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「書籍化」モブな主人公 〜小説の中のモブだけど問題がある  作者: バッド
10章 武道大会

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325/380

325話 後始末なんだぞっと

 今年の大武道大会は歴史に残る日となった。


 なんと、闇夜たちが『ダンジョンアタック』フリークラスで最年少優勝をしたのだ! バンザーイ。


 みーちゃんは親友の偉業に大喜びです。他に些末なイベントがあったかもしれないけど、気にする必要はないよね。


 大武道大会の第一グラウンド。一番大きなグラウンドの壇上で、みーちゃんは喜びを身体で表していた。


 灰色髪をなびかせて、アイスブルーの瞳をキラキラさせると、小柄な身体をクルリと回転させて、ぴょんとジャンプ。


 みーちゃん、喜びのダンス。世界一可愛らしいダンスに皆は大喜びだ。


「聖女様、逃げていた時に流れ弾で大怪我を」


快癒キュアⅢ』


 ダンスダンスダンシング。


 皆もみーちゃんのジャンプにあわせて、ジャンプする。


「転んだ際に骨折を」


中治癒ミドルヒール


 お尻をフリフリ、身体をくねくね創作ダンス。


「目が見えなくて……」

「癌であと半年の命なのですが」

「高血圧症でして」

「不眠症で眠れなくて」


聖癒ホーリーヒール


 皆まとめてダンシングだ。


 イエーイ、と拳を突き上げてダンス終了〜。白金の粒子が広場を埋め尽くし、集まっていた人たちも笑顔で拳を突き上げる。


 皆と一体化して、大盛り上がりで最後の閉会式はおわったのであった。


「みー様、もう少し高くジャンプを!」

 

 地面に寝ている闇夜がカメラを手にして、ハァハァと声を荒らげて興奮しているが、ダンスの雰囲気にあてられたのかな。


 と、いうわけでみーちゃんは大武道大会の閉会式を取り仕切っていました。


 グラウンドにも観客席にも大勢の人々で埋め尽くされて、大盛況で終わっていた。ちょっと後方に見えた元神無公爵のホテル、現在廃墟となっている焼け焦げたビルが見えるけど、誰も気にしないから別に良いだろう。


 大武道大会の閉会式は本来は皇帝の言葉で終わるのだが、出席できなくなったので、みーちゃんが代行です。


「それでは皆さん、これにてへーかいしきを終わります。お疲れ様でした」


『祝:帝城闇夜・油気玉藻、ダンジョンアタック優勝!』


 でっかい垂れ幕をバックに、みーちゃんは人々が見惚れる花咲くような笑顔でおててを振って、閉会式は無事に終わるのでした。


 職権乱用? お友だちのお祝いをできるだけ盛大にしたかっただけだよ。


 誰も止めなかったのかって? パパたちや他のお偉いさんたちはちょっとしたイベントの収拾に忙しくしており、手伝ってくれたのは子爵以下の人たちしかいなかったから、皆笑顔で賛成してくれた。


 少し口元が引きつっていたけど、疲れからだろう。後でゆっくり休んでね。


「お疲れ様〜」


 ぽてぽてと壇上から降りて、大賑わいの閉会式を終えたみーちゃんは控室へと戻った。


「おつかれ、エンちゃん。ダンス素敵だったよ〜、撮影したのは後で売れるよ〜」


「うん、販売はやめて非売品にしようよ。少しだけ作ってプレミア感を出そう」


「おぉ、ナイスだね〜、それでいこう!」


 狐耳をピコピコ震わせて、金髪の狐っ娘が親指をたてるので、ムフンと胸を張る。


「それじゃ千個だけ作ろっか。面白そう!」


 ホクちゃんがニコニコと元気に拳を突き上げる。


「………もう今日は働きたくない。おやすみ〜」


 セイちゃんはパイプ椅子を並べて簡易ベッドにして寝ていた。


「屋台の食べ物が全部半額になっていたよぉ。3倍買えちゃうね!」


 ナンちゃんは計算のおかしいセリフで、テーブルに山と並ぶたこ焼きや焼きそばなどを頬張っている。


「全て私に任せてください! みー様の可愛らしさを余すところなく伝えるため、編集から販売まで全て取り仕切ります!」


 非売品と言ったのに、売る気満々の闇夜ちゃんがポヨンと胸をたたいて、ふんすふんすと鼻息を荒くする。


 ニコニコと皆を見渡して、ホッと安堵の笑みを浮かべる。良かったよ、闇夜たちが無事で。


 控室には闇夜、玉藻、ホクちゃんたちとニムエ、蘭子さんがいる。その表情に影はない。


「一般市民も死者はいなかったんだよね、蘭子さん?」


「はい、お嬢様の回復魔法がぎりぎり間に合ったので、大丈夫でした。兵士たちの中では残念ながら死者は出てしまいましたが」


「死ぬ可能性もあるのに兵士になったんだから、仕方ないね。それよりも意外と被害は少なくて良かった」


 蘭子さんが頭を下げて、報告してくれる。


 皆が無事で良かったよ。少しだけ被害が出たみたいだけど、兵士たちに損害がでただけだ。一般市民たちは大怪我を負った人たちのみで、奇跡的に死者は出なかった。


 良かった良かった。みーちゃんは安堵しました。


 死んでいた人もいた? いやいや、身体が残っていれば大丈夫。細胞はまだ生きていたよ。兵士たちの中では跡形もなく消された人もいたので、回復するのは無理だったけどね。


 パイプ椅子にちょこんと座って、おふざけは終わりにして、真面目な顔になる。


「ガラーンとしてるね。これは打ち上げは無理かな」


 パーティーは無理だろうなぁ。なにせ、皇帝死んだしね。


「さすがに無理かと。お父様も事態の収拾に駆けずり回っておりますし、貴族の2割が裏切ったために大混乱ですので」


「そーゆーときこそ、次期皇帝の信長君が閉会式で挨拶をしないといけないと思うんだけどなぁ」


 ぷにぷにほっぺに手を添えて、頬杖をつきながら信長の行動に呆れてしまう。


 皇帝は死んだが、まだまだ皇族は無事であり、何事もないところを見せないといけなかったと思う。これで皇族の威信がまた下がっただろう。


 喫緊の課題は片付いたのだ。あとは裏切った貴族の処罰や、被害総額の計算、皇帝即位の準備と時間のかかる処理ばかり。


 取り返しのつかないイベントをスルーしたら駄目なんだよ。


「空中城が落下したために、さらなる襲撃があるかと兵士を集めていますからね。国民の前に出ることは控えたのでしょう」


 闇夜が多少顔を暗くして、現状を教えてくれる。


「う〜ん、それも一手かぁ」


 安全をとって籠もってしまったかぁ。第一印象は大切なのに暗愚の臆病者と噂されても、みーちゃんは知りません。


 というか、代行をみーちゃんに任せるとかなにを考えて………。色々と利点はあるか。後ろ盾に鷹野家がいるとかアピールできるもんね。


 それ以外にも思いつく中で、嫌な可能性があるんだけど……。それは後で裏付けをとれば良い。


「空中城がクーデター前にタイミングよく落とされたから、『ニーズヘッグ』と組んでいるのは神無公爵とならないかな?」


「神無公爵は『ニーズヘッグ』と組んでいるのは、鷹野家だったと言っていましたが、状況を見るにそちらの可能性の方が遥かに高いと言われております」


「だよねぇ。どちらにしても証拠はないんだけどね。鷹野家が組んでいたのならば、空中城を落とすのはおかしい」


「それについては、『ニーズヘッグ』の行動を抑えきれなかったのだと反論しておりますね」


 蘭子さんの報告を聞いて考え込んじゃう。少し無理がないかなぁ。あり得る話なのかなぁ。


 判断がつかない。だが、結果はわかる。


「まぁ、神無公爵は死亡したからね。勝てば官軍、問題はないかな」


 もはや抗弁できる者は神無家にはいない。今回のクーデターで取り潰しになるだろうから、鷹野家が正義と政治内では決まるわけだ。


 それに『ニーズヘッグ』と組むなんてしていないし、ちょっと『ニーズヘッグ』の名前を借りただけだし。


 空中城を落としたのは、ポメラニアンだ。そういうことに記憶は上書きされました。


「エンちゃんがかっこいい〜!」


「ん?」


 なんかかっこいいところを見せたっけ? 玉藻がキラッキラッと尊敬の目でみーちゃんを見てくるけど、どういうこと?


「本当だよ、なんか切れ者って感じ!」


 ホクちゃんの言葉に理解した。ちょっとみーちゃんの裏の顔を見せちゃったかな?


「えへへ、みーちゃんは今孔明のパパを尊敬して、放蕩娘を目指しているの!」


 ポリポリと頬をかいて、てれてれと照れちゃう。とりあえず椅子から降りて、コロリンとでんぐり返しをしちゃう。


「龐統と放蕩をかけたのですね、さすがはみー様!」


 でんぐり返しを撮影する闇夜が褒めてくれる。えぇ……自分で言っておいてなんだけど、よくわかったな!


「聖奈ちゃんたちは無事に保護されたみたい。良かった良かった。心配しちゃったよ」


「転移で逃げていたらしいね。後でせーちゃんを慰めにいこう」


 玉藻の言うとおり、聖奈は脱出していた模様。神無家の秘密の拠点に転移していたのだとか。


 なにかされていないか確認の必要があるだろう。


「これで勢力図が大きく変化します、みー様。これから大変ですけど、みー様の支えになり頑張ります!」


「玉藻も支えになるよ〜、大黒柱になるからね〜」


「私たちはお友だちだもん! エンちゃんを助けるのは当たり前!」


「むにゃむにゃ……味方」


「これからもお手伝いするよぉ」


 闇夜たちがみーちゃんを見て、強い意志を言葉に乗せて告げてきた。


 うぅん? 嬉しいけどどういう意味?


 コテリと小首を傾げて不思議な顔になっちゃう。もう神無公爵はいなくなった。後は平和に生きるだけだ。


 ヘルヘイムの残した新種族や、ここのつの意味は気になるが、それは神々の争いとなり、人間たちの争いではない。


 まぁ、シンが最後の作戦を残しているだろうとは予想しているけど、たぶん表には出てこないと思うんだよなぁ。


「みー様、神無公爵以下反乱に加わった貴族たちの財産は全て没収。今回の反乱を防いだみー様に多大な報奨がくだされるはずです。鷹野家はもはや誰の追随も許さない巨大な家門となりますよ?」


「だから、玉藻も皆もエンちゃんを支えるんだよ、ニッシッシ」


 みーちゃんのおててを握って、闇夜が力説してくれる。後ろでは玉藻が犬歯を覗かせて、サムズアップしていた。


 ホクちゃんたちもウンウンと頷いている。


 そうか……報奨のことはすっぽり抜けていたや。これ以上資産が増えても困るし、その場合は予想した展開になるだろうなぁ。


 みーちゃんを操れなくても、外部からの干渉で運命を修正できると思っているな?


 このままでは、皇帝を上回る勢力となり、鷹野家の支配となるだろう。


 どこかで聞いた展開だよね? でも、そうはいかないよ。


 運命という言葉はみーちゃんは大嫌いなんだ。


 配役変更はノーサンキュー。みーちゃんはモブだからね!

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― 新着の感想 ―
[一言] >地面に寝ている闇夜がカメラを手にして、ハァハァと声を荒げて興奮しているが  随分懐かしい、破壊と創造系駄メイド女神の臭いがするぅ〜。  なぞのクレープ屋さん、アレを引き取って〜。
[良い点] みいちゃん、世界の混乱にしよ?世界の運命混乱させるそしてに世界のうんめいさせる、きっとあれわたのしい! [気になる点] オーディンたちはみーちゃんに背いて敵になれるのか? [一言] ありが…
[気になる点] >死んでいた人もいた? いやいや、身体が残っていれば大丈夫。細胞はまだ生きていたよ。兵士たちの中では跡形もなく消された人もいたので、回復するのは無理だったけどね。 細胞レベルが生きて…
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