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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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イッショにいるというコト。【前】

「アルム・・・。」

「ん?どうした?」

 部屋で書き物をしていたオレをオリエが訪ねてきた。

「何してる?」

 仕事の邪魔をしたのかと、少し遠慮がちにオレを見る小さな少女。

「ちょっとしたお手紙と書類だよ。おいで。」

 オレは筆を置くと、オリエを手招きして自分の膝の上に座られる。

あれからオリエは城の大きさに驚いて、そしてあちこち探検を始めるようになった。

見る物全てが初めてで、新鮮だったのだろう。

あぁ、それから意外や意外、オリエが一番懐いたのがミランダとホリンだった。

一体、あの二人にどんな共通点を見出したのか不思議でならない。

「これはね、リッヒニドスでオリエみたいな子供を作らないようにする為のモノだよ。」

 一つは法改正。

と、いっても現行法の厳罰化だ。

人身売買と人足の働き口斡旋の禁止。

斡旋機関は、州府のものと厳しい審査を通しての認可制にする案。

そして、こういう現状を引き起こしているのが、貧富の差や教育の問題だとオレは考えた。

州の税率は、所得による変動制にする案と子供の教育機関の設立案の提議する為の書類。

主に文官・武官・職人を養成する教育機関とそれに伴う根回しの手紙。

提議しても可決されるとは限らないし、可決されてからの事をしっかりと決めておかねばならない。

「これでもっと皆の生活が良くなるといいな。」

 良い案を施行して成功したら、兄上が中央でも採用してくれるだろう。

「アルム・・・。」

 書類をじっと見つめていたオリエが、身体を捻ってオレの頬に手を伸ばす。

「なんだい?」

「ムリするの、ダメ。」

 頬に触れた小さな手がオレを撫でる。

無理を・・・しているのだろうか?

オレは自分のやれる事をしているだけで・・・。

「ありがとうオリエ、心配してくれて。」

 だが、本当にオレに心配される資格があるのだろうか?

本当に政治の表舞台に出ていいのだろうか?

「ふあん?」

 オリエは的確に。

そして簡潔に問う。

不安・・・そうなんだろうな、きっと。

それは存在に対して。

魂の領域までの。

最近ではアルムという人間は、一体何なのだろうとまで思う。

実に哲学的だ。

「というより、楽になりたいのかもね。」

 オレは出来る限り優しくオリエの髪を撫でる。

オリエを買い取ってから今まで、きちんとした食事等の環境を整えたせいか、彼女の髪は指が引っかかるような事もなくなった。

身体もいくらかふっくらしてきている。

だが、相変わらず背というか、身体全体が小さいままだ。

本人曰く、約10歳程度だという事なので、同年齢の子供に比べれば二回りは小さい。

「ダメ。」

 オレの手をくすぐったそうに目を細めていたオリエが再び呟く。

「ダメ。アルムもいっしょに幸せ、なる。」

 そういえばオリエの喋り方は、片言のままだ。

長い間、声を出す事を封じてた彼女に長く声を出すのは困難というか面倒らしい。

一向に直る気配も直そうとする気配もない。

そう考えるとどうやら元来無口な性格なのかも知れない。

いや、それで彼女の可愛らしさが損なわれるわけでもないが。

「一緒に?」

「いっしょ。」

 もう一度、力を込めて繰り返すオリエ。

「そうだね。折角オリエがオレの所へ来てくれたんだものね。」

 本当に、それは感謝すべき出来事だ。

「みんな、いっしょ。いっしょに幸せ。でも・・・。」

「でも?」

 なんだろう?

「アレはいらない。」「アルムお兄様!ここにオリエさんが!あぁっ?!」

 オリエが扉を指差すのと、扉が勢い良く開け放たれるのは、ほぼ同時だった。

勢い良く部屋に突撃を敢行して来たのはサァラ姫。

今はオレとオリエの光景を見て固まっているところ。

「な、な、なんて、うらやま・・・はしたないコトをっ!」

 わなわなと肩を震わせる少女。

外見は、ほとんど年の差があるようには見えないんだがな。

「カンケイない。アタシ、アルムの妹兼娘。」

「またそういう事を!そういう問題ではないんです!」

 いいから降りなさい!と手をブンブンと振るサァラ姫を平然と見ているオリエ。

なんとも言えない温度差だ・・・。

「うらやましい?でも・・・アゲナイ。」

 オリエはオレの胸に顔を埋めてすり寄る。

はて、こんな性格だったのか?オリエって。

「あぁっ?!いいから離れなさぁーいッ!!」

 ちなみにこの二人、出会った初日からずうっとこんな調子だったりするのだった。

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