2.ジャンルの多様性(多様度指数を用いた考察)
ここでは「種多様性」における「多様度指数」を、「ジャンル」の多様度を測る方法として用います。
なお『なろう』の他に、比較例としてカクヨム、アルファポリス、エブリスタを同じ手法で調べました。
また、データは全て2018年3月下旬の同じ日に取得しました。
表1a: 「小説家になろう」の小ジャンル別集計
Simpsonの多様度指数=0.907
表には『なろう』の小ジャンルの作品数と、その割合、更にSimpsonの多様度指数で用いる2乗の値を乗せています。つまり1から右下の「0.093」を引いたものが、Simpsonの多様度指数です。
なお調査対象からノンジャンルを除外しています。
ノンジャンルはジャンル再編成時に新ジャンルに移行しなかった作品群で、元々は旧ジャンル区分で分類されていました。
つまり投稿時は「ジャンルなし」ではなく、「その他」ジャンルとして扱うのは不適当としました。
表1b: 「カクヨム」のジャンル別集計
Simpsonの多様度指数=0.884
カクヨムにはジャンル別の作品数を把握する画面が見当たらなかったため、ジャンル別一覧の画面数を数え、一画面に出る作品数(30)を掛けて代用しました。
そのため作品数は概算(全て30の倍数)ですが、割合の算出では誤差と考えて良いでしょう。
表1c: 「アルファポリス」のジャンル別集計
Simpsonの多様度指数=0.791
表1d: 「エブリスタ」のジャンル別集計
Simpsonの多様度指数=0.833
カクヨム、アルファポリス、エブリスタにはジャンルの階層がないため、「ジャンル」とされているものを調べました。
ところで、これらの多様度指数は比較可能な値でしょうか?
実は、そのままでは比較ができません。これはジャンルの定義が、それぞれで異なるからです。
昆虫採集の結果に例えるなら、以下のようなものです。
森Aで調べた人はカブトムシ(種)を勝手に「ヤマトオオカブトムシ」「ヤマトナミカブトムシ」などと大きさや角の形状で分けた。
森Bで調べた人はクワガタムシ科に属する種(ノコギリクワガタ・オオクワガタ・コクワガタなど)を全てクワガタムシとして数えた。
これでは担当者の判断で種が増減します。そしてSimpsonの多様度指数では、種の数が増えるほど値は上昇します(値は0から1未満、大きいほど多様度が高い)。
例: 種類の数とSimpsonの多様度指数
① 1種類のみの場合 → 0
② 2種類で双方が50% → 0.5
③ 5種類で全て20% → 0.8
④ 10種類で全て10% → 0.9
したがって上記表の纏め方では、ジャンル数が20の『なろう』が最も有利です。
そこで類似のジャンルを統合して集計しなおすことにします。
表2a: 「小説家になろう」のジャンル別集計(ジャンル統合済み)
Simpsonの多様度指数=0.807
表2b: 「カクヨム」のジャンル別集計(ジャンル統合済み)
Simpsonの多様度指数=0.814
表2c: 「アルファポリス」のジャンル別集計(ジャンル統合済み)
Simpsonの多様度指数=0.731
表2d: 「エブリスタ」のジャンル別集計(ジャンル統合済み)
Simpsonの多様度指数=0.813
ジャンルは下記のように統合しました。
表2補足: ジャンルの統合について
サイト名の列は、1行ごとが各サイトでのジャンル名です(細かくて申し訳ありません)。
元々のジャンル数が少ないカクヨムや、ファンタジーが細分化されていないアルファポリスに合わせる形になっています。
同じモノサシで測ったので、今度は充分な意味があるでしょう。そこで並べて比較してみます。
表3: 多様度の比較 ジャンル別集計(ジャンル統合済み)
※塗りわけ例
上記で見る限り、アルファポリスのみが0.08ほど多様度が低く、他は同程度と判断できます。
『なろう』は最も良いカクヨムに比べると、0.007劣ります。しかし、この微小な差に大きな意味があるとは思えません。
それに統合済みのジャンルはジャンル数が少ないカクヨムの区分に最も近く、僅かながらカクヨムが有利になった可能性はありそうです。
ジャンル別の割合には、サイトごとの性差が表れているようです。
アルファポリスとエブリスタは恋愛ジャンルの割合が高く、元々の区分けにはBLがありました。したがって女性向け作品が多いと考えて良いでしょう。
それに対しカクヨムは恋愛が10%を切っており、『なろう』は中間の20%弱です。つまりカクヨムに男性向けが多く、『なろう』は男女の偏りが少ないのだと思われます。
また『なろう』、カクヨム、アルファポリスはファンタジーの割合が30%前後で、エブリスタが大きく下回る点も興味深いです。エブリスタは現実系寄りと考えて良いのかもしれません。
カクヨムは歴史、推理、ホラー、SFなどが僅かに多いのも特徴です。
絶対的な作品数はファンタジーや文芸に比べると明確に少ないのですが、この四ジャンルの割合に限っては歴史、推理、SFで最多、ホラーで2位です。
上記は大ジャンルごとの比較で、少々大雑把なように思います。そこで次話は、作品の特徴を現すキーワードで測ってみます。




