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とんでもない石ころでした……

第70話です。どうぞ。

 それは、とても信じがたい光景だった。光輝く翼を広げ、見たことも聞いたこともない魔法を使う銀髪の女の子。


「あれは……女神様……」


 少年は、目を見開き思わず声を漏らしていた。煌めく羽根を舞い散らせるその姿。それは、まるで神話に語られている女神の姿そのもののようだった。見とれるのも束の間。ルミナリアの苦悶の表情を見た少年がはっとなる。


「そ、その水晶玉は吸い込んだ魔力を放出して光る性質を持っています! その放出が間に合わないような出力の魔法があれば破壊できます!」


 少年がルミナリアとアルルメイヤへと叫ぶ。それは、通常ならば考えられない対処法だった。なぜなら、数あるアムドリアの鉱山の中でも限られた場所でしか採掘されないその水晶は、大きくなればなるほど吸収できる魔力量が多くなるからだ。

 そして、今まさに転がっているものは採掘されたものの中でも最大級の大きさを誇るもので、たとえ魔法に熟達した者が十人同時に魔法を発動しても破壊できない程の魔力許容量なのだ。


(きっと……あの人達なら……!)


 それは、確信にも似た予感だった。


(あれは……いや、あんなもの!)


 たとえその水晶玉が国宝であろうと、国に住む人々を傷つけてしまうくらいならば、真に何を優先させるべきなのか。少年が決断する。そこに迷いなどあるはずがなかった。


「そんな石ころ一つ! 壊しちゃってください!!」


 そして、ルミナリアとアルルメイヤの放った銀雷の槍は、強烈な閃光とともに水晶玉を破壊した。

 町中に降り注ぐ光の粒子。少年はその中に立つ二人の少女を見ながら、長袖のシャツに隠された右腕のバングルから連結(リンク)を使用した。


「突然すみません。会ってもらいたい人達がいるのですが……」


 少年は、その連絡を終えると、光の粒が降る空を見上げるルミナリアとアルルメイヤの元へと歩き始めたのだった。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







「話したいことがあるんですが、よろしいですか?」


 少年にそう聞かれたルミナリアがこくこくと頷く。


「あ……あのぅ……それはもしかして……国宝を壊したから弁償をってお話だったり……します?」


 ぎこちない表情のルミナリア。既に涙目である。


「弁償? いえ、そんなの必要ありません! むしろこちらが感謝しなければいけませんから!」

「……え?」


 ルミナリアが目をぱちくりとさせる。


「どんな価値ある宝石も、見る人がいなければそれは無価値な物に過ぎない。真なる宝は人なのだ。昔からアムドリアの()()に伝わる言葉です」

「へぇ……ん? 王家?」


 会話の中に現れた聞き捨てならない言葉。ルミナリアが再び表情をひきつらせる。


「そうでしたね、申し遅れました」


 少年がシャツの右袖を捲り上げる。そこにあるのは、王族であることを示す白金のバングル。


「僕は、セオル・フラウム・アムドリア。アムドリアの王子です。気軽にセオルとお呼びください。あ、敬語も結構ですよ」


 ルミナリア、再び固まる。


(どどどどどどどうするのさー!?)


 心の内で混乱を起こすルミナリアが助けを求めるようにアルルメイヤを呼ぶ。


「アルルー! って……アルル?」


 アルルメイヤは、ぺたりと地面に座り込んだままだった。頭の上のアホ毛もどこか元気がないようにふらふらと揺れている。


「アルル、どうしたの?」

「大丈夫ですか?」


 セオルが心配そうに声をかけ、ルミナリアがアルルメイヤの顔を覗き込む。


「……きゅぅ」


 アルルメイヤは目を回していた。


「アルルー? 大丈夫?」

「ん……魔力を急激に使ったから……ちょっと疲れたかも……」

「あー……」



 先程ルミナリアとアルルメイヤが放った銀雷の槍(セイクリッドスピア)。アルルメイヤは、祝福によって得た爆発的な魔力放出量によって大半の魔力を消費してしまっていた。水晶玉を破壊するために必要な魔力がどれ程なのかわからなかったため、加減の仕様がなかったのだ。


「ん、瞬間的に魔力を消費した影響。立ちくらみみたいなものだから少し休めば治る……」

「それならいいんだけど……セオル君。とりあえずアルルを休ませてあげられる場所に行きたいんだけど、いいかな?」

「もちろんです。そうですね、そこの喫茶店に行きましょうか」


 セオルがすぐ側にあるカフェを指差す。そこは、つい先程までルミナリアとアルルメイヤが食事をしていたオープンカフェだった。


「それに、このままここで話してると目立ちそうですし。ほら、地面にも水晶玉が転がった派手な跡が残っちゃってますから……」

「確かに……アルル、立てる?」

「ん、なんとか……」

「僕は先に行って席を確保してきます」

「セオル君、ありがとう」


 セオルが先行し、オープンカフェへと向かう。アルルメイヤが、ルミナリアに支えられながらよろよろと立ち上がり歩き始める。


「ねぇルミナ。ルミナはあれだけの魔力を使って大丈夫なの?」


 そう聞かれたルミナリアが、目を閉じ身体の奥底にある魔力へと意識を向ける。


「うん、今回は大丈夫みたい」

「ん、ならよかった」


 アルルメイヤは、ルミナリアが無事なことに安堵すると同時に疑問が頭に浮かぶ。


(私の使った魔力はルミナと同じだったはず……一体ルミナにはどれだけの魔力があるの……? もしかして、ルミナスブランドや光の翼を展開しているときの魔法の魔力消費はこれよりも激しい……?)


 アルルメイヤが考えを巡らせる。しかし、その考えは。


 ――きゅぅ


「あ……」


 アルルメイヤ自身のお腹の音で遮られてしまったのだった。


「お腹すいた……」


 アルルメイヤのまさかの発言にルミナリアの頬がひきつる。そう、ルミナリアとアルルメイヤが食事を終えたのはつい先程のはずなのだ。


「アルル、さっき食べたばかりなのにまだ食べるの……?」


 その言葉に、アルルメイヤがなぜか不敵な笑みを浮かべる。


「ん、ごはんは大事」


(アルルの食べた量はものすごい量だったはず……アルルのお腹の容量はどうなってるの……?)


 流石に嘘だと思いたいルミナリアなのだった。







アルルメイヤのお腹はブラックホールなのでは……


感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。

では、また次回で会いましょう。

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