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「書籍化」モブな主人公 〜小説の中のモブだけど問題がある  作者: バッド
12章 世界

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357話 ニュースはガセネタが多いよねっと

 平和な朝食風景を見せる鷹野家族。そのほのぼのとした世界で、ニュースは少し騒がしかった。


『ご覧ください。この表面を! つるつるです。まるでガラスのような感触で、あっ、ちょっと、離しなさいよ、皆に伝える義務が』


『なにが伝える義務だ! 視聴率のためだろ』


『特ダネは社長賞が貰えるのよ、はなせーっ』


 女性のアナウンサーは、立ち入り禁止のロープを跨いで、クレーターとなった地面を触って説明をする。すぐに武士団が捕まえて引き摺っていくが、元気にわぁわぁと騒いで消えていった。


 物凄いガッツのある人だなぁと、感心しながら海苔に醤油をつけて、ご飯を包んてパクリ。朝から炊きたてのご飯を食べられるなんて、みーちゃんはそれだけでも幸せ者だ。


「ねぇ、芳烈さん。魔導学院が消えたって本当かしら?」


「うーん……本当なんだろうけど、あそこは高位貴族が通うから、軍の基地並みの防衛魔法が付与されていたはずなんだけどなぁ」


大事おおごとよねぇ。帝城さんとか大忙しではないかしら。芳烈さんやみーちゃんにもお手伝い要請がくると思う?」


「うーん、たしかに大事だけど鷹野家が絡むことはないよ。鷹野家は政治に関わらないのが、皇帝陛下との取り決めだしね」


 パパとママは今回の事件を見ながら話し合っている。でも、鷹野家は関わらないから、関係ないよね。


 卵焼きをお口に放り込み、その微かな甘味で頬が緩んじゃう。微かな甘味が卵焼きの味を引き立てているのだ。


 お味噌汁に刻みネギをパラパラとふりかけて、ちょっと飲んだあとに豆腐をパクリ。一口で食べられる大きさに切ってあるから、食べやすいし良い豆腐なので味に深みもある。お出汁もしっかりととっているし、一流の板前の仕事だ。


 食通みーちゃんは味にうるさいのだけど、これには満足です。さて、焼き魚を食べてみようかな。骨を上手く取るのが大変なんだよね。


 気合を入れて、スチャッと箸を構えて焼き魚にアタック。一流の食通の食べ方を披露しちゃうよ。


「みーちゃんはこの事件どう思う?」


「え? う〜ん……この魚はサンマ?」


 グサリと焼き魚に箸を突き刺して、ガリガリと骨ごと食べる。この事件についてどう思うか?


 パパの疑問に動揺一つ見せずに、みーちゃんは冷静に焼き魚を噛み砕いて飲み込む。


「今はサンマの季節じゃないよ。これはさわらだよ。焼き霜作りとか言うんだっけ……」


「さすがはパパ! 物知りさんだね!」


 賢者も顔負けの知識を誇るパパに尊敬の念を送りながら、飲み込み終える。


「たいしたことじゃないよ。で、このニュースをどう思うかな、みーちゃん?」


「う〜ん、きっとガス爆発だと……」


『ご覧ください。この土の表面は石のように硬い塩のようです。辛いんです。魔法の力によるものだと、あぁっ、ちょっと邪魔しないでよっ!』


 カサカサと虫のように地を這いながら、アナウンサーが再びクレーターに近づいて余計なことを口にしていた。


 でも大丈夫。みーちゃんは冷静なのだ。


「ガス爆発だと思うよ!」


 海苔にイチゴジャムをつけて、ご飯を包んでパクリ。


「カフッ! うわっ、なにこの海苔、急に不味くなったよ!」


 口の中に磯の香りとイチゴの甘味が広がり、思わず吐きそうになる。


 とっても甘い海苔だよ! この世界の海苔には甘い海苔もあったんだ。しかもイチゴの味とかチャレンジしすぎだよ!


「………みーちゃん? この事件についてどう思う?」


 なぜかジト目のパパが再び問いかけてくるので、軽く深呼吸して気持ちを落ち着ける。イチゴ味の海苔って、不味ぅ。


「たぶんガス爆発だよ。ガス爆発だと何もかも吹き飛ぶって、聞いたことあるし」


 口直しに角砂糖をパラパラとお味噌汁に入れて、ちょっと飲む。


「カフフッ。なんだかこのお味噌汁とっても甘いよ! グルメなみーちゃんは怒っちゃうよ、女将を呼べ〜!」


 なんだ、このお味噌汁。まるで砂糖をぶち込んだかのように甘いお味噌汁だ。これは斬新すぎる味だよ。みーちゃんでは食べられません。


「みーちゃん……まさかこの事件に関わっていないよね?」


「昨日は20時にベッドに入って寝ました。寝る前にホットミルクを飲むために、ニムエに頼んだよ。その後はニムエが寝ずの番をしてくれたので、アリバイになるはずです」


 こんな時のために、れんしゅーしたセリフをつらつらと語る。ふふふ、アリバイは完璧だ。


「まるで犯人がアリバイ工作をしたかのように聞こえるんだけど?」


「警部。次は誰に話を聞きますか?」


 ポリスみーちゃんとなって尋ねるけど、ますます厳しい表情になっていくパパ。なぜかため息を吐くと呟くように言う。


「大丈夫。きっと私の考えすぎ。考えすぎだ」


「芳烈さん、きっと考えすぎではないわ」


 なぜかママが顔を俯けて呟くパパの肩を撫でて慰める。うちの両親はいつも熱々だね! 子供の情操教育に良いと思う。


「みーちゃん? 本当のことを言いなさい?」


「みぃねーたん、いーなしゃい?」


 厳しい顔のママが追及してきた。舞も真似をしてみーちゃんの顔を見ながら楽しそうな笑顔になる。


 ここで追及を逃れることは簡単だけど……嘘はあまりつきたくない。みーちゃんは素直で良い子だからね。


 座り直して背筋を伸ばし、真面目な顔で答える。


「学院の地下には魔神が封印されていたんだよ。ししょーがそれに気づいて討伐したの。でも、これは秘密なんだって。バレると魔神の死体の欠片とか、封印されていた神器とかを探す人が出てくるから」


「魔神? 魔神ってなんだい?」


 パパが魔神という言葉に反応して眉を顰める。


「世界を滅ぼす魔物のことだよ。みーちゃんはこっそりと皆を助けるために一緒に行ったの。回復魔法使いはとっても役に立つからね!」


 オーディーンのおじいちゃんは『マイルーム』までは一緒だったんだ。


「ドルイドの大魔道士様が魔神と表現するほどの魔物だったのか……。たしかに秘密にしないといけない内容だ」


 なんと驚き、パパはあっさりとみーちゃんの言うことを信じてくれた。みーちゃんですら疑う内容なのに……。


「パパは信じてくれるの?」


「うん? 嘘だったのかい?」


「ううん、本当のことだよ」


 ぶんぶんと首を横に振って答える。真実を少し伝えていないが、全て本当だ。魔神の存在はみーちゃんの話を聞いた後にオーディーンのおじいちゃんは話したし。


 討伐したのはオーディーンのおじいちゃんとは言ってないしね。たぶんパパのイメージの中では勇者パーティーの一員として戦ったんだと思っているだろう。


 さすがにソロで倒しましたとは言えないもん。


「危険なことをしてたのね! みーちゃん、なんでママたちに相談しなかったの!?」


「一昨日魔神討伐を決めたから?」


「大魔道士様とは話し合いが必要ね! いくら優れた魔法使いでも、美羽は子供なのよ、まったくもぉ。怪我はない?」


「ちょっとしたけど、回復魔法で治したよ」


「心配させないで美羽。ママの大事な大事な娘なんですからね?」


 抱きしめてくれて、優しく頭を撫でてくれるママ。心配かけてごめんなさい。


「僕も、僕もぎゅうってする!」


「舞も! 舞もだっこ!」


「むぎゅう」


 甘えん坊の二人がしがみついてきて、皆で抱きしめ合う。むにむにとほっぺを押し付けてくれるのが、とっても可愛らしい。


 家族の温かい心が感じられて、ぽかぽかとみーちゃんの胸も温かい。


『良かった。世界を消滅させないで』


『メインストーリー:世界の全てを食べてしまおうはキャンセルされました』


 だよね。ゲームストーリー通りならば、今頃は滅ぼしちゃっただろう。実に危ういところだったに違いない。


 これも家族のおかげである。これからも家族を守るために頑張るよ!


「後で大魔道士様の連絡先を教えてね?」


 ニコリと微笑むママから、オーディーンのおじいちゃんを守るのは難しいかもしれない!


「………この件は家族だけの秘密としておこう。とりあえず大魔道士様の意見を聞いてから、皇帝陛下にお話しするか決めようと思う」


「そうね、芳烈さん。皇帝陛下には申し訳ないけど、その魔神? とかいうのが本当に危険なら伝えない方が良いと思うわ」


「うん……。たしかに残った物を回収されて、研究とかをされても困るしね。映画とかで、そういうパターンはいくらでも見てきたし、現実でもそういう行動を取る人はいるだろうから」


「売れたからって、続編を作るとだいたい駄作になってるよね!」


「調子にのらない」


 パパにコツンと頭を叩かれたので、エヘヘと舌を出して謝る。


 みーちゃんの顔を見て苦笑をするが、すぐに優しい顔になりパパは頭を撫でてくれる。


「でも、魔神という大魔道士様も恐れる化け物を倒して偉かったね。パパはみーちゃんを誇りに思うよ」


「たしかにそうね。みーちゃん、よくやったわ。皆で大変な苦労をして倒したのでしょう? ご褒美に今日は目玉焼き乗せハンバーグをママが作るわ。腕を奮っちゃうんだから」


 ママも褒めてくれて、なんとご褒美にハンバーグも作ってくれるなんて!


「やったぁ、ハンバーグ、ハンバーグ!」


「やったぁ、はんばーぐ」


「舞にも舞にも作って〜」


「もちろん皆の分も作るわよ」


 空と舞と一緒にはしゃいで喜んじゃう。良かったアシュタロトを倒して。


 手作りハンバーグが一番の報酬だよ!


 皆が笑顔で朝食を再開すると、トントンとドアがノックされて、蘭子さんが入ってきた。


「美羽様、皇帝陛下から緊急会議をするので、急ぎ登城せよとの連絡がきました。いかが致しましょうか?」


「残念だけど、王様になったら政治や軍関係のお話には参加できないんだ。そういう約束だもん。お断りして」


 動きが早いけど、聖奈あたりが魔神のことについて説明をしたのかもしれない。


 でも、アシュタロトは滅ぼしたし、もはや残りはヘルヘイムモドキとシンを倒すだけだ。皇帝との話し合いは必要ないよね。


 そもそも必要な時に呼び出そうとか、都合が良すぎると思うんだ。


 なので、お断りします。ご健勝をお祈りしておくよ。みーちゃんのお祈りだから、効果はあるかもね。


 それに、朝食を食べ終わったら、オーディーンたちと話し合いをする予定だ。


 アシュタロトの首。全ての元凶を消しておく必要があるから、みーちゃんは忙しーのだ。


 なので、原作は終わったし、皇帝は頑張って生きてほしい。これからは自由に生きてね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王になったのに、章タイトルが侯爵のままなのが気になる…
[良い点] ヤバいメインストーリー回避成功? [気になる点] メインストーリー前は聖奈視点だったけどその場合どんな表記で滅亡が書かれるやら。 [一言] アナウンサーさん、この後で塩になったり、クレータ…
[一言] 真実に気が付いてしまったパパとママは100面ダイスを振ってください
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