私たちがやりました!!
第72話です。どうぞ。
ルミナリアとアルルメイヤが喫茶店でセオルと話している頃。
旅の道中で手に入れた魔物や動物の革や爪、角などをギルドで買い取って貰ったグリムは、商店通りにある、雑貨屋で買い物をしていた。
旅の物資の管理は主にグリムが行っているため。町に到着する度に買い出しを行うのもグリムが行っていた。
宿を出たときは殆んど空だったグリムの鞄は、何件かの店で買い物を続けているうちにパンパンになってしまっている。
「はいよ、毎度あり」
「よし、これで終わりだな」
グリムが、犬獣人の店主からお釣りを受け取りながら、事前に作っておいた、旅路で必要な物品を書き上げたメモを確認し頷く。
「すまねえ、今買った荷物とこの鞄を宿まで配達を頼みたいんだが」
「見たところあんた旅の人だろ? 商店街でこんだけ買い物してくれてんだ。いいよ、配達料はサービスしとくよ。どこの宿だい?」
雑貨屋の店主が髭を揺らしながら笑う。
「お、すまねぇ。助かるよ。宿は麓の方の……」
グリムが宿の説明をすると、店主が耳をピクリとさせながら頷く。
「ああ、あそこだね。お客様の名前は?」
「グリムだ」
「あいよ。じゃあ荷物は預かっておくよ。夜には宿に届くようにしておくよ」
店主が、紙にサラサラと筆を走らせ、グリムの名前と宿の場所を書き込む。
「よし、これで間違いないかな?」
「ああ、それで頼む。ところで、この辺りで鍛冶屋はないか? 剣を見てもらいたくてな」
「それならここの通りより上の通りに行ってみるといい。何軒かあるはずだ」
「わかった。色々とすまねぇな」
「なに、いいってもんさ。またのお越しを!」
気のいい店主に見送られたグリムは、一人のんびりと鍛冶屋のある通りへと歩き出す。天気も良く、絶好の観光日和にも関わらず、グリムの表情はどこか冴えない。それは、町の至るところから聞こえてくる今一番新鮮かつ強烈な話題のせいだった。
「いや、まさかな……あいつら確かにトラブルに巻き込まれやすいとはいえ流石に違うだろ……ははは……」
乾いた笑いを漏らすグリム。そんなグリムの耳に次々と噂話がきこえてくる。
「山の上の方から御神体が転がってたんだが……」
「今までこんなことなんてなかったわ」
「強烈な雷を見たんだって!」
「女の子が二人見えたんだが……」
そんなはずないだろう、そう何度も自分に言い聞かせながらも、半ば諦めたような心境で歩くグリムなのだった。
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「ええ、それなら私も見たわ。あれ、何だったのかしらね?」
宿の窓から見える夕日、少しずつ遠くの山影に消えていき始めた頃。宿に戻ったグリムは、食堂で紅茶を飲んでいたフィアナと町を騒がせている事件の話をしていた。
「俺も買い物の途中で見たんだがな。なんとなーく嫌な予感がするんだよな……そういやフィアナ。お前は今日何してたんだ?」
「私は昼頃から商店通りを見て回ってたわ」
グリムが意外そうな表情でフィアナを見る。
「そうか、てっきりルミナとアルルと三人で一緒かと思ってたぜ」
「あの子達は朝早くから町に行っちゃったわ。私は……ちょっと色々とあったのよ。ええ……うふふ」
(あ、これ聞かない方がいいやつだな。うん、そっとしておくか……)
グリムが、フィアナの恍惚の笑みから視線を逸らし、そんなことを考えていると、宿屋の入り口の扉が、取り付けられているベルの軽やかな音と共に開き、見慣れた金と銀の二人が入ってきた。
「思ったより遅くなっちゃったね」
「ん、晩ごはんには間に合ったから大丈夫」
「アルル……まだ食べるの……?」
「二人とも、お帰りなさい」
「ただいま」
「ん、ただいま」
食堂からルミナリアとアルルメイヤを見つけたフィアナが二人へと声をかけると、ルミナリア達は、フィアナとグリムのテーブルの椅子に腰かけた。
「あら? 二人とも、その髪飾りどうしたの?」
フィアナが、ルミナリアとアルルメイヤが身に付けている色違いの星形の髪飾りに気が付く。
「今日の午前中にお店で見つけたんだ」
「ん、ルミナが買ってくれた……」
「二人とも良く似合ってるわ。ふふ、よかったわねアルルちゃん。ルミナちゃんも隅に置けないわね? ふふ」
「いや、えっと……」
「ん……えへへ」
そっと髪飾りに触れながらアルルメイヤがふわりと笑う。ルミナリアとフィアナも釣られて笑っていると、グリムが手を挙げた。
「ところで、お前ら。一つ聞きたいんだが、いいか?」
「グリム、どうしたの?」
「お前らも見たか? 空から光の粒が降ってきたのを」
「「あー……」」
ルミナリアとアルルメイヤが声を揃えて目を逸らす。
「……………………まさかとは思うが、いや、本当にまさかなーとは思うんだが……お前たちが関わってたりとかしないよな?」
「え、えっと……」
「ん……」
ルミナリアとアルルメイヤが目を合わせる。すると、アルルメイヤが目を逸らし、手を挙げると。
「ル……ルミナがやりました……」
「アルルー!?」
アルルメイヤ、まさかの裏切りにルミナリアが叫ぶ。
「アルル、それはひどくない!?」
「ん、つい……」
「つまり、やっぱりお前らだったのか……はぁぁぁ……で、いったい何やったんだ?」
「えっと、実は――」
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「と、いうわけで、アムドリアの国宝の大きな水晶玉を砕いちゃって」
「ん、それがあの光の粒になった」
その話を聞いたグリムとフィアナが表情をひきつらせる。
「お前ら……どうしてこうもトラブルに遭遇するんだよ!?」
「ね、ねぇ……二人とも国宝って……それ不味いんじゃ?」
「ん、それは大丈夫。その時に会ったセオルが王様と話してくれるから」
「そうか……って、セオルって誰だ?」
「ん、セオル・フラウム・アムドリア。この国の王子様」
「つまり、纏めると……お前たちが喫茶店から出ると、偶然にもこの国の国宝である水晶玉がお前たちにむかって転がってきて、偶然にもこの国のセオル王子がそこにいて、結局その水晶玉を全力で破壊した結果、そのセオル王子に頼まれて、明日この国の王様に会うことになった、と……」
「う、うん」
静かに頭を抱えるしかないグリムなのだった。
「まぁそうなったのはこの際しかたない、というか好都合ではあるな」
「そうね、元々女神様にまつわるものについての情報を集めるつもりだったから、むしろ丁度いいと考えましょう」
「明日の朝、迎えが来るってセオル君も言ってたから、明日はしっかり準備しとかないとね」
そのとき、きゅう、と可愛らしい音がアルルメイヤのお腹から響いた。
「ん、じゃあとりあえず晩ごはん」
こうして、ルミナリア達の夜は更けていった。
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翌朝、約束の時間の前に食事を済ませたルミナリア達は、宿の前で迎えを待っていた。そうしていると、ルミナリアが昨日のアルルメイヤとの会話のことを思い出した。
「ねえアルル。今思い出したんだけど、昨日言いかけてたアムドリアのお城って結局どこにあるの?」
「そう言われてみれば、私もそれらしいものは見なかったわね。アルルちゃん、私にも教えてちょうだい?」
「ん、それは……」
アルルメイヤが、町の中腹付近を指差す。しかし、そこに城らしき物など見当たらず、ルミナリアとフィアナが首をかしげる。
「アルル、やっぱりそれっぽいのは見当たらないんだけど?」
「ん、それで半分正解。だってこの王都アムドリアはお城の上にある町だから」
「お城の上? もしかして、アムドリアのお城って地下にあるの!?」
「ふふり、その通り」
「流石は鉱山の国……お城まで地下にあるとは思わなかったわ……」
「はは、どの国も王都となると面白い作りをしてるみたいだぜ? この先も楽しみにしとけよ?」
そんな会話をしながら、迎えを待っているルミナリア達の元に現れたのはセオルだった。
「皆さん、おはようございます。約束通りお迎えに上がりました。今日はよろしくお願いします」
こうして、ルミナリア達はセオル先導のもと、アムドリアの城へと向かって歩き出した。
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では、また次回で会いましょう。




