三
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「おまえは何を考えているのだ。」
「えっと、今夜寝るところもないのでどうしようかと……」
「そうか、それはかわいそうだな。」
「よし、立ってみろ。おまえの影の、おなか──」
すると杜子春、てをかざして会話をさえぎります。
「いえ、ドーピングはもういらないのです。」
「ははあ、ではとうとう、マッチョに飽きてしまったとみえるな。」
「なに、飽きたのではありません。人間というものに愛想がつきたのです。」ぶすっ
「それはおもしろいな。どうしてまた愛想がつきたのだ?」
「人間はみな薄情です。わたしがマッチョな時は筋肉を見に来てほめたたえましたけど、いったん筋肉を失ってごらんなさい。やさしい顔もみせません。」
「ふむふむ」
「そんなことを考えると、たとえもう一度ドーピングしたところで、どうにもならない気がするのです。」
するとおじいさん、急にニヤニヤ笑いだします。
「いやはや感心、若いのにしては物がわかる男だ。ではこれからどうするつもりだ?」
慎ましく暮らすつもりでしょうか?
「あなたの弟子にしてください!」
「ほほう?」
「分かります。あなたはマッチョ仙人でしょう。でなければどうして私を何度もマッチョにできましょうか。どうか私のインストラクターになって筋トレを教えてくださいッ!!」
おじいさんは目をパチクリ、しばらく黙って考えると……
「ふふ、ふはは、ハーッハッハッハ、よくぞ見破った! ふんぬッ!!」
ムキムキムキムキ!!!!!
破れたッ!
あんなにゆったりした服だったのにッ!!
「いかにも。オレはマッチョ仙人の鉄冠子だ。」
「おおおおおーーー!!」
「はじめお前の顔を見たとき、マッチョになりたそうだったから二度までマッチョにしてやったが、それほどマッチョになりたければ、インストラクトしてやろう。」
「やったぁ! ありがとうございます、ありがとうございます」
「礼を言うのはまだ早い、マッチョ仙人になれるかはお前しだいだからな。では早速行くぞ、背中に乗れ!」
鉄冠子、杜子春をおんぶすると、時速700キロで猛ダッシュ!
「ひゃぁ〜!?」
杜子春、ビビる!
すると鉄冠子さん、歌います。
マーッチョマッチョマッチョ♪
朝に海で筋トレ! 夕方は山で筋トレ!
ポケットの中には 高タンパク鳥胸肉!
迷惑をかけないで 静かに筋トレする!
湖を猛ダッシュ! 沈む前に駆け抜けろォォォ!!!!!




