ご主人様にツッコまれてみた
フウウンハナタカジョウ、最速クリアを目指す俺たちには、文字通り壁が立ち塞がった。
そう、壁。マジでただの壁。俺たちはその壁(物理)に苦戦していた。最初は正直楽勝だった。勢いをつけて登れば簡単にいけそうだった。しかし、そこで油断したのが良くなかった。
なぜその壁に苦戦しているかといえば…。
「オータッタッタ!」
よくわからんが、オタオタ言ってるご主人様が召喚するおっさん共のせいだ。ご主人様はあいつらをオタ天使と呼んでいたが、今の俺にとって悪魔に等しい生き物だ。なにせ奴らはこの壁に油をまいてやがるのだから!当然滑って踏ん張りが効かず、あと一歩というところで滑る。
「ふみゅ〜〜、滑って登れません……」
ちなみに低空飛行は一応可能だがシーザの火双剣は使用不可。引火の危険があるからだ。
「お〜っほっほっほ!どうやらアタクシの出番ですわね!」
自信満々で低空飛行しようとした愚義姉は奴らの水魔法で……いや、よく見たらあれは周囲の海水をホースから通して噴射したのか。魔法なのかはわからんが、器用な真似しやがって!
まあ、とにかく飛んでもダメとわかった。愚義姉はなんかワカメみたいになった。しかし、これはチャンス!油が海水で少しだが流れた!
「シーザ!」
「はい!」
「火双剣を使って最速で飛べ!」
「はい!!」
濡れた今なら引火のリスクは低い。わかっているのかいないのか、シーザはためらいなく飛んだ。
「ぎにゃっ?!」
そして海水が直撃したが、シーザの勢いは止まらない。
「僕は、僕は負けにゃい!!美味しいご飯を食べるんだああああ!!」
シーザの勢いは止まらなかった。そう、止まれなかった。
「ぶにゃっ?!」
そして、天井の壁にぶち当たり落ちた。シーザ、お前の犠牲を無駄にはしない!
「今だ!いけ、フェリチータ!」
「私に命令をしていいのはタカ様だけだ!」
そう言いながらもシーザの活躍でほぼ油がなくなった斜面を駆け上がるフェリチータ。あっという間に頂上に達した。ガッツポーズしていやがる。
そしてフェリチータに拍手するオタオタ言ってる野郎ども。ムカつく。
『フェル、クリアおめでとう!シーザ君、大丈夫?治療するね!』
「面目ないですにゃ……」
代理と思われるオタ天使がシーザに回復魔法をかける。そして、盛大に腹の音が響いた。
『………………』
「………………」
シーザが顔を背けた。
『あの、もしかして……もしかしなくても、皆腹ペコ……?え、拙者こういう時のために皆にご飯持たせてたよね?』
マジックバックには金と食事が入っている。うちの過保護なご主人様は全員に持たせた。俺は中身を確認して、金は9割返金した。金銭感覚がおかしいと叱った。別行動の時もあるからと言い張られたが論破した。それでも数カ月は遊んで暮らせる額なのだが……変なところで頑固なご主人様は頑として譲らなかった。
「……そういえば、そんなのあったわね」
「ああ、忘れてたな」
アイリスとゴルダは普通に忘れていたらしい。
「……ご主人様がさらわれたってのに飯どころじゃないです」
「ええ、僕はこのフウウンハナタカジョウをクリアするまでご飯は食べません!」
「ええ、私もです!タカ様がいないご飯なんて……ごはんなんて……」
そう、これは罰なのだ。この試練を乗り越え、ご主人様を取り戻して初めて食事ができるのだ。
『ええ〜……ご飯はちゃんと食べようよぉ。拙者を救出するならさぁ、万全の体調で来てくれないと』
「そ、それは……たしかに……」
ド正論だった。
大事なご主人様を救うには万全の体調でなくてはならない。俺としたことが、ご主人様を目の前で失った衝撃でそんなことすら考えられなくなっていた。
『うんうん。せっかくだから汁物とおにぎり作って届けさせるねぇ。クリアしたらごちそう作るよ。海の幸はいくらでもとれるし!』
運ばれてきた温かい食事。
「うう……うええええ……」
「ぐしゅ……ふにゅううう……」
「うぐっ……んぐ……」
『え?!何?どしたの??なんでそんな泣きそうな顔してるの??』
この人が俺達に……俺にとってどれだけ大事な人なのか。改めて認識した。これまで以上にこの人を守りたい。守らなければならない。
手にした盾が、熱を帯びている気がした。
はい、大遅刻ですね〜!
本業忙しかったのとやりだすまでに時間がかかるという……体調的には元気です!
不定期ですががんばります!




