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第六十五話

エレノーラ視点となります。

 商人アルト、彼は数年前私が商会で活躍していた時に共闘した青年商人だった。

 数年前のことに関わらず、その時の記憶は私の中で鮮明に残っている。


 あの時、アルトとアルトの妹、ミースは父親に疎まれ、命を狙われていた。

 商会で成功する以外に、アルトが生き残る道はない、そんな状況にまで、二人は追い込まれていた。

 その際、アルトに助けを求められ私は手を貸したのだ。


 それが、私とアルトの初めての出会いだった。


 私が協力した結果、アルト達は何とか商会で成功を収めた。

 その時は、まるで関係ない商会さえ巻き込んで、騒いだものだった。

 その記憶は私の脳裏に焼き付いている。


 だが、それ以降私とアルトに接点はなかった。


 もっとも私は、それからもアルトの商会の情報は集め、順調に成長していることは知っていた。

 にも拘わらず、どれだけ調べようが商会のトップであるアルトの情報については、ほとんど得ることができず。

 そのことは、私の胸の中しこりとなって残っていた。


 故に、突然の再会に私は驚きと喜びを隠せなかった。


「無事だったのね、アルト!」


 元気だった頃のように走りよって抱き締めることはできないが、笑顔で喜びを表す私に、アルトもまた顔に笑みを浮かべて笑う。

 そして彼は、改めて頭を下げて感謝を告げる。


「エレノーラ様、あの時は本当にありがとうございました。エレノーラ様の助けがなければ、私とミースは今頃土の下だったでしょう」


「そんなことはないわ。貴方程の商人なら、私の助けがなくても何とかできたのじゃない?」


 それは、私の本心だった。

 数年前から、アルトは十代後半だと信じられないほど思慮深かった。

 それに、アルトの商会が順調に成長していっていることが、アルトの能力が高いことを証明する何よりの証拠だろう。


「いえ、私などまだまだです。エレノーラ様の足元にも及ばない」


 その私の言葉を受けてもなお、アルトは謙遜をやめなかった。

 そんな彼に、私はあえて高慢な態度で告げる。


「あら。立場によっては、過度な謙遜は美徳とはいえないわよ。 ──ねえ、公爵家のお抱え商会の会長様?」


「……っ!」


 その私の言葉に、アルトの顔に浮かんだ驚愕。

 それに自分の言葉が当たっていたことを、私は理解する。


「……どうしてそれを?」


「一時期であれ、面倒を見た商人のことを気にかけるのはおかしい?」


 そう言って、私はアルトに微笑んでみせる。

 まるで何もかもお見通しだと、言いたげに。


 ……が、実のところ私は全てを確信していたわけではなかった。

 公爵家が有力な商人を味方につけていことは知っていたが、それがどこかは見当しかついていなかった。

 半分以上、かまかけだったと言っても過言ではないだろう。


 公爵家が突然の当主の隠居により、新当主に変わってから、突然公爵家は栄え始めた。

 その突然の公爵家の成長に私は、どこかの商会が関わっているとは確信していた。

 とはいえ、それがアルトの商会だというのは、証拠も何もない私の推測でしかなかった。


 アルトの商会が急激に成長し始めたのが、公爵家が成長を始めた時期と同時期であること。

 アルトの商会が、間接的に公爵家の利益が出るように動いているようにも見えること。


 一年前に私は、それだけの情報は手に入れていた。

 しかし、ソーラス達の無茶ぶりや、からだの調子の悪化などがあり、それ以上の情報を私は手にすることができなかったのだ。


 


「……やはりエレノーラ様には叶いませんね。そこまで知られているなら、隠す必要はありませんか」


 私の言葉が半分かまかけだと知るよしはないアルトの顔には、私に対する尊敬の念が浮かんでいた。

 次の瞬間、アルトはその表情を真剣なものへと変え、口を開いた。


「エレノーラ様、今回のことで私は、公爵家の力もお借りしました。もし、そのことで恩を抱いてくださるなら、公爵家からご要望があるそうです」


「……っ!」


 公爵家、アルトが告げたその言葉に私の顔も真剣なものへと変わった。

 私は別に、侯爵家ならともかく、公爵家に対しては悪い感情は持っていない。

 しかし、公爵家は迂闊に気を許してはならないほど優秀であることを、私は知っていた。


 公爵家と変な約束を結ばされれば、私だけではなくマリーナ達まで被害が及びかねない。


 だからこそ、内心で私は決意を固める。

 どれだけ恩を盾にされようが、マリーナ達が不利になるような条件は結ばない、と。


「──公爵家新当主様は、エレノーラ様の力を公爵家に欲しています」


「…………え?」


 ……しかし、アルトが告げたのは、まるで私が想像していなかった言葉だった。

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