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巻き込まれ召喚されたオタク氏の異世界珍道中  作者: 明。


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国の滅亡を予感したらしい

地味に運が悪いタルトン君(騎士)視点になります。

 辺境のドラゴン討伐部隊である僕らは、王子殿下のせいで予定より移動が遅れていた。仕方ないとはいえ、高価な服を毎日着替える。側仕えぐらい連れてくればよかったのに、それも僕らみたいなしたっぱがやらされていた。勇者様のネズミ君が預かるようになってから改善したけど、今度は足がいたいだの……帰ったらいいのに。


 隣を歩いていた勇者様がハッとした表情になった。多分、敵を見つけたのかな?


「隊長、タルトン!俺は先に行く!血の匂いがする!!」


 勇者様が言ったと同時に、目線が高くなった。そして、お腹が苦しい。僕、勇者様に担がれてる!?


「え!?ちょ!なんで担ぐんですか?」


「説明が苦手だから」


 つまり、厄介事を押し付けるつもりですね!?反論しようとしたが、無理だった。


「は!?ちょ、ぎゃあああああああああああああいああ!??」


 景色が、スゴい速さで動いて……いや違う!なんで僕を担いでこんなに速度が出るわけ!?勇者様、意味わかんない!!そもそも、僕じゃなくて隊長を連れていこうよ、頼むから!!






 そんな祈りも虚しく、町についてしまった。むせかえるような血の匂いに、吐きそうになるがそんな場合じゃない。剣を抜いて戦おうとしたが、異常な光景に固まってしまった。


「ふふ…………ふはははははは!!オラァ!!」


 異形の……虫みたいな顔をした奴が次々にゴブリンを吹っ飛ばしていく。吹っ飛ばされたゴブリンが、さらに複数のゴブリンに当たって吹っ飛ばされた。しかもあの声、勇者様!?勇者様、常々バケモノみたいに強いなって思っていたけど、ついに人間やめちゃったの!!?


「しゃ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


 ゴブリンの死体が積み上がっていく。僕は勇者様について行きつつ、たまに倒しこぼしを倒そうとしたんだけど……ネズミ君が葉を刃物に変えてザクザク切っていく。

 僕はネズミ君の運搬係ですね………。


 勇者様はゴブリンナイトに手を食われた子供を見つけると、止血を施した。よかった。人間辞めたのは見た目と強さだけだったらしい。


「ごちゅじんちゃま、おくちゅりつかってあげていいでちゅ?」


 やっぱりこの虫みたいな顔をした奴は勇者様………薬?勇者様が頷くと、ネズミ君は薬を垂らした。瞬時に手が生えて………まさか、特級回復薬!?

 勇者様は気がついた子供に魔物と間違われ、逃げられたが何故か満足そうだった。


「よし、タルトンと譲葉は怪我人に薬を使ってやれ!俺は殴る!!」


 確かに討伐は勇者様に任せ、怪我人を救助すべきだ。軽傷なら、僕でも処置できる。ネズミのユズハ君と町を走り回った。そして、何回か死にかけた。

 どうもタカさんは勇者様の力を強化する装備を与えたらしい。だからか、勇者様は敵以外も破壊しまくっていた。絶対後で文句言ってやる!

 これが総額いくらになるとか、今は考えない!!


 勇者様が大半のゴブリンを倒した辺りで、隊長達が合流した。


「隊長!皆!!いいところに!!ユズハ君、たくさん薬をだして!!」


「はいでちゅ~」


 ユズハ君が大量の回復薬を取り出した。


「かなりの死傷者が出ています!人が足りない!」


 うちの隊長はそれだけで察してくれた。テキパキと皆に指示をだし、チーム毎に散開させた。王子は領主の館に連れていかれ、放置されることにゴネた。


「時間がありません。殿下のせいで助けられなかった命があるやもしれません。手伝うか、避難するか。どちらかです」


 ピシャリと言い切る隊長カッコいい。止血する手は止めずうっとりしていたら、ゴブリンが隊長と王子の間を高速で通過し、町の壁を粉砕した。全員硬直する。


「し、新種の魔物か!?」

「勇者様です」


『……………………』


 誰もなにも言わなかったが、え!?勇者様ついに人間やめちゃった!??と表情に出ていた。


「それから、あれは頭に被り物しているだけで中身はいつもの勇者様です。ただ、テンションが上がりすぎていますので流れゴブリンに注意してください」


「……………ああ」


 隊長が遠い目ををしていた。それから僕らはひたすらに救助をした。回復薬の総額がいくらになるかは恐ろしくて考えたくない。だけど、これだけの回復薬を用意するなんて、タカさんは本当にスゴい。


 ゴブリンは根絶やしにしたものの、町の被害が甚大だった。


「ごちゅじんちゃま、いっちょになおちゅでちゅ~」


 ユズハ君と一緒に、粘土みたいな補強材で壊れた壁や塀をひたすら直していった。


「破壊しすぎです」


「………おう、すまん」


「流れゴブリンに当たりそうになりました」


「一応当たらないようにはしてたぞ?」


「ギリッギリでね」


「………………すまん」


 流石の勇者様も素直に謝罪した。確かに彼は口喧嘩には強くない。町長から救助のお礼を言われた。タカさんのおかげだから、お礼を伝えたくて、僕の鳥を飛ばした。




 そして、その夜。事件が起きた。


「もう終わりだ!!」


 立派な鳥を抱きしめながら、王子が泣き叫んでいた。鳥の言葉は、メッセージを受けたものにしかわからない。どうにかなだめて、その内容を聞いた。勇者様にはタカさんが必要なのだとようやく理解した王子は、城からタカさんを派遣するよう依頼した。そして、その返事は予想外のモノだった。


「……タカ=レイターが処刑された」


「……………………………え?」


 驚愕の情報にしばらく頭が追いつかず………理解してから思った。




 あ、この国終わったなって。



 


 タルトン君が絶望したところで、次回は貴文視点になります。

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