アドロフ王との会談
大変ながらくお待たせしました。第75話です。どうぞ。
ルミナリア達がアドロフ王とセオルに案内されたのは長方形のテーブルが置かれた先程までいた部屋よりも少し広めの部屋だった。机の上には出来立てなのだろう食事が既に並べられていた。
「好きに座って食べてくれ」
アドロフ王の言葉に目を見合わせるルミナリア達。
「公の場でもあるまいし、礼儀だ作法だは気にしなくて構わんぞ? あんなもん普段からやっとったら肩が凝るからな」
「ん、わかる……なら遠慮なく……」
笑いながら話すアドロフ王に、公の場ではないと言われたことで一気に肩の力を抜いたアルルメイヤがこくこくと頷き椅子に座る。ルミナリア、フィアナ、グリムの三人も続くように椅子へと座った。
「さて、早速話を、といきたい所なんじゃが……」
ルミナリアがアドロフ王の視線を辿る。するとそこにはフォークを持ったままどことなく悲しげな表情をしたアルルメイヤの姿があった。
「アルル……」
「おいおい……」
「アルルちゃん……」
つい先程までホリティアの姫としての気品を纏っていたはずのアルルメイヤの姿はなく、そこにはいつもの腹ペコアルルさんがいるのだった。
「はっはっはっ! そんな悲しい表情をせんでもよい。先に食事にするかの。遠慮なく食べなさい」
「アルルさんには物足りないかもしれませんけど……」
心配気味なセオルに笑うしかないルミナリア達だった。
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「では本題に入らせてもらおうかのう」
食事を終え、食後のお茶が運ばれると同時にアドロフ王が切り出した。
「セオルから話は聞いておる。アムドリアの国宝を砕いてしまったとな?」
アドロフ王の言葉にギクリとした様子で固まる四人。そんなルミナリア達を見ながらアドロフ王が笑う。
「はっはっはっ! 意地悪が過ぎたな、その件に関しては感謝しておる。ありがとう」
そう言ってアドロフ王が頭を下げる。
「この世界にあの水晶をああまで見事に砕くことが出来る人間がこの世界にあのどれだけいるか……少なくとも儂の思い当たるやつなぞおらん」
アドロフ王がセオルへと視線をやる。
「昨日の夜、綺麗な女神様が現れたとセオルが随分と嬉しそうに話していたが……」
「お祖父様!? それはいいでしょう!?」
ニヤニヤと笑うアドロフ王をセオルが焦ったような顔で止める。
「ん、ルミナよかったね。綺麗だって」
「アルル!?」
セオルにそんな紹介をされていたことに戸惑っていたルミナリアに、アルルメイヤがからかうように声をかけた。
「脱線してしまったな、すまない。セオルのやつが珍しく興奮していたものでついな。さて、ルミナリア。セオルの話によると君には翼があるのだと聞いているのだが……儂にも見せてもらえんかの?」
「わかりました」
ルミナリアは椅子から立ち上がると、その背中に光の翼を広げる。その神々しい光景にアドロフ王が目を見開いた。
「ほう……これは……」
アドロフ王の目の前でルミナリアがふわりとその場に浮かび、くるりと一回転する。
「えっと……こんな感じでいいでしょうか?」
「ああ、ありがとう。聞いてはいたが驚いたよ」
翼を消したルミナリアが再び椅子に座ると、アドロフ王が再び口を開いた。
「ルミナリア。君は本当に何者なのじゃ? それになぜまだ表舞台にいないはずのホリティアの姫が一緒なのかな?」
「それは……」
ルミナリアはその問いにすぐに答えることができなかった。自分が何者なのか。それは今の自分には分からず、自分が一番知りたいことでもあるからだ。
「実は、私はグリムとお姉ちゃんに出会うまでの事がわからないんです」
「ふむ……記憶がないと言うことかね?」
「……はい」
和希としての記憶はあることを伏せつつ、ルミナリアが続ける。
「気づけばホリティアの近くの草原にいた私は魔物に襲われたんですけど、運良くお姉ちゃんとグリムに助けられました。そして、変な話になりますけど……ホリティアの大聖堂で女神様の声を聞いたんです」
「女神様の声?」
「はい。大聖堂の中で何故か白の女神様の像に引き寄せられてしまって……その像を触ったときに声を聞いたんです。四人の女神様に会いなさい、と」
ルミナリアの話を聞いたアドロフ王が静かに頷く。
「確かに信じがたい話じゃが……ふむ……。ルミナリア。君のことはわかった。アルルメイヤ。王家の人間である君が何故この旅に?」
アドロフ王のその言葉にアルルメイヤが首を振る。
「私は今王家の人間としてここにいる訳じゃない」
アルルメイヤが立ち上がり、ルミナリアに背中から抱きつく。
「今の私はただのアルルメイヤ・ブラン。ルミナリアと同じフィアナの妹として一緒に旅してる。私がルミナリアと話して自分でそう決めたから」
そんなアルルメイヤを見ながら、アドロフ王がどこか懐かしいものを見るような優しい表情をした。
(あの眼……懐かしいの……血は争えないということなのだろうな……)
「私はこの二人の姉として旅に同行することを決めました」
「俺もルミナリアと会ったのは何かの縁だろうし、フィアナは大丈夫としても、旅なれないこいつらだけじゃ心配だったからな」
アドロフ王がルミナリア達を見渡し笑う。
「なるほど、ルミナリア。君は良い仲間に恵まれたようだな」
「……はい!」
「さて、君達は各地に残る女神様の痕跡を探していると言っていたな?」
「はい。実はこの子達と偶然入った喫茶店でこの国の鉱夫達に伝わる伝統の話を聞きまして……」
「鉱山を離れるものが後に続く者のために道具を埋める、と言うものですね?」
セオルの言葉にグリムが頷く。
「ああ、その伝承が黄の女神様から始まったって聞いて、黄の女神様の残したものが俺たちの探してるものじゃないかって話になってな」
「ん、その場所を知るためにここまで来た」
「なるほど、話はわかった。確かに儂はその場所を知っておる。じゃが、この場所を教える前に一つ儂の頼みを聞いて貰えんかの?」
アドロフ王がルミナリア達を見ながら話を続ける。
「最近とある坑道である魔物の群れが暴れておってな、それだけなら話は簡単だったんじゃが一つ奇妙な話もあってな? なにやら黒い結晶をみた、というものなんじゃよ」
アドロフ王の言葉にルミナリア達は息を呑むのだった。
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