・ミリィ見た事なかったっけ?

あれ?あれれ?

・・・ないのか。

「そうか・・・ありがとう。」

 複雑な気分だけれどな。

「あー!何だか、人だかりが出来てますよ!行ってみましょう!」

「って、お、おい!」

 ダメだ完全に興奮しきってる。

・・・仕方ないか・・・一般人がこんな遠出するような事ってないもんな。

ヤレヤレだ。

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