二
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杜子春は、一夜にして、洛陽一の、マッチョになったァ!!
ビバ、マッチョ!!
その僧帽筋は、泰山のごとし、そして脈打つ血管は、黄河のごとし!!
「フハハハハー、筋肉があれば何でもできるッ!!」
杜子春は駆けたッ!
しゃにむに駆けたッ!!
「ヒャッハー!」
馬車を追い越し
「ヒャッハー!」
ツボを小指で回して
「ヒャッハー!」
虎をワンパンで気絶させる。
ウワサは飛んで、玄宗皇帝の元へ!
杜子春、食客に招かれるッ!
「ハッハァー、この大胸筋を、ごらんあれ!」ピクピク
「採用ッ!!」
よかったァ!!
大都市の中心部、物価が高い場所に住み
働かずして給料が入り、朝昼晩、三食ついてくる、夢のような生活だ!!
更に、その筋肉は、人々を魅力したッ!!
絵画のモデル、彫刻、子供たちにも大人気!
一躍スーパースターに上り詰めたのだッ!!!
…
しかぁし、
杜子春、筋トレをサボった!!
最初の二週間は張り切って追い込むが、徐々に手を緩め、ぽつぽつと何もしない日が増え、ついには筋トレを止め、宴会ばかりをするのです。
豪邸を建て、クジャクを放し飼いにし、美女をはべらせ手品師を呼び、湯水のようにドバドバと金を使っていると、あら不思議。
泰山級だった僧帽筋はすっかり小山のように縮み、血管もちょろちょろと細くなりました。
もちろん人気はガタ落ち、人は遠のきました。
そして酒の飲み過ぎで、脳梗塞ッ!!
無免許の呪術師に全財産を払って一命を取り留めたところ、気づいたら、元の肉体、一文なしでした。
もうご飯を恵んでくれる人もいません。
…
ある日の夕方、もう一度洛陽の門の下に行って、ボケーっとしていると、おじいさんが現れた!
「おまえは何を考えているのだ。」
正直に話すとおじいさんは
「そうか、それはかわいそうだな。じゃあ立ってみろ。」
「おまえの影の胸のところ、そう、あー、もうちょっと左、心臓のあたり。そう。そこ。そこを夜中に掘ってみなさい。いいものが見つかるぞ。」
…
ビバ、マッチョ!
あの杜子春が、帰ってきたぞ!!
洛陽は、異様な熱気につつまれたッ!!!
返り咲きッ! 昔のように、元通りッ!!
筋肉も、豪邸も、人望も、なにもかも!!!
そう。だから。また同じ道をだどりました。
筋トレをサボって、宴会を繰り返し、心筋梗塞ッ!!
無免許の呪術師に全財産を払い、気づいたら貧弱な一文なしというわけです。
そしてまた、門にもたれかかって、ボケーっと月を眺めていました。




