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「書籍化」モブな主人公 〜小説の中のモブだけど問題がある  作者: バッド
9章 レース

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266話 サブクエストなんだぞっと

「せいや、せいや!」


「わっしょい、わっしょい!」


 青年衆のむさ苦しい掛け声に合わせて、神輿の上に乗って踊るノリノリなみーちゃんです。


 ソイヤソイヤと神輿が揺れて、揺れに合わせてフリフリと踊っています。


 灰色髪を靡かせて、アイスブルーの瞳をキラキラと輝かせ、お尻をフリフリダンシング。その可愛さに世界はひれ伏しちゃうかもしれない。


 道路をソイヤソイヤ。宴会に皆が集まっているので、担いでいる青年衆と堀田男爵しかいないので寂しい限りです。


 さっきから延々と道路を走っているんだよ? 誰も見学に来ていないし、罰ゲームにしか見えないよ。みーちゃんダンスを見てくれる人はどこかな?


 あ、カエルさん発見。ゲコゲコ。


 掛け声に驚いたのか、カエルさんが田んぼから姿を現した。


 早くも飽きてきたみーちゃんは、カエルさんにおててを振る。カエルさん、みーちゃんですよ〜。


 カエルさんは、そんなみーちゃんを見てゲコゲコと鳴きながらドスンドスンと道路へと跳ねてやってきた。


 緑色のカエルさんの跳ねる音はドスンドスンで間違いないよ。


「ビッ、『ビックリフロッグ』だ!」


 驚き叫ぶ青年衆の皆。どうやらあまり見ないカエルさんらしい。まぁ、体の大きさが2メートルはあるもんな。たしかに田んぼにどうやって隠れていたのかわからないから、ビックリだ。


「こいつは混乱の音波魔法を使うから手強いぞ。魔法を用意して」


「てい」


『石火』


 疾風の速さで投擲された石ころが、『ビックリフロッグ』の体にめり込むと、内部で爆発しその体を肉片に変えた。


「は? え、こんな簡単に?」


 青年衆の一人が魔法を使おうとして身構えるが、その前に叩く。肉片が地面に散らばっていくのを、驚きで口をぽかんと開けて青年衆たちは唖然としていたが、即敵殺なのだ。


 レベルは12だったから、みーちゃんには練習相手にもならないし。


 なんかこの間の『魔法破壊マジックブレイク』を受けてから、魔物が逃げなくなったんだよね。みーちゃんの愛らしい姿を一目見たいと現れるんだろうけど。


「おぉ、鷹野伯爵はお噂どおりに腕も立つのですね」


 腰に差していた杖を取り出していた堀田男爵が、戦闘があっという間に終わったので、杖をしまいつつ感心して褒めてくれる。どうやら男爵はみーちゃんたちの護衛だった模様。そして、戦おうとしていた青年衆たちは堀田家の者たちと。


「私もちょっとした護身術を習っているんだよ!」


 フンスと鼻を鳴らして、ドヤ顔で胸をそらす。こんな敵ならいくら現れても……倒すの面倒くさいからやだなぁ。


 高レベルになると、初期の魔物を倒すのは面倒くさくなって、最強魔法で蹴散らしたくなるよね。


「やはり最低限の護身術は必要ですからね。さすがは鷹野伯爵」


「うん、ドラゴンと戦える程度の護身術です」


 ここは謙遜しなくちゃねと、手をふりふりと振る。


「それはもはや戦闘術と呼ぶのでは?」


「ドラゴンさんもピンキリだからね!」


「あぁ、なるほど、キリなら私でも倒せますしな」


 納得をしてくれる堀田のおっさんは、キリならば少し大きなトカゲですなとウンウンと頷く。ピンキリだから、みーちゃんの場合はピンの方のドラゴンを倒せる程度の護身術なんだ。


 理解してくれて、良かった、良かった。


 それじゃ、そろそろ本題に入るかな。


 悪戯そうな表情になり、目を僅かに細めて堀田男爵へと問いかける。


「そんでもって、この状況はなんなのですか? 私は神輿に担がれるだけ?」


「あぁ……いやはや、ご慧眼も素晴らしく……ハハハ」


 誤魔化すというか、気まずそうに堀田男爵は頬をかく。


「誰かが怪我をして治してほしいとか?」


 それなら話はわかる。正式に頼むのはお金もかかるけど、そもそも男爵レベルだと地位的な問題で話すら無理だろう。みーちゃんは世界一の回復魔法使いだし。


 でも、おじいちゃんたちを通せば……無理か。依頼するといくらかかるかわからなかっただろうしね。内容によってはコッソリかけてあげてたんだけど。


 だが、予想と違って堀田男爵は頭を振って否定してきた。


「いえ、そういう訳でもなく……。実際にご覧になっていただければと」


 なんか、見かけによらす苦労人っぽい堀田男爵が指差す先にはなだらかな斜面が小さな山に続いていた。


 木々が生い茂る中で舗装されていない赤土の道路の奥に年経た貫禄のある鳥居が見える。


 ふぅん? なんかみーちゃんはワクワクしてきたよ。なんかイベントっぽいよね。


 期待に胸を膨らませて、さらにお尻をフリフリダンシングみーちゃんをするのでした。



 鳥居を抜けて、木々の合間からこぼれ落ちる日差しを浴びながら到着したのは小さな神社だった。


 古くからある神社なのだろう。よく掃除はされてはいるが建物自体は重要文化財とかになってもおかしくなさそうな厳かな雰囲気を与えてくれる。


「ようこそいらっしゃいました、鷹野伯爵。お会いできたこと光栄に思います」


 白い神官服を着た神官のおじいちゃんが待っており、深々と頭を下げてきた。


「鷹野美羽です。今日はお神輿として担がれてきました。二重の意味があると思います!」


 お神輿から飛び降りて、片手をあげて元気いっぱいに挨拶を返す。みーちゃんの無邪気な笑顔を見て、堀田男爵たちは苦笑いを浮かべるが、きっと座布団をあげるか迷っているんだろうね。


「鷹野伯爵のお噂はかねがね聞いております。お噂どおりに可愛らしいお方でいらっしゃる」


「ありがとうございます、おじいちゃんもその神官服似合ってるよ」


 穏やかな顔で褒めてくれるので、みーちゃんも褒め返す。


「これは宮司用の服です。長年この服を着ているので、すっかり体の一部のようになってしまいました」


 カラカラと笑う神官改めて、宮司のおじいちゃん。気の良さそうなおじいちゃんは、ニカリと笑うと手を神社の奥に指し示す。


「では、神輿の伯爵様。どうぞこちらへ」


「はぁい、なにが待っているのかな?」


 どうも回復魔法を求めているわけではなさそうだし、気まずそうにしていても男衆からは悪意を感じない。


 暗殺とかではなさそうだねと、ぽてぽてと神社奥に向かう。


「おぉ〜。木だね!」


「はい、ご覧の通り木です」


「なるほど〜。どんなお願いかわかっちゃった!」


 木漏れ日が指す中で、まるで太陽の光でライトアップされているかのように、神社の奥には一本の木が聳え立っていた。


 高さは10メートルぐらいだろうか。そこまで高くはないが、幹がかなり太い。直径8メートルはあるだろう。注連縄が幹に飾られておりたぶん御神木と呼ばれるものなんだろうと思う。


「みーちゃんじゃなくて、『ガルド農園』の土が必要?」


「はい、この御神木の状態をなんとかできないかと思いまして」


 コテリと首を傾げると宮司さんは頷き、堀田男爵たちも苦笑いを浮かべながら追従する。


 なるほど、みーちゃんの回復魔法ではなくて、ちょっと栄養分の高いダンジョン土が必要だったのか。


 簡単に推察できたのも当たり前だ。なぜならば御神木は枯れかけていたからだ。


 春の最中であるのに、緑溢れる周りの木々と違い、木の葉はチョコレート色に枯れかけており、幹も木の皮が剥がれていて、ウェハースのようだ。


 台風でもくれば、簡単に折れてしまいそうな木だった。


「それじゃ、みーちゃんを運ぶんじゃなくて、最初から『ガルド農園』に頼めば良かったと思うよ?」


 こんな思わせぶりな方法を取らなくても良かったのにと不思議に思っていると、堀田男爵はコホンと咳払いを一つした。


「その御神木は昔からありまして、皆の心の拠り所なのです。言い伝えでは、周囲の魔物をおとなしくさせて、人々を守ってくれるとか。そのような木を助けていただければ……美談にですなコホンコホン」


「あぁ、そういうことなんだ」


 要はみーちゃんの美談作りに一役買いましょうという感じか。伯爵に媚を売っておけば、なにかと助けてくれるかもとの思惑もあるのだろう。


「植物の専門家を紹介して頂ければと思いまして」


「それは簡単だよ。でも治るかなぁ?」


 もう枯れそうなので疑問に思うが、男爵たちはそれも考えているようだった。


「その際には新しい御神木を植え変えれば、さらなる伝説へと続くでしょう」


 現実的な解決策だった。伝説って、みーちゃんは勇者にでもなるのかな?


「ありがたみゼロだね……」


「まぁ、見る限りマナも感じませんし、最近は魔物がなぜか頻繁に現れるので、都合が良いかなと」


「『ガルド農園』の素晴らしい土を頂ければ、御神木も復活できると考えています。どうも市販の土では駄目なようですが、この間の土であればなんとかなるのではと思っとります」


 堀田男爵は適当だが、宮司さんは治ると考えているようだ。あ〜、あのやりすぎた土かぁ。飛田おじいちゃんがパパと真剣に話したいと言うはずだよ。


 んん、待てよ……? おかしいな。


「それは簡単だけど……。この木は昔からあったの?」


「? はい、昔からありましたよ」


 不思議そうに言葉を返す宮司さんに、みーちゃんは顔を顰めちゃう。


 変だなぁ、夏休みに夕方までこの周辺を走り回って冒険していたのだ。こんな目立つ御神木があれば記憶にあるはずだけど……。


 いや、この御神木どこかで見覚えがあるぞ? あれはそう………。


『メインクエスト:枯れかけた御神木』


 みーちゃんが思い出そうと首をひねると同時に目の前にボードが映りだす。


 そうそう、こんなサブクエストだったよ。


 てこてことマップを散策していたら、お山の宮司に助けを求められるんだよね。


 御神木が枯れそうだけど、どうにかならんかのぅと困っているのだ。


 『植物成長薬Ⅲ』を御神木に使うと、枯れかけていたのがあっという間に治るんだよね。


 宮司さんはお礼を口にして、御神木の枝で作った杖をくれるんだ。自分よりも大幅に格下の魔物は出現しなくなる効果を持つ杖だったはず。


 たいしたことのない杖だけど、せっかくサブクエストが発生したんだから、クリアしておくかな。


 クリア条件を確認するべく、ぺしぺしとボードを叩く。堀田男爵たちが何をしているんだろうと不思議そうな顔はするがスルーしておく。


 サブクエストの詳細が映し出されたので、その内容を読むと……。


『メインクエスト:隠れし神木が姿を現した。もはや枯れかけている神木を伐採してしまおう!』


 そうそう、こんなクエストだった?

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[良い点] 面白い!! [一言] 書籍第一巻、アマゾンで電子書籍待ちです!!
[気になる点] システムメッセージさんが反抗期なのかな? 空間の魔女の言ってた通り世界がみーちゃんの敵になってしまうのか…?
[気になる点] クエストが怪しい香りしかない。 下記はてけとーな予想集 ①ムニンで調べたら別のナニカ(魔物)になってる。 ②ナニカに寄生されてる。 ③元々神木は魔物で周囲からマナを奪う性質がある。 …
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