夢じゃないよね?
第74話です。どうぞ。
「う……」
目眩を起こし、ぐにゃぐにゃに歪みぼやけていたルミナリアの視界が少しずつはっきりしていく。ぼんやりとする頭を軽くふりルミナリアは、先程目眩を起こした時からほとんど時間が経過していないことに気がついた。
(さっき見たのは……夢……?)
ルミナリアは、先程見ていた現実味の有りすぎる光景が夢とは思えなかった。見ていた景色から伝わってきた圧倒的な魔力による爆発の振動は確かにルミナリアの記憶に刻まれていた。
「ルミナ顔色悪い……大丈夫?」
「うん、平気……おっと……」
ルミナリアがなんとか立ち上がろうとして後ろへぐらりとふらつく。しかし、ルミナリアの体は地面に向かうことはなく、柔らかな感触によって支えられた。
「無理しちゃ駄目よ? 少し休んだ方がいいわ」
「うん……お姉ちゃんありがとう。アルルも心配させてごめんね?」
フィアナに抱き止める形になったルミナリアが、フィアナに支えられながら再びその場に腰をおろす。
「おいおい、大丈夫か?」
「すぐに休める部屋を用意します!」
「だ、大丈夫、少し休めば平気そうだから!」
そう言って立ち上がろうとしたルミナリアだったが、再びふらつき、フィアナに支えられてしまう。すると、見かねたグリムがルミナリアを軽々と抱き上げた。
「ったく、無理すんなって。ほら、行くぞ」
「ま、待って! わわっ!?」
「暴れんなって、あぶねーだろ!?」
「う……ご、ごめんグリム……うぅ……」
所謂お姫様抱っこの形で抱き上げられ、微妙な表情になるルミナリアなのだった。
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セオルの案内のもと、ルミナリア達はアムドリア城の一室へと通され、ルミナリアを抱えるグリムは、ルミナリアが三人寝ても余るような大きさの置かれているベッドの縁に腰掛ける形でルミナリアを降ろした。
「ほら、着きましたよお姫様」
「もー! お姫様じゃないってばー!」
「ふふ、ルミナ姫かわいい」
「アルルまで……」
「ほらほら、二人ともルミナちゃんをからかうのはその辺にしなきゃ」
フィアナがむくれるルミナリアにベッドで休むよう促し、ルミナリアがブーツを脱ぎベッドへと上がり、そのまま横になる。
「おぉ……ふっかふか……これは幸せ……」
未だに怠さと重さを感じる体を、優しく包み込む絶妙な柔らかさのベッドに、ルミナリアが思わず表情をとろけさせる。
「ふふ、喜んでもらえて何よりです。では、僕は一度お祖父様に話をしてきます。この部屋は自由に使ってもらって構いませんので、このままこちらで休んでいてください」
そう言ってセオルが部屋を後にし、扉がバタンと閉まる。その瞬間、アルルメイヤが待ってましたとばかりに目を光らせ、その場にブーツを脱ぎ捨てる。そして。
「ふふり……えいっ!」
「ちょっ!?」
勢いよく目の前のベッドの上、ルミナリアの隣へぼふんと飛び込む。
「んー……これは確かに幸せぇ……」
ふわふわの布団を抱き締めるアルルメイヤ。余程快適なのだろう、アルルメイヤの頭の上のアホ毛もくるくると回っている。
「おいおい、壊すんじゃねーぞ? そんな恐ろしく高そうなベッドの弁償なんて出来ないからな?」
「ん、だいじょーぶだいじょーぶ……」
「うん、人が寝てるところに飛び込むのは大丈夫じゃないからね?」
「……ん、だいじょーぶー」
「ところで、さっきの事なんだけど、また不思議な景色を見て……」
「えいっ」
もふもふと布団を抱き締めるアルルメイヤがベッドの上を転がり、話をしようとするルミナリアにぴたりとくっつき、そのまま自分とルミナリアをくるむように布団を被った。
「ルミナ、話は後からでもいいから今は少し休んで?」
布団の中でルミナリアに密着するアルルメイヤが、ルミナリアの耳元で囁く。
「おう、フィアナなら見張っといてやるから安心して休んでろ」
「わ、私は何もしないわよ!? あんまり……」
「あんまりってなんだよ!?」
ルミナリアがくすりと笑い、目を閉じる。
「じゃあ、ちょっとだけ……」
「ん、おやすみ」
ルミナリアがアルルメイヤの体温と息遣いを感じながら微睡むまで、そう時間はかからなかった。
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ルミナリアが目覚めて最初に見たのは、くっつきそうな距離にあるアルルメイヤの顔だった。
「ん、ルミナ起きた?」
「うん……どれくらい寝てた?」
「おう、起きたか」
「おはようルミナちゃん。あれからそんなに経ってないわよ」
ルミナリアに答えたのは、椅子に座り紅茶を飲んでいたフィアナと、向かい合うように座るグリムだった。
ルミナリアはベッドから体を起こすと、アルルメイヤの手を借りてゆっくりと立ち上がった。
「ルミナ、もう大丈夫?」
「うん、少し休んだから平気だよ。セオル君は?」
「セオルならお前らが寝てる間に一回来たぞ。お前らが寝てるのを伝えたら、また昼頃にでも来るって言ってたぞ」
「もうすぐお昼だし、もう少ししたらくるんじゃないかしら?」
「そっか……じゃあ、今のうちにさっきの続きを話すね」
アルルメイヤとソファーに座ったルミナリアが、先程見た夢の中にいたような光景の事を話し終わる。
「ほんとに夢みたいな話だな……」
「それって、さっき似たような話を聞いたばかりよね?」
「ん、私も同じことを考えてた」
ルミナリアの話を聞いた後、全員の頭に浮かんでいたのは同じ事だった。
「セオル君の言ってた伝承の話みたい、だよね?」
ルミナリアの言葉に全員が頷く。
「直前にあんな話を聞いたからあんな夢を見ちゃったのかなって思いたいんだけど……」
「こうなりゃこの後でセオルか王様に伝承の事をもう一度詳しく聞いてみるってのはどうだ? 何かわかるかも知れねぇしな」
「ん、斧の戦士の事も気になる。ルミナならその斧がどんなものだったか実際に見てもらう方法があるよね?」
「そうだね、正確じゃないかもだけど……」
ルミナリアが目を閉じて先程見た斧の事思い出す。すると、それほどじっくりと見ていなかった筈のその斧の外見が簡単に頭に浮かび上がってきた。
「ルミナスブランド!」
ルミナリアがイメージしていた戦斧を目の前に創り出す。
「うん、これだ。この斧だよ。でもなんだろう、何か違う感じがする……」
「夢の中で見たんだろ? なら少しくらい違ってもしかたないんじゃないか?」
「いや、不思議なんだけど、見た目は完全に同じだって感じるんだ。でも、なんというか……中身が違うって言うのが一番近いと思う」
「でも、見た目を正確に再現できただけでもいいんじゃないかしら?」
「うん、そうだね。これならまた作れるからもう戻しちゃうね」
ルミナリアが戦斧を消すと、グリムが立ち上がり窓の外を見る。
「さて、話してたらいい時間になってきたな」
「ん、お腹も空いてきた……そういえば昨日食べた喫茶店のオムライスは美味しかった……」
「あ、美味しかったよね!」
「ふふ、どんなお店だったの?」
そうしてルミナリア達が談笑していると、コンコンとドアをノックする音が部屋に響いた。
「すみません、今宜しいでしょうか?」
「ええ、そのまま入っても大丈夫よ」
扉の向こうから聞こえてきたセオルの声にフィアナが返事をすると、扉が開きセオルが部屋に入ってきた。
「あ、ルミナさん。もう大丈夫ですか?」
「うん、セオル君ありがとう。せっかく呼んでもらってたのにごめんね?」
「いえ、謝らないでください。何事もなくて僕も安心しました。それで、これからなんですが」
「食事の用意ができたのでな、昼食でも食べながら話をせんか?」
セオルが話そうとするのを遮る声と共に、扉から身長が二メートルはあるだろう一人の老人が現れ、ルミナリア達が固まる。
「儂はアドロフ。セオルの祖父と言えばわかってもらえるかな?」
ルミナリア達の前に現れ、ニッと笑う逞しさに溢れる人物。その人こそアドロフ・フラウム・アムドリア。黄の国アムドリアの王その人だった。
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では、また次回で会いましょう。




