鉱山の町セバル
第77話です。どうぞ。
再び世界観の説明っぽいお話です。
ルミナリア達がアドロフ王から依頼を受けた翌日。黄の王都アムドリアから伸びる街道を進む四台の馬車の列の中にルミナリア達の姿はあった。
『うぅ……馬車って思ってたよりも揺れるんだね……』
ガタゴトと揺れる馬車の中でルミナリアが近くにいない三人へパーソナルバングルで念話を飛ばす。
『ん……確かにこれは揺れる。お尻が痛い……』
『はは、普通の馬車なんてこんなもんだぞ?』
『アルルちゃんが乗ってたものとは多分質が全然違うでしょうからね』
パーソナルバングル越しに三人の声が伝わってくる。現在ルミナリア達は馬車の護衛のために各馬車に別れて乗り込んでいた。先頭からグリム、ルミナリア、アルルメイヤ、そして、最後尾にフィアナという順だ。今回ルミナリア達が何故馬車での移動をしているのかと言うと。
「急で悪いんじゃが、明日の朝、丁度その鉱山のある町。セバルへと向かう兵士たちが出発することになっておる。事態は急を要するかもしれん。共に向かってはもらえんか?」
と、アドロフ王に頼まれたからだった。
「これに揺られて三日か……お尻が……うぅ……」
そんなルミナリアの呟きを聞いていた御者の兵士が笑う。
「はっはっは! 馬車に乗ったことないやつはみーんなそう言うんだよ。俺からのアドバイスだが、次に乗るときはクッションを用意しとくと良いぞ?」
「そうします……うぅ……今すぐにでも欲しい……」
(ってそうだ、もうこの際自分で出しちゃった方が早いかも……えいっ)
ルミナリアがルミナスブランドを発動させ、手元にふかふかのクッションを創り出す。
(これで……おぉ、全然違う……)
ルミナリアが創り出したクッションは、その柔らかさを存分に発揮し、先程までのお尻への攻撃的な揺れを受け止めていた。
『今魔法でクッション作ってみたんだけど、これだけで全然違うんだね!』
ルミナリアがその喜びを三人へと伝える。
『ルミナちゃん……そんなことしちゃえる辺りすごいんだけど……なんというか……』
『フィアナ、俺はもう慣れたぞ。というか諦めてるぞ。ルミナのやつ普段から椅子やらナイフやら踏み台創って使ってるの見てたからな……』
『ルミナの裏切り者ぉ! お尻が痛い……』
『あ、あはは……ごめんね?』
『むー!』
馬車の列が小休止をとるまでの間、ルミナリアはアルルメイヤからの恨み言を聞かされ続けるのだった。
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小休止の後、アルルメイヤの涙の訴えでルミナリアとアルルメイヤが同じ馬車になったり、何度か小型の魔物との遭遇等もあったが、大きな問題が起きることもなく旅は続き。三日目の夕方、ルミナリア達はセバルへと到着した。
そのまま鉱山の方に物資を運ぶという馬車と別れたルミナリア達は、セバルの町中にある鉱夫達の宿舎へと向かっていた。
セバルの町の中では何本もの煙突が空に伸びており、今でもそこかしこから煙が上がっているのが目に留まる。
「ねぇグリム。煙突がたくさんあるけど……セバルってどんな町なの?」
「ああ、セバルの町に限ったことじゃないんだが、黄の国の鉱山の町は鉱夫達の拠点であると同時に鍛冶の町でもあるんだよ」
「そう言えばずっと金属を叩くような音が聞こえてたね」
「ん、黄の国の鍛冶師は鉱山を求めて町を巡るっていうのは結構有名だったりする」
「へぇ……」
アルルメイヤの言う通り黄の国では様々な鉱石が発掘されるため、鍛冶師達は自分の求める鉱石を求めて様々な町を巡っているのだ。
「でも色んな町に行っても鍛冶をする場所ってどうするの? その度に家と工房を建てるのって大変だよね?」
「その辺はこの国のすごいところよ。鍛冶師同士のギルドが存在してるのよ」
「そこで工房の貸し出しなんかもやってんだ。で、そのギルドの運営資金を得るための方法が……あれだな」
ルミナリアがグリムの視線を追う。そこには多くの武具や工具、アクセサリーなどが並ぶ大きな店があった。
「あれ、そういえば他に武具やアクセサリーのお店って見かけてないきがする……」
「ん、鍛冶師達の作った物はあのお店に集められてる。そしてその売り上げの一部が工房とギルドの運営費に当てられてる」
「もちろんこの町で全部が売れるわけなんてないから、鍛冶ギルドが各地の支部を通して流通を作ってんだ」
「でも、質が良いものを選ぶならやっぱり黄の国の町で買うのが一番なのよ。武具もアクセサリーもね。…………ねぇグリム?」
フィアナが珍しくそわそわとした様子でグリムを見る。
「わかってるよ、アクセサリーを見に行きたいんだろ? 旅の醍醐味を止めるなんて事はしないから安心しろ? でもまずは、今回の件が先だからな?」
「ええ! もちろんよ! ふふふふ……楽しみねぇ……」
「っ!?」
不意にルミナリアの背筋に久々な寒気が走る。
(調査が終わったら……絶対に逃げよう……!)
望みが薄いことがわかっているのだが、淡い希望を信じるルミナリア。ちなみに、隣で既に諦めたかのような穏やかな顔をしているアルルメイヤを見ないことにしたのだった。
「そう言ってるうちに着いたぞ」
ルミナリア達は、町のことを話している間に目的地へと到着していた。
――――カララン
宿舎の扉を開くと、軽快なベルの音に迎えられるルミナリア達。どうやらそこは食堂を兼ねているのだろうホールになっていたが、人気はあまり無く、いるのは扉の横の受付に座る少女と、夕食を作っているであろう数人の料理人達だけだった。
「いらっしゃい。あなた達は……鉱山で働きたいってわけじゃなさそうね? なんのご用かしら?」
綺麗な栗毛の髪の少女が、ポニーテールを弾ませながら椅子から立ち上がる。
「私達は依頼を受けてこの町まで来たんだけど……アルゴさんって人は今いるかな?」
「アドロフ王から預かった手紙があるんだ」
ルミナリアが、同い年くらいだろうその少女へと問い、グリムが王家の正式な書類を示す封蝋の付いた手紙を少女に見せる。
「お父様からの手紙? その辺に座ってちょっと待ってて! すぐに主人を呼んでくるわ!」
そう言ってぱたぱたと宿舎の奥へと走っていく少女。一方、座って待っているように促されたルミナリア達は目を見合わせると同時に驚きの声をあげた。
「「「「主人!?」」」」
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では、また次回で会いましょう。




