運命的な巡り合わせ?
第76話です。どうぞ。
黒い結晶。ルミナリア達がその言葉から連想するものは一つだった。
(もしかして、黒いハニーベアが居た場所の……?)
黄の国アムドリアへやって来てすぐに出会うこととなった闇色の結晶。それは、まるで闇そのものを凝縮したかのように禍々しく、ただ見ただけでも不吉さを感じさせる存在だった。
「ふむ、その様子からしてどうやら心当たりがあるようじゃな?」
黒い結晶の話題が出ると同時に表情が変わったルミナリア達を見たアドロフ王は、やはりといった顔をしていた。
「はい。実は―――」
フィアナが黄の国に入る前に立ち寄った宿場町での出来事を話し始める。無害なはずのハニーベアが黒く染まり人を襲ったこと。その黒いハニーベアは恐ろしく強かったこと。そして、その住みかだったであろう洞窟の奥に黒い結晶が存在していたこと。
「ふむ……その黒いハニーベアと結晶はどうしたのじゃ?」
「ん、どっちもルミナの力を使って解決した」
「黒いハニーベアには並みの攻撃は効きづらかったんだが、ルミナリアが使った付与魔法みたいなもので俺たちでも倒せたんだ」
「結晶の方もそう、私達の魔法では破壊できませんでしたけど、唯一ルミナちゃんの魔法だけがあの結晶を破壊しました」
アドロフ王が一連の話を聞き、頷く。
「ルミナリア、君にはやはり何かあるようじゃな。もしかしたら今回の件は運命的なことなのかもしれん」
「運命、ですか……?」
「ああ、実は今から話す内容は今朝届いたばかりの報告なんじゃよ。タイミングからしてそうとしか思えん。女神様の導きとも言えるかもしれん」
アドロフ王が机の上に置いてあったベルを鳴らすと、扉から入ってきた兵士がアドロフ王に書類を手渡した。
「ありがとう」
「はっ!」
兵士が部屋を去ると、アドロフ王がその書類を広げ話し始めた。
「さて、内容はこうじゃ。二日前の昼頃、ある鉱山を掘り進めていた作業員が地下で空洞を掘り当てたらしい」
「ん? 空洞? そういえば聞いたことがあるな。地下に生息してる岩蜘蛛の巣にぶち当たることがあるとかだっけか?」
セオルが少し驚いた顔をしながらグリムを見る。
「グリムさんよく御存じですね」
「まぁ、ちょっとな」
「で――――」
アドロフ王が話を続けようとした所で表情を硬くしたルミナリアがスッと手を挙げた。
「ん? どうしたのじゃ?」
「い、岩蜘蛛ってなんですか?」
「岩蜘蛛ってのは地下に生息している魔物でな。鉱石を巣に集めたり、集めた鉱石を身体に取り込んで鎧にする性質があるんじゃ」
「見つけられたら幸運ってところか」
「へぇ……地下にはそんな魔物もいるのね」
「ああ、ホリティアの方じゃまず出会わない魔物だろうし、知ってるのは色んな国を渡り歩く商人達や一部の冒険者くらいだろうな」
「ち、ちなみに大きさはどれくらい……?」
「そうじゃな、近いもので言えば狼くらいかのぅ」
「ひぅぅ……!!」
突然悲鳴をあげたルミナリアに全員から注目が集まる。
「ん、もしかしてルミナ……蜘蛛が嫌い?」
「嫌いというか……無理ぃ……」
ルミナリア――――和希は昔から蜘蛛が嫌いだった。
「あの動きかたとか……なんというか……生理的に無理だよぉ!」
「ルミナちゃん……」
ルミナリア、魂の叫びであった。
「ん、続きをお願い」
思わぬ形で中断した話をアルルメイヤが軌道修正する。
「そ、そうじゃな……」
こほん、と咳払いをしてアドロフ王が話を再開する。
「どこまで話したかの……」
「作業員が空洞を掘り当てたんだったよな?」
「ああ、そうじゃ。それが岩蜘蛛の巣だと思った現場の者達はすぐにその空洞の調査を始めたらしいんじゃが……どうも様子がおかしく、岩蜘蛛が集めたらしき鉱石はあるものの、岩蜘蛛が一匹も見つからんかったらしい。で、奥に進んだ先にあったのが……」
「ん、黒い結晶だった?」
「うむ、その通りじゃ。で、それを見た現場の人間、儂の息子のアルゴが嫌な予感がするから、とその空洞の入り口を埋めて封鎖したようなんじゃ」
ルミナリアが会話の中で聞こえてきた言葉に首をかしげる。
「え? アドロフ王様の息子さんってことは……」
「はい。ルミナさんの想像通り僕の父のことです。父は今その鉱山がある町で作業に参加しています。母もそれに同行しています」
「この国を治めるためにはこの国の鉱山の事を知っておらねば務まらんからな。王家の者は若いうちは鉱山をその目で見て学ぶ者が多いんじゃ。儂も若い頃は色んな場所を掘って回ったもんじゃよ」
(なるほど、だからセオル君のお祖父さんが国王様なのか……)
内心でセオルの両親の事が話題に出ていなかった事を気にしていたルミナリアが安堵する。
「さて、話は戻るが、儂がお前さん達にお願いしたいことはこの黒い結晶の報告が上がった町へと向かい、調査をして欲しいのじゃ。今回の報告ではまだ魔物の報告は上がってはおらんが、今後どうなるかわからん……じゃが、これは間違いなく見過ごしてはならない危機であると儂の中の何かが警鐘を鳴らしておる」
アドロフ王がルミナリア達の顔を見渡す。
「儂が考えるにこれはお前さん達にしか解決できない事だと思っておる。じゃから、これを儂からの正式な依頼として受けて欲しい。頼む」
アドロフ王がルミナリア達に深々と頭を下げる。そんなアドロフ王にルミナリア達が慌てる。
「王様!? そんな、頭なんて下げないでください!」
「ん、そんなことしなくても大丈夫」
「頭をあげてくれ王様」
「ええ、それに……ルミナちゃん、その顔からして、どうするかなんてもう決めてるんでしょ?」
フィアナがルミナリアにウインクする。グリムとアルルメイヤもまたルミナリアを見て笑っていた。
「うん、私は私にできることをやりたいから……その依頼。私達に任せてください!」
「……ありがとう」
「よし、そうと決まれば準備ね!」
こうして、ルミナリア達は黒い結晶が見つかったという町へと向かうことになった。
「……………………岩蜘蛛なんて出ないといいなぁ……うぅ……」
小さく呟くルミナリアなのだった。
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では、また次回で会いましょう。




