黄の王都 アムドリア
第66話です。どうぞ。
時刻は昼過ぎ。ルミナリア達は、山と山の間を縫うように伸びる谷の道を進んでいた。その道は、あまり整備されていないのか、ごつごつとしており、お世辞にもいい道とは言いがたい道だった。幸いなのは、ルミナリア達の乗る馬の乗り心地が良かったことだろう。
「ねぇグリム、本当に王都ってこの先なの?」
ルミナリアが心配になるのも仕方のない話だろう。星屑の里を出発して以来、日に日に、山が深くなっているのだから。
「ああ、さっきから馬車とすれ違ったりしてたろ?」
「そうなんだけどね……この道を見てると、とてもそう思えないというか……」
グリムの言う通り、先程からルミナリア達とすれ違う形で馬車や、馬に乗った冒険者らしき人達をちらほらと見かけていた。
「ルミナちゃんの気持ち、私もわかるわ。これじゃ王都に続く街道と言うよりも、山奥の魔物討伐にでも来たような気分になってくるもの」
「あー……そう言われたら俺もそんな気がしてきたぜ……」
「アムドリアってどんなとこなんだろうね……」
「ん、そんなに心配しなくていい……はず?」
アルルメイヤが、こてんと首を傾げる。頭の上のアホ毛もクエスチョンマークのようにくるんと丸くなっている。
「なんで本物のお姫様のアルルまで自信無さそうなの!?」
「だって、実際は見たことないから」
「それもそっか……」
「だから楽しみ」
そんなやり取りをしながら進んでいると、徐々に道が広くなっていき視界が開け始めた。そして、谷を抜けた一行の前に現れたのは、山の斜面に沿って広がる町並みだった。
「こりゃすげえな!」
「ん、でっかい」
「これが王都アムドリアなのね……」
「ほわー……」
各々が感嘆の声を漏らす。黄の王都アムドリア。それは、険しい山々に囲まれた、まさに自然の要塞とも言うべき雄大な都市だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
谷を抜けてから数時間。ルミナリア達は、完全に日が沈む前に山の裾に広がるアムドリアの城壁の門を抜け、町へと入った。そこは、町の中央を走る大通りだった。
「やっぱり町に入ってもすごい光景だね……これ、どこかで見たような……? うーん……」
ルミナリアが、山の頂上方向へと続いている町並みを見上げながら既視感を覚え、呟く。
「ルミナ、何唸ってんだ?」
「あ、グリム。終わったの?」
厩舎で手続きを終えたグリムがルミナリアへと話しかける。
「山の斜面だけあって、すごい町並みだと思って」
「ああ、確かにな。ここと町の両端にある三つの坂道がアムドリアのメインストリート。で、家やら店やらが並ぶ道がそれぞれのメインストリートを結んでるんだとさ。さっき厩舎の受付で聞いたんだがな」
「じゃあ、ここが中央のメインストリートになるんだね」
グリムの説明を聞きながら、ルミナリアが再び町並みを見上げる。そして、気付いた。
(あ、これあみだくじみたいになってるんだ……へー)
ルミナリアとグリムの会話を横で聞いていたフィアナが、長く続く坂道を見上げ、げんなりとする。
「これは歩いて回るのも大変そうね……毎日足がパンパンになっちゃいそう……」
そんなフィアナの肩をアルルメイヤがちょんちょんとつつく。
「ん、そうでもないと思う。あれ見て」
アルルメイヤが指差したのは、目の前のメインストリートの中央にある、人が何人か並んで入れそうな大きさの窪みだった。それが2つ並んでいる。
「アルルちゃん、あの窪みがどうかしたの?」
「上まで続いてるみたいだけど……ん? あれは……!?」
フィアナとルミナリアがその窪みを辿るように坂道を見上げていくと、山頂方向と、麓方向に向かって動いている細長い筒のような物を見つけた。それは、ルミナリアにとっては見覚えのあるものだった。
(路面電車!? 違う世界で実物を見ることになるなんてなぁ……)
「人が……乗ってるのかしら?」
「なるほどな、これが噂に聞いてたライナーってやつか」
「ん、そういえば、前にとーさまが言ってた。アムドリアの王都は、移動を楽にするための乗り物があるって。これが……」
今も人を乗せて徐々に麓へと近づいてくる乗り物、ライナーを夢中で見つめるアルルメイヤ。
「アルル、嬉しそうだね」
「んっ、知らないものを見るのは、楽しい」
「ふふ、よかったわね」
今までホリティア以外の町を知らなかったアルルメイヤにとって、新たな光景を見ることは大きな楽しみだった。そして今、遂にホリティア以外の王都を見ることができた。その感動は。
「ルミナ、ありがと」
旅のきっかけを作ってくれた大事な友達、ルミナリアへの感謝の言葉に現れていた。
「う、うん」
普段は表情の乏しいアルルメイヤの見せた蕩けるような笑顔に、思わず鼓動が弾むルミナリア。しかし、それは。
「アルルちゃん……! んぶはっ!?」
「お姉ちゃん!?」
アルルメイヤの笑顔にノックアウトされ、恍惚の表情で妹への愛を吹き出しながら倒れたフィアナによって有耶無耶なってしまった。
「お、おい、その人大丈夫なのか?」
「あーいつものことなんだ。気にしないでくれ」
「そ、それならいいんだが……」
心配してくれた町の住人がその場を去ると、フィアナの奇行に頭を抱えるグリムと、虚ろな表情のルミナリアとアルルメイヤの三人がその場に残された
「……とりあえず、ほら、フィアナ、起きろ」
グリムが、疲れきった表情でフィアナを揺さぶる。すると、フィアナの目がぱちりと開き、勢いよく起き上がった。
「はっ!? とても幸せな物を見たわ……ふふ……ふふふふふ……」
フィアナがぶつぶつと呟きながら怪しい笑みを浮かべる。
「起きたか。じゃ、宿に向かうぞ」
「うん」
「ん」
ルミナリア達は、そんなフィアナに背を向け、麓付近にある宿屋が並ぶ通りへと歩き始めるのだった。
「ちょっと!? どうして置いていくの!? ねえ!?」
自らの奇行には自覚のないフィアナなのだった。
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




