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第9章:真実、告白《断章3》

【村雲明彦】


 例えば、昨日まで仲の悪かった妹がいるとして。

 それが勘違いで、仲直りして、関係がよくなったとしよう。

 だが、いきなり好きだと告白されるなど誰が予想しただろうか……


「その上、これって、俺は夢でも見てるのか」

「……何、どうしたの?明彦?」


 不思議そうな顔をして俺を見つめる夏姫。

 同じベッドの上で眠るなんていつ以来だろうか。

 今、俺は久々にソファーから解放されてベッドで寝ている。

 ただし、真横にはお風呂上がりでいい匂いのする夏姫がいる。


「なぜだ……なぜ、こうなった」


 つい数分前の流れを思い出す。

 俺が風呂から出るとソファーのベッドが片付けられていた。


『いつもこんな場所で寝ると大変だよね?』


 夏姫がそう言うと俺を部屋のベッドに案内する。


『今日からこっちを一緒に使えばいいのよ』

『ちょ、ちょい待て。さすがにそれは……』

『だって、私達、兄妹だもん。いいよね?いいに決まってるんだから』


 俺に有無を言わさない夏姫。

 血の繋がらない兄妹でこのシチュは正直、まずいのでは?

 さすがに夏姫にどうこうする気はないが、俺も男なのでドキドキするぞ。

 夏姫はと言えば、俺の身体の真横にすりよってくる。


「ふふっ」


 何だか可愛い笑みを浮かべて満足そうだ。

 不覚にも妹が可愛いと思ってしまった。


「明彦って、身体……あったかいね」


 頬を赤らめて囁く夏姫。

 昨日までの夏姫と今日の夏姫はまるで別人すぎる。


「ねぇ、小さい頃もよくこうしてたよね。私が明彦の布団の中に潜り込んで……」

「……あぁ。そんな事もあったっけ」


 今にして思えば、本当に懐かしい過去の話だ。


「あの頃と変わらないよ」


 そう囁いて、俺に抱きついてくる夏姫。

 いい匂いがする……ハッ!?

 いかん、妹相手に何をしようとしてる。

 例え、血の繋がりはなくても……妹なのには変わらないのに……。


「ふわぁ!?」


 寝返りを打つように夏姫の方を向いたら、顔が間近にあって驚いた。


「何、今の声?」

「な、なんでもないっ!?」

「そう?明彦ってば、変なの……」


 俺を笑いながらジッと顔を見られる。

 恥ずかしいこと、この上ないな。


「何がそんなに楽しいんだ?」

「明彦の顔を見てること」


 顔を合わせるのも嫌だって言われたのが嘘みたいだぞ。

 ストレートに言われると普通に照れる。


「……明彦はすぐに私に振り向いてくれるなんて思ってないから」

「え?」

「だって、昨日まで妹だと思ってたんだし。それに今までの私がしてきたことを素直に許してくれるとも思ってないもの」


 夏姫はそう呟くと、すり寄ってきた状態のままでいた。

 寂しそうな顔をされると何ともいえない罪悪感が……。


「気にするなって言っただろ。別に理由があったんだ。責めたりしないって」

「……明彦は優しいね。本当に優しいから、もっと好きになる」


 あーっ、もうっ、なんだ、この夏姫の可愛さはっ!?

 俺をどーしたいんだ、俺がどーにかなりそうだ。


「好きすぎておかしくなりそう」


 ……俺もどうにかなりそうですが、何か?

 妹相手にドキドキしている俺はやばい。

 夏姫も18歳の女の子なんだから、普通にこんなシチュになれば意識せざるをえない。


「……い、いいから、もう寝ろ。はい、おやすみ」

「おやすみ、明彦」


 夏姫が可愛く思えるこの夜は、眠れそうにもない。


「……明彦が近くにいすぎて、ドキドキして眠れないよ」


 耳元で甘く囁く夏姫が本気で可愛いんですが。

 人間、恋すれば変わるっていうけど、これは変わりすぎだ。

 俺は彼女を意識しすぎて、結局、眠れない夜を過ごしたくなる。

 ……父さん、母さん、夏姫に手を出したらごめんなさい。

 

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