表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「書籍化」モブな主人公 〜小説の中のモブだけど問題がある  作者: バッド
7章 謀略

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/380

201話 リッチの名に偽りなしなんだぞっと

 『ダイヤモンドブレス』が命中し、閃光が辺りを埋め尽くし、大爆発が巻き起こる。


 発生した爆風を腕を翳して防ぎながら、敵の様子をみーちゃんは見ようとする。


「やったかな?」


 とりあえずフラグは立てておく。倒せていないのは丸わかりだからね。一度言ってみたかったんだ。


 爆煙の中で、マナの光が大量に発生し始める。


「『魔骸騎士リッチナイト』たちは簡単には倒せないよな。ね、ムニン?」


 カァとカラスの鳴き声がどこからか聞こえてくると、敵の解析が行われた。


魔骸騎士リッチナイト:レベル41、弱点火聖、斬闇耐性』

魔骸騎兵リッチライダー:レベル45、弱点火聖、斬闇耐性』

魔骸弓兵リッチアーチャー:レベル42、弱点火聖、斬闇耐性』

魔骸リッチ:レベル48、弱点火聖、斬闇耐性』

『死海のエーギル:レベル65、弱点火聖、魔法耐性、斬闇無効』


 かなりのレベルだ。雑魚でもレベル40超え。しかも高位アンデッドはHPが普通の魔物の2倍はある。面倒くさい敵だと言えよう。


 一見ね。


『ダイヤモンドブレスにより、魔骸騎兵リッチライダーに171のダメージを与えた。弱点をついた!』


 ログの一部をチラリと確認。結構なダメージを与えていた。実は『ダイヤモンドブレス』は聖属性なんだ。キラキラ光っていたのは伊達ではないのだよ。


 不死の軍団は骨の身体にヒビが入って、よろめいている。一ターンの間、動きを止めていた。聖属性弱点だからね。


「おのれっ、話の途中で」


 爆煙の中から怒りの声が聞こえてくるが、ガン無視して、召喚士の固有スキルを使用する。


『召喚覚醒』


「ポヨポヨ〜」


 みーちゃんの身体から蒼く光る魔法の力がポヨリンに移っていく。ポヨリンが一鳴きするとポヨンと飛び跳ねて、そのプリンのような身体が薄く広がっていく。


 みるみるうちにポヨリンのダイヤモンドの身体は100メートルはある巨大な鏡へと変形した。


 陽射しを受けて、ダイヤモンドで形成されたポヨリンの鏡はキラリと輝き、地上に聳え立つ。


 『召喚士』の固有スキル『召喚覚醒』だ。召喚士のMPを半分消費して、召喚獣の最強技を使う。使用した際に召喚獣は召喚を解除されて消えてしまうが、それだけのパワーは期待できる。


「ポヨリン、目標エーギル。発射せよ〜!」


 フンスと鼻息荒く、みーちゃんはピシリと細っこい人差し指で爆煙に指差す。


「ポヨ〜ッ」


 鏡面が光り始めて、膨大な魔法の力が収束し始める。空気が震え、舞い散る砂埃がチリチリと弾ける。


 そうして、鏡面から閃光が放たれて、莫大な光のエネルギーが極光のビームとなって爆煙に向かった。


 風の壁を突き破り、突風により周囲を吹き飛ばし、超高熱のビームは空気を焼いて地上を薙ぎ払う。


 動けない『魔骸騎兵リッチライダー』たちが、極光に包まれて、その身体が消滅していく。ポヨリンの鏡は角度を変えて、ダイヤモンドレイを撃ち続けていった。


 鬱蒼と茂る森林を極光が貫いていき、地上が爆発し火山が噴火するかのように、轟音と共に炎が天へと昇っていく。


 青空が砂煙により、薄暗くなっていき、皆が驚きで目を見張る。


『ダイヤモンドレイにより、魔骸騎兵リッチライダーに976のダメージを与えた。魔骸騎兵リッチライダーを殺した!』


「おしっ!」


 ポヨリンの鏡が砂のように消えていく。みーちゃんはその様子を見ながら、ちっちゃい拳をキュッと握って、ふふふと嬉しそうに笑う。


 『魔骸リッチ』系統のHPは500前後。オーバーキルだ。確実に倒しただろう。


 ズラズラとログも表記されてきたし。


『経験値812を取得した。マナメタルを手に入れた。魔のブラックダイヤモンドを取得した。中位MPポーションを手に入れた』

『経験値886を取得した。雷の槍を手に入れた。ミスリルを手に入れた。水のサファイアを手に入れた。中位MPポーションを手に入れた』

『経験値921を取得した。氷の杖を手に入れた。闇のジルコニアを手に入れた。中位MPポーションを手に入れた』

 

 と、ぞろぞろと同じようなログが出力された。合わせて1000近くだ。多すぎて読み切れないよ。


『レベルが上がった』

『レベルが上がった』

『レベルが上がった』


 そうして、続くのはレベルアップの表記。


「さすがはリッチ。お金持ちだよね」


 リッチって、宝石のドロップ確定、魔法のアイテムやポーションを高確率でドロップするんだ。経験値もレベルに比べると少し多いし、まさにリッチなのである。


 たぶんプレイヤーをお金持ちにしてくれるから、リッチという名前なんだと思う。


 レベルがどんどん上がっていき、自身のステータスが上がっていく。そして、新たなるスキルが解放されたことも。


『レベルが60になったために、『魂覚醒』が解放されました』


 これこれ、このスキルこそがプレイヤーがソロで無双できた理由だ。


 レベル60になったことにより使用できる『魂覚醒』。このスキルが欲しかったんだよ。


腐食閃光アシッドレイ


 爆風と爆煙の中から、紫色の光線が飛んできた。みーちゃんの肩を貫き、肩当てを破壊する。


 腐食ダメージにより、じわじわと肩が腐っていくのをちらりと見て、小さく舌をだしちゃう。


「肩当て壊しちゃった。失敗失敗」


「みー様! 大丈夫ですか!」


 顔が蒼白となって闇夜が駆け寄ろうとするのを手で制する。


「大丈夫だよ、闇夜ちゃん」


 早速、手に入れたスキルを使用するかな。


『魂覚醒』


 MPを30消費して、スキルを使用する。みーちゃんの身体から、白きオーラが吹き出すと時間の流れが停止したかのように、周りの皆の動きがピタリと止まった。


「なるほど、こうなるのか」


 周りの様子を見て、ふむふむと頷くと腐り始めた肩を治すことにした。


快癒キュアⅡ』

中治癒ミドルヒールⅢ』


 いつもの輝くエフェクトが発生すると、腐食は解除されて、貫かれた肩の穴を塞いで癒やす。


 そうして、完全に回復すると、時間が再び流れ始めて、皆が動き始めた。


「でも、みー様の肩は、あら? 治りました」


 回復の光が発生して、肩が治っているのを見て、闇夜がキョトンとした顔になる。


 まぁ、そうだよね。びっくりするよね。


「大丈夫、闇夜ちゃん。私、魔法を瞬間的に連続で使用できるようになったんだ」


 ニコリと可愛らしく微笑み、ふむんと胸を張る。


「おぉ……さすがはみー様です!」


「玉藻にも後で教えてね〜」


「えぇっ? 発動した時を見れませんでした」


 闇夜がぱちぱちと拍手をしてくれて、玉藻がふんすふんすと興奮する。聖奈が口を大きく開けて、ポカンとしていた。


 まぁ、驚くのは当たり前だ。


 『魂覚醒』はソロ必須のスキルである。その効果はというとだ。


『魂覚醒:MP30消費。2回行動をとれる』


 MPを消費するけど、なんと2回行動できるのだ。このスキルはレベル60で解放されて、プレイヤーキャラクター専用技である。


 運営が課金してソロでクリアしようぜとの意図を込めて作ったスキルだと予想しています。


 500円したスキルだしね………。課金スキルだったんだよ。


 その後に様々な課金スキルやアイテムが発売されたし。おのれ、運営っ! ドンドコ課金スキルを追加するんじゃねーよ。MODレベルでエゲツないスキルばっかりだったぞ。


「魔法の瞬間発動か………。汝はどうやら手強き敵のようだ」


 みーちゃんの魔法を見たのだろう。爆煙の中から嗄れた声が聞こえてきて、風が吹き荒れる。


 爆煙がかききえると、エーギルが姿を現す。周りのリッチたちは全滅したようで、辺りに死屍累々と屍が転がっていた。


「しかし、魔法の瞬間発動が貴様だけの得意技だとは思わぬことだ」


『魂覚醒を使用した』

『中位MPポーションを使用した。MPが74回復した』

『中位MPポーションを使用した。MPが81回復した』


 骸骨の頬骨がカタカタと動き、エーギルはせせら笑う。


「『魔骸リッチ』たちを殲滅した力もたいしたものだ。しかし、倒しきったと思ったか?」


『魂覚醒を使用した』

『中位MPポーションを使用した。MPが86回復した』

『中位MPポーションを使用した。MPが83回復した』


 エーギルは余裕の態度で、ローブを翻して、クカカと嘲笑う。


 ポーションは回復エフェクトがないことをいいことに、こっそりポチポチとみーちゃんはMPポーションを使う。


「この死海のエーギルの力を過小評価しないことだ」


 皆がエーギルへと視線を注視させて、その言葉を聞き続ける。


 みーちゃんはせっせと『魂覚醒』を使用してからのMPポーションを使用する。リッチたちが300本近くMPポーションを落としてくれたしね。


「では、お見せしよう。我が力の一端を。そして絶望と恐怖の中で死者の軍団に加わるが良い」


 バッと両手を掲げると、手に持つ『クロウリーの箱』を使用する。ルービックなキューブのように、箱がいくつもの小さな立方体に分かれると、その中心から闇の光が輝く。


「いでよ、我が無敵の軍団よ!」


『不死王の軍団』


 エーギルの影が伸び、漆黒の魔法陣が描かれる。そして、魔法陣から骨の手が、頭蓋骨が、魔導鎧を着込んだ『魔骸リッチ』たちが生み出されてきたのであった。


 その数は100体ほど。やはり騎士や弓兵、騎馬兵が揃っている。


「どうだ? まだまだ召喚できるぞ? 無限なる不死の軍団を操れるのが、不死の王。死海のエーギルよ! 対して貴様はどうだ? クカカカ」


 無限に呼び出せるとは、脅威である。ちょうどMP満タンになったし、対抗しちゃうぞ。


「ポヨリン〜!」


『ダイヤモンドポヨポヨを召喚した』


 プルンと身体を揺らして、再度のダイヤモンドポヨポヨの召喚だ。


「ふはは! まだ召喚できたか。しかしいつまで保つかな? 行け、魔骸リッチたちよ!」


「皆、下がっていて! ここは私が相手をするから!」


「エーギルは強敵です、みーちゃん! 私も一緒に戦います!」


 聖奈が危険だと戦いに加わろうとするが、ちっちゃい手で制すると、ニコリと微笑みで返す。


「大丈夫、とっておきの神聖魔法を使うから! 私を信じて。さぁ、ここは私に任せて、あっちの敵を倒しに行って!」


 空を見ると、戦闘ヘリが接近している。あっちを倒してほしい。ほら、森林からも魔物がまた現れたし。


「………わかりました。先にあちらを撃破してきますね!」


 とっておきの神聖魔法と聞いて、渋々納得する皆。アンデッドに対して神聖魔法は絶対の優位を示すからだ。


「その間に私がエーギルを倒しちゃうかもね!」


 みーちゃんの覚悟を決めた儚げな微笑みを見て、聖奈たちは強く頷いて、去っていった。


「クカカ、それは勇敢なることだ!」


「不死なるものよ。みーちゃんは負けないもん!」


 キリリと可愛らしい顔を引き締めて、たった一人、頼れる召喚獣をパートナーに、みーちゃんは決死の覚悟で戦うことを選んだ。


 ここはみーちゃんだけで倒さなければならないんだ。ポヨリンと力を合わせて、まずは先制攻撃を行う。


『ダイヤモンドブレス』

『魂覚醒』

聖光ホーリーライトⅡ』

聖光ホーリーライトⅡ』


 先制攻撃のダイヤモンドブレスと『聖光ホーリーライトⅡ』により、『魔骸リッチ』たちの身体が半壊する。


 『聖光ホーリーライト』は、範囲攻撃で、アンデッドにしかダメージを与えられない神官魔法の攻撃魔法だ。


 弱点の聖属性による攻撃のために、敵が動けない間に同じ攻撃をして全滅させた。


「くくく、いつまで保つかな!」


「負けないもん!」


 再び『不死王の軍団』を使用するエーギル。


『不死王の軍団』

『ダイヤモンドブレス』

『魂覚醒』

聖光ホーリーライトⅡ』

聖光ホーリーライトⅡ』


「正義のために負けないもん!」


 目にドルマークの正義の光を宿して、召喚される側から、ドンドコ倒すみーちゃん。時折、MPポーションを使いつつ、激しい激闘が行われる。


 正義に燃えるみーちゃんは、決して悪には負けないのだ。


『不死王の軍団』

『ダイヤモンドブレス』

『魂覚醒』

聖光ホーリーライトⅡ』

聖光ホーリーライトⅡ』


 その後も同じ流れで作業的に、敵を倒していくみーちゃん。ぬぬぬ、敵は強いよ。エーギルを攻撃する隙がないね。


 そうして千日手とも言える戦闘を延々と繰り返して、なぜかエーギルがピタリと召喚を止めた。


「負けないもん! さぁ、使っていいよ!」


「……貴様のマナ量はどうなっているのだ? なぜ尽きない?」


 なんでか、じっとりとした視線で見てくるエーギルに、みーちゃんはよろけてゴホゴホと咳をしちゃう。確かにそろそろMP尽きちゃうかも!


 とりあえず、でんぐり返しもしてコテンと倒れる。もうつつかれたら死んじゃうよ。


「うっ、もうほとんどないや。大ピンチ! 次の召喚でやられちゃうかも!」


 もう倒されちゃうよと、オスカー少女賞確実なみーちゃんだったが、エーギルはなぜか身体を引いてドン引きしていた。


「………な、なかなかやるな。今日のところは我のマナが尽き始めた。また、会おう! ふ、フハハハ」


瞬間転移テレポート


 そうしてエーギルは高笑いをすると、『瞬間転移テレポート』を使用する。


「えぇぇぇぇっ! ちょっと待って!」


 せめてレベル70になるまでは召喚してよ。逃げないでよ、『ニーズヘッグ』のボスだろ!


 驚いて、みーちゃんはウルウルオメメで手を伸ばして引き留めようとするが、エーギルは構わず転移していってしまった。おのれ、紳士にあるまじき敵だ。


 イベント戦だったら、そうだと言ってくれよ!


 召喚された軍団を倒していけば終わっちゃうイベントだったのかぁ。たぶんボス以外の敵を殲滅、もしくはボスを倒すという選択イベントだったに違いない。


 その場合、一匹だけ敵を残して、ボスを倒すのがみーちゃんスタイルだったんだけど、勝利条件が表示されなかったから、わからなかったよ。


 さっさとエーギルを倒せば良かった。『クロウリーの箱』を手にしそこねたよ。


「エーギル……。次は必ず倒すっ!」


 フンスとおててを握りしめて、空に顔を向けると決意するみーちゃんでした。


 レベルは65か……。召喚士もマスターになったよ。もう少し召喚してくれても良かったのになぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
幼さを考慮しても、、、戦ってるというよりは、、ゲーム脳で遊んでる感じで、、まぁ生き死にのやり取りでは無いよなぁ
[良い点] どこかの黒幕な幼女の時と同じく無限湧き経験値稼ぎされてしまうスケルトンさん...かわいそうなのでお祈りしておきます。 あぁーラーメン...✝️
[一言] あ、あれ?死闘を覚悟したニーズヘッグ幹部戦がギャグ時空に…(;´Д`) しかしながらクロウリーの箱はなかなかヤバそうですねー。みーちゃんとエーギルの相性が悪すぎ、いや、良過ぎなければ実は危な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ