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「書籍化」モブな主人公 〜小説の中のモブだけど問題がある  作者: バッド
11章 侯爵

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334/380

334話 東京攻略戦なんだぞっと

 みーちゃんのイリュージョンで浄化されつつある東京都内。魔石拾いの冒険者たちとは別に、内部に切り込む部隊がいた。


「攻撃を開始せよっ! 今こそ東京を取り戻す時!」


「うぉぉぉぉっ!」


火球ファイアボール


土槍アーススピア


風刃ウインドブレード


 多種多彩の魔法が飛んでいく。焼けただれて歩くこともできない魔物たちが、吹き飛ばされて死んでいく。


 雪祭りという名の東京攻略戦が現在開始されています。


「もはや敵は力を持っておらぬ! ここでかたをつけるのだ!」


 元気なのは王牙のおっさんだ。へべれけになっているのに、雪祭りに参加してくれた武士団を的確に指揮している。たいした精神力だよね、感心しちゃう。あのお酒は一日は効果があるはずだったんだけどなぁ。


「ボーナスは弾むぞ! ナスに棒を刺してボーナス」


 ……あんまり強い精神力でもないかもしれない。寡黙なかっこいいおじさんも、悪酔いするとおっさんになるという哀しき現実である。


「これは楽勝だな!」


「害獣一触とはこのことかぁ」


「ゆけ、魔剣ティなんとか!」


 パパたちも大活躍だ。適当に魔法を放ったり魔道具を使ったり、魔剣ティルフィングを空に飛ばして攻撃しているが、それぞれ強力な攻撃なので、敵の中でも比較的戦闘力の残る奴らを倒してくれるので心強い。


「パパかっこいい!」


「そうだろう? たまにはパパのかっこいいところも見せないとね。そこだ、ティなんちゃら!」


 高速で空飛ぶ魔剣ティルフィングを操るパパかっこいい! まるで竜巻のようにティルフィングは空を駆け巡り、敵を切り裂いていく。


 みーちゃんの方へと手を振ってくるパパ。その間もティルフィングは敵を倒していくが、パパは完全にティルフィングを操れるようになったんだろう。


「それにしても、高レベルの魔物も死にそうなんて思わなかったよ。ちょっぴり身体が削れただけなのにだらしないよね!」


「普通は動けなくなるよ、エンちゃん」


 ゲームの魔物ならば、HPが1でも残っていれば全力で攻撃してきていた。なのに、この世界の魔物は身体が少し焼けただけなのに、ヨロヨロと力なくよろめいて死にそうになっているんだもん。


 レベル30程度が生き残っており、この世界の人間たちには充分に強敵となるはずなのに、もはや息も絶え絶えで動くこともろくにできていなかった。


 なので、サクサクとみーちゃんたちは進軍しています。今までは生い茂る呪われた森林が自然のダンジョンとなり進軍の邪魔をしてきたが、反対に呪われた木々が無くなると、更地になって極めて進みやすくなっていた。


 車両での進軍ができれば、東京内部に切り込むことなど造作もないことだったのだ。


 魔物たちを倒しつつ進軍し、目端の利く冒険者たちは放置された高レベルの魔物たちの死骸をちゃっかり回収していく。目端の利く冒険者たちに金剛お姉さんたちも加わっているのは言うまでもないことだろう。


 残った聖氷を踏みしめつつ、みーちゃんたち一行は拍子抜けするほど簡単に平将門の城へと到着した。


 おどろおどろしい禍々しい昏きオーラを城は吐き出して、黒雲を城の上に漂わせる魔王城のような呪われた城。

 

 その領域に入り込むだけで、瘴気に汚染された空気によりダメージを負ってしまう。反対に瘴気によりパワーアップしている魔物たちや、毒ガスや通路崩落などの致死の罠群があり、鉄壁の要塞となっている。


 いや、なっていた、だ。過去形となっています。


「ふわぁ、純白の粒子がキラキラと空気に浮いて、聖なる力で清々しいですね、みーちゃん」


「黒い城に砂糖をふりかけたみたいで美味しそうだねぇ」


「もう崩れ落ちそう! 城壁は溶けちゃってる!」


 聖奈が深呼吸をして目を輝かし、ナンちゃんがお菓子に見立てて、ホクちゃんが感心している。


「お城自体が呪われているから、この裏技は致命的だったみたいだね」


 もはや魔王城というより、廃屋一歩手前と化した平将門の呪われた城。城門は傾き、城壁は溶けており、倒壊寸前だった。


 とはいえ、強力な呪いにより硫酸をかけられたかのように今もジュウジュウと煙を立てて溶けているが、それでも倒壊することなく耐えていた。


 瘴気が降り積もる聖氷を押し返そうと禍々しいオーラを僅かに建物に纏わせて、ダメージを抑えている。


 残念ながら、魔王城の空気は綺麗さっぱりなくなっており、青空の下、清浄な空気がとっても美味しいけど。


 でもそれまでだ。隠しダンジョンだからね。さすがに聖氷だけでは倒すことはできないか。


「では、城に侵入をしますか?」


 漆黒の魔導鎧に着替えた闇夜が凛々しい顔で尋ねてくる。既にやる気満々の模様。


 玉藻たちも魔導鎧を着込んでおり、やる気満々だ。約1名、魔導鎧ではなくコタツを装備している娘がいるけど。


「んとね、まずは敵の防衛力をゼロにしたいんだ。ダンジョン内は致死の罠がたくさんあるからね!」


「それじゃ遠距離から攻撃?」


「うん。投擲するアイテムもこーんなに落ちてるし、使わない手はないから」


 雪を掬い取ると、ギュッギュッと丸めて地面に置く。そして、皆が何をするのかと注目する中で、コロコロと丸めた雪玉を転がす。


 みるみるうちに雪玉は大きくなっていき、みーちゃんと同じぐらいの大きさになる。


 ニパッと微笑み、雪玉を持ち上げる。なんとか持てる重さだね。


「ジャジャーン。上手に雪玉ができました〜」


 雪玉というより、氷玉だ。雪合戦に使えば確実に怒られる硬い塊だ。


「それじゃ、雪合戦開始〜」


『戦う』


『石火散華』


 大きく振りかぶって第一投。魔法の力を込めて攻撃だ。

 

 みーちゃんの持ち上げた雪玉がライナーで飛んでいき、ミサイルのような速さで城へと迫る。空中で雪玉は何十個にも分身し、絨毯爆撃のように立て続けに命中した。


 ドカンドカンと轟音が響き、魔法的な防御力を持つ城が破壊されていく。ミスリルよりも硬い瘴気の石壁が発泡スチロールのように砕け、高層ビルの支柱に使われる耐久性の魔木の柱が折れていった。


「おぉ〜! 雪玉だけで倒壊していってるよ! 玩具のお城みたいに壊れていってるよ」


「みー様の記録でも、これは傑作になりそうです」


「雪玉だけで、過去の英雄や軍隊を阻んだ城壁を壊しちゃいますか………」


 玉藻がパチパチと拍手をしてくれて、カメラを持った闇夜が激写してくる。聖奈が遠い目をして半ら笑いを浮かべていた。


 そんなに褒められると照れちゃうよ。えへへ。


「エンちゃん、はいっ、おかわり!」


「ありがとう、ホクちゃん!」


 気の利くホクちゃんが、ワクワクした顔で作ってくれた雪玉を渡してくれる。


 なので、ポイポイ投げちゃう。ピッチャーみーちゃんは100球まで投げられるからよろしく。


 広大な敷地に建てられた呪われし城は、みーちゃんの絨毯爆撃により、どんどん破壊されて、見る影も無くなっていった。


「奥の宮以外は倒壊したね!」


 雪合戦はみーちゃんの勝ちらしい。城は崩壊し後方に建てられていたほぼ全ての宮は倒壊し、瓦礫の山へと変わっていた。


「ですが、お嬢様。どうやら高位の魔物は耐えきったようです。瓦礫から続々と這い出てきています」


 戦場となって、真面目モードとなったニムエが忠告してくる。瓦礫からは、10メートルはある大きさの土蜘蛛や、見覚えのあるアリさん軍団、ミノタウロスや竜が這い出してきていた。


 どれもレベル50超えだ。高いレベルだと70とかもちらほら混じっている。


 小物はほとんど倒れたのか姿を見せずに大型の魔物ばかりだ。体力が大きい敵だけが生き残ったんだろうね。


 再び石火を放つが、敵に雪玉は命中しても僅かに身じろぎするだけで、あまりダメージははいらなかった模様。


 その数は数千。全て敵対モードだ。


 即ち、『戦う』の相手になっているということ。


「聖女の力を見せちゃうよ」


 両手を翳して、ニヤリと不敵に笑うと魔法の力を高めていく。


「お祭りだもんね。皆で楽しまないと」


 灰色髪がみーちゃんから吹き出す突風にバタバタと靡き、純白の魔法陣が足元から広がっていく。


 魔法の力は魔法陣を巡っていき、神聖なる光が周囲を煌々と照らす。


極大聖域エクストラサンクチュアリ


「グギャァ」

「ギィギィ」

「グオッ」


 神聖なる光により、魔物たちがうめき声をあげてもがき苦しむ。レベル10ダウンと全ステータス20%ダウン、継続ダメージが入る『聖域サンクチュアリ』の改造バージョン。


 システムさんがバージョンアップしたことにより、よりこの世界に食い込むことができたために使えるようになった魔法。


 大規模バージョンアップにより、実装された新魔法なのである。


 具体的には、新魔法というか魔法に修正が入った。全ての魔法やスキルの効果範囲が大幅に広がったのだ。さっきの雪氷を作った錬金スキルも上方修正が入ったので、東京全域を効果範囲にできたのである。


「そして、追加だよ!」


『石火散華』


 キングホーンベアカウジャーキーを投擲する。ビューンと、魔物の中に落ちていくジャーキー。


「ヒャヒャンッ、ヒャンヒャンッ」


 もちろんそれを見逃すポメラニアンではない。一休みしていたヘイムダルを引きずって、大興奮で猛然と駆けていく。


「こ、このリードを手から外してくれよ、レディィィ」


 なにか幻聴がきこえたが気のせいに違いない。苦しむ魔物たちをポメラニアンは餌を奪う相手だなと、牙を剝いて噛みつき、引っ掻き蹂躙していき、ジャーキーを確保する。


 全部私の物だよと、他のジャーキーに魔物が近づくとダッシュで襲いかかり、ジャーキーを守る。もちろん最初のジャーキーは食べていないので放置していた。


 そのため、気を利かせてヘイムダルがジャーキーを拾ってあげようとすると振り返って襲いかかってもいたりします。


「ちょ、この馬鹿犬っ! お前のために拾ってあげてるんだよ、こら本気で噛むな! お前馬鹿すぎだろう」


 心温まるヘイムダルとポメラニアンのやり取りとは別に、パパがフラフラと前に出てくる。


「よしっ。私の第一の封印を解こう。ティラミスパフェよ、我が意思に応えよ!」


 手元に戻したティルフィングを空に掲げてパパは封印していた力を解き放つ。


「吹き荒れよ暴風、雨よ降れ、雷よ轟け! 豪雷暴風!」


『闇の波動』


 ていっと、パパが魔剣を振り下ろすと、闇の波動が剣から放たれて、魔物たちに向かう。そうして波動が触れた何匹かはビクンと体を痙攣させると、バタリと倒れていく。その姿は石となっており、もはや身動きはとれない。


 石化魔法だ。ミミックが得意な魔法の一つ。極めて厄介な魔法だった。


「凄いよパパ! 詠唱でフェイントをかけて、石化魔法をかけるなんて!」


 さすがはパパだ。目をキラキラさせて、パチパチと拍手しちゃう。


「いやぁ〜、本当は魔法に憧れていたんだよ。子供の頃はノートに自分の考えた魔法の詠唱を書いていたもんさ」


 赤ら顔でヒックとしゃっくりをしながら、パパが秘密を教えてくれる。子供の頃から今日のために用意していたんだね、さすがはパパ。子供の頃から、天才だったんだ!


「みー様? 今日のことはお義父様には内緒にしておきましょう。きっと酔いが醒めたら……いいえ、秘密だと思いますので」


「うん、たしかにそうだね! パパの秘密の魔法だもん。ママにも内緒にしておくよ」


「エンちゃんって、両親のことになると盲目的だよねぇ。なんでも肯定的だよね〜」


 闇夜の忠告どおり、内緒にしておこう。きっと秘奥義だもんね。もう少しみーちゃんが大きくなったら、今日のことを聞いて伝授してもらうんだ!


 リルとパパたちの活躍で凶悪な魔物たちは駆逐されていく。どうやらここにいなくても大丈夫の様子。


「それじゃ、平将門退治にしゅっぱーつ!」


 みーちゃんたちはボスを倒しにいこうかな。きっと怒り心頭で待ち構えている予感がするよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「いやぁ〜、本当は魔法に憧れていたんだよ。子供の頃はノートに自分の考えた魔法の詠唱を書いていたもんさ」 パパのかわいい *ニッコリ [気になる点] 聖奈心拍数が少しずつ下がってきています…
[一言] パパさんは普段なら剣をファンネルしようと思わずに、直接切り付けようとするかもだから酔ったお陰である意味最適解な使い方してそう。
[良い点]  酔っ払っていろいろはっちゃけてるパパさんに『この事が美麗ママンにバレたら叱られちゃうよねぇ』と読者が思ってたら優しいみーちゃんさまの「ママにも内緒にしておくよ」にホッとひと安心(^皿^;…
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