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巻き込まれ召喚されたオタク氏の異世界珍道中  作者: 明。


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誓約してみた

 とりあえず、冒険者ギルドで話をしてこようということになったので、ギルドに到着。受付のお姉さんが愛想よく対応してくれた。


「ええと……ギルドマスターさんと話をしたいのでござるが……」


「ギルマスは今、来客中なんですよね。ただ、すぐ終わると思いますよ。そういうわけで、ちょっとラウビウちゃんを撫でてもいいですか?」


「ラビルビ」


「みう!」


 影から黒いラウビウ達が出てきた。受付のお姉さん、幸せそう。影から出てきたことについて、エド君が何かブツブツ言っていたが、気にしない。

 上機嫌でラウビウを抱っこしている受付のお姉さんに奥の別室へ案内される途中、叫び声が聞こえた。


「まったく、だから頭の固い男は嫌なのよ!」


 轟音と共にドアが吹き飛んだ。ドアから出てきたのは、ウサ耳の男性だった。筋肉ムキムキでアゴヒゲがセクシーだった。身体はお兄さんで心はお姉さんでござるかな?


「………あらん?」


 めっっちゃお兄さん?と目が合った。


「アナタ、もしかしなくても……タカね!?期待の新星、天才錬金術師、タカ=レイター!!」


「人違いではござらぬか?」


 拙者はただのオタクでござる。同姓同名の別人ではござらぬか?ギルドマスター殿が死んだ魚みたいな瞳をしている。


「アナタの画期的発明を、商人ギルドにも回して欲しいのよ!」


 人の話を聞かない御仁でござるなぁ。


「申し訳ありませんが、貴殿と交渉はいたしません。初対面の相手に名も名乗らず、一方的に要求を押し付けるような相手の言うことを聞きたくありません。お引き取りください」


 エド君が真っ青。この人、商人ギルドのお偉いさんなのでござろうなぁ。


「………ああん………気弱そうに見えて芯が強いのねぇ………す・て・き」


 男らしい見た目なのにクネクネするお兄さん。幸い怒りだす事はなかった。チラッとエド君を見たら、頷いた。


「申し訳ありませんが、主との交渉は私を通していただけますか?」


「アナタは……」


「私は主の奴隷にございます。商人としてのスキルを買われまして、交渉役をさせていただいております」


「………なるほど。個人としても興味が湧いた。私はレディ・マカロン。よろしくね」

「本名はゴメスだ」

「テメェェェ!マカロンだって言ってんだろうが!しれっと本名ばらすんじゃねぇよ!!」


「いい名前じゃないか、ゴメス。ご両親が泣くぞ。いや、既に泣いていたな。親不孝者め」


 どうやらマカロンさんはギルドマスター殿と知り合いらしい。ガクガク揺さぶられているが、大丈夫でござろうか。


「ご………マカロン様。申し訳ございませんが、先にギルドマスター様と話をしたいのです。よろしいですか?」


「……普段なら引き下がるんだけど、商人としてのカンがここで引くと、とんでもない損失が出ると告げているのよねぇ……」


 まあ、そうでござろうな。拙者達はマカロン殿が欲しいカードを切るつもりで来たのだ。その勘は、正しい。

 エド君が目線でどうしますか?と告げている。拙者は頷いた。別に、瓶の利権なんかどうでもいい。正しく使われてくれさえすればいい。むしろ、必要なひとが回復薬を気がねなく使えるようになってほしい。


「拙者はかまわぬでござる。ただし、条件があります。ギルドマスター殿もよろしいですかな?」


「仕方ないだろう。ゴメスはこうなると引かない。こちらはかまわない」



 というわけで、応接室で話し合いになりました。受付のお姉さんは仕事に戻ったでござるよ。遮音結界をはって防音対策をした。


「おいおい、厳重だな」


 顔をひきつらせるギルドマスター殿。結界に気がついたらしい。


「今回の話には、誓約をお願いしたい。できないならば、なかったことにしていただく」


 誓約と制約。エド君に教わった、この世界での常識だ。重要な契約には、誓約を。神に誓約し、破ればなんらかのペナルティを受ける。


「……内容は?」


「内容は…『誓約。これから拙者が話す内容を秘匿する。守るならば、商談をする』」


「「『契約成立』」」


 誓約は、誓約という宣言から始まる。相手が条件をのめば契約成立と宣言。無理なら契約破棄と言う。


「承知した。エド君、路線変更せざるをえないでござるな?」


「そうですね。こちらとしては冒険者ギルドにご主人様を秘匿してもらう予定でしたが、既に商人ギルドに存在を知られてしまいました。こうなれば、双方と契約するしかありません」


「ギルドマスター殿は拙者についてある程度情報をお持ちでござるが、マカロン殿に説明しても?」


「あ、ああ。お前がかまわないなら」


 異世界の人間であること、かなり酷い扱いだったこと、クソ姫についての愚痴を話した。なんか泣かれた。マカロン殿の化粧が溶解して、涙と鼻水と混じり、顔面がえらいこっちゃになっている。


「同じ国の民としてもうじわげない……」


 この人はいい人でござるなぁ。拙者はクソ姫と取り巻きに全力で祟る予定だから、気にしてないでござるよ。

 とりあえず、浄化の魔法陣を縫いつけたハンカチで顔を拭いてあげた。これ、便利でござるなぁ。汚れもメイクも綺麗サッパリ落ちるでござる。


「ナニコレ」


「ハンカチでござる」


「超緻密な魔法陣が縫いつけて……浄化効果ですってぇ!?しかもナニコレ……え?アタシが解読しきれないほど高度な陣!?」


「いやあ、裁縫は得意でして」


「いやいやいや!確かに刺繍のレベルも高いけど、そうじゃなくて!そうじゃなくって!そうじゃなくってぃぇぃぇぇい!!」


 んんん………?あ、魔法陣の事でござるかな?


「雑巾に縫うと汚れがよく落ち「生活の知恵を聞きたいんじゃないんだよおおおお!!頼むから、こんな国宝級の品で俺の鼻水やらなんやらを拭かないでくれよぅおぅおおおお!!」


 マカロン殿が男性らしくなった。心が女性な訳ではなく、職業的なものなのだろうか。いや、ハンカチは拭くものでは?これ、消毒もしてくれるし、便利でござるよ??

 エド君がナニかにめっちゃ頷いている。何故に??フェリチータたんはニコニコしている。かわゆす。


「ゴメス、その辺りは諦めろ。こいつ、時間停止付与の加工代をもらわずに、中身の代金だけ貰おうとした超馬鹿野郎だから」


「ま……………マジか」


 ギルドマスター殿、地味に酷い。


「…………ご主人様。そこは初耳ですよ?この野郎」


 瓶をいくらで売ったかは言ったが、最初加工代をもらおうと考えなかった件は伏せていた。世の中には、不要な情報があるのでござるよ。


「ご主人様、そこ座れ」


「い、今交渉するとこだから!お説教は後で!後ほどお願いします!」


「……どういう奴隷なんだ……」


「ギルドマスター様、酒くれ。シラフでいるのが辛い」


「かまわんが、酔い潰してこっちが有利な条件にするぞ」


「…………やっぱいい、耐える」


 ギルドマスター殿とマカロン殿の会話は、拙者には聞こえなかった。これ、後で叱られるフラグ?拙者が悪いの??とりあえずフェリチータたんも庇ってくれたから(今は)叱られませんでした。

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