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頂上

クリスが朝から登り続けていたダラダラと続く坂は、ようやく終わりを迎えたようだ。


あまり見晴らしのいい場所ではないが、ここがこの島で一番高い頂上(てっぺん)には違いない。


後ろには滝があった高台がうっすらと見える。あの時、すぐ東に見えていた原生林は遥か遠くになっている。

北には海、そして西にも南にも海がある。


「やっぱ、島だったか……」


島ではないかと疑っていたが、それを望んでいたわけではない。

できたらオーリア大陸の半島であってほしいと願っていた。


けれど、ここはSの字をぺちゃんと潰し、西から東にかけて横たえたような島だった。

由香里が上陸した浜辺は、Sの字のしっぽの先のようだ。今、立っている頂上は、字の真上の丸みを帯びた部分っぽい。つまり島の最西端にいることになるのかな。

北側の海に鍵の手になった湾が見えている。



「はぁ~、やっぱりあのボートを使うしかないのね」


ポケットに入れていたのは、父親が湖で遊ぶ時に使っていた古いボートだ。

お世辞にも立派なものとは言えないが、横幅はそこそこあるので居住性?は高い……と思う。少なくとも由香里が知っている公園のボートよりも大きいし造りがしっかりしている。形状は漁師さんたちが使っている小さ目な船に一番近いかな。



島のどのあたりに下りて海に出るべきか。


クリスが海や海岸の様子を見ながら考えていた時だった。

渡り鳥がV字型になって空を飛んでいくのが見えた。


「あっ!」


思わず鳥の行く末をじっと目で追ってしまう。


「ええっー、北なのぉ。なんで東か南じゃないのよ!」


元に戻ることになってしまうが、ライシャがある西に向かうのでもよかった。北だけはない。


クリスが乗っていた船は、西の大陸にあるライシャを出て、外海であるこの大海(おおうみ)を横切り、東の大陸、オーリア大陸に向かっていた。


行く先は、オーリア大陸の西南に位置するサンダスの港だった。

クリスが住んでいたポートフォリオは、サンダスから、波の穏やかな内海をさらに東に行ったところにある。


つまりクリスとしては、できることなら、この島から東南方向に進みたかったのだ。

嵐の風は南西の方からやってくる。つまり船は風で北東に流されてしまった可能性が高い。正規の航路はたぶんずっと南の方だろう。



「鳥に文句を言っても仕方ないか」


でも……どうする?


ここから北に鳥が下りることのできる地面があるとしても、その先の保証がないんだよねぇ。

もしかしたらその地面はこの島よりも狭いところかもしれない。それにここと同じような大海の孤島が彼らの目的地なのかもしれないのだ。


あーーもうっ、究極の選択じゃん。



でも行くしかないよ、クリス。

行ってみてダメだったら、その時は東に向かってみよう。それでもどこにも行きつかなかったら……それまでの命だったってことだ。


思っていたより困難な道のりになりそうだったが、クリスは腹を決めて難しい決断をしたのだった。

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