次の手がかりは?
第61話です。どうぞ。
ルミナリア、アルルメイヤ、フィアナの三人が喫茶店で話を聞き終わったのは、日が暮れかかっている時間だった。周囲で結晶が煌めく景色を楽しみながらルミナリア達が宿に戻る。
「グリムは戻ってるかしら?」
フィアナが宿の入り口の壁に掛けられている伝言板。魔力を指先に集中して滑らせるとぼんやりと光る文字が書けるというものを確認する。すると、そこにはグリムからの伝言が書き込まれていた。フィアナはそのメッセージを読み終えると、掌を文字の上に滑らせる。すると、そこにあった文字は綺麗に消え去っていた。読み終わったら次に使う人のために場所を空ける。誰もが使う掲示板を使う上でのマナーなのだった。
「こうかな? おぉー……なんか楽しいかも?」
日本でも見慣れた形、それであって使い方の全く違うファンタジーな物に恐る恐る触れるルミナリア。すっと指先を滑らせるたびにキラキラと光る軌跡が残っていく。
「天の川でも描いてるみたいだな、ふふ」
指先をくるくると滑らせ楽しそうに笑うルミナリア。無邪気に笑う銀髪の美少女が指先で光る軌跡を描いていくその様子はどこか神秘的で、まるで芸術品を思わせるその光景が、通りがかる他の旅行者達の目を引いてしまっていたことには気づかないルミナリアなのだった。
「グリムは先に戻ってたみたいね」
「ん、グリムの部屋に行く?」
「いや、一休みしてからでいいって書いてたわ。そうね、まずは部屋に戻りましょうか。ふふ、ルミナちゃん、楽しそうだけど行くわよ?」
「あ、うん!」
思わず夢中になってしまっていたルミナリアは、先ほどまで描いていた文字を掌でサッと消すと、小走りでフィアナとアルルメイヤを追いかけて行った。残された人々は、先ほどまでの光景が本当にその場にあったのだろうかと思わされながらため息を吐くのだった。
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ルミナリア、フィアナ、アルルメイヤの三人は、入浴を終え、自分たちの部屋でくつろいでいた。なお、ルミナリアは、多くの女性客の集まる女湯を落ち着いて楽しむことなど出来ないと、部屋のシャワーを使用したのだった。
「くつろげるお風呂が恋しい……」
ルミナリア、いや、和希も女の子の身体に興味がないわけではないのだ。しかし、しかしだ、自分自身が女の子になってしまった現状というのは和希にとっては難しい心境、という一言だけでは片づけきれない問題だった。確かに何度か自分の身体を確かめてしまってはいるが、だからと言ってすぐに女の子に慣れるというわけでもない。
答えの出ない悩みを続けながらシャワーを浴び終わったルミナリア。どことなくつかれたような表情で寝間着であるネグリジェに着替えると、部屋の椅子に座りため息を吐いた。そうしていると、大浴場を利用していたフィアナとアルルメイヤが部屋に帰ってきた。ルミナリアは、部屋に入ってきた二人を見るなりドキリとしてしまった。
「ただいまルミナちゃん」
フィアナの得意とする炎を連想させるような、鮮やかな赤色の髪をアップにし、その首筋にのぞくうなじからはどこか艶やかさを漂わせている。
「ん、ただいま」
そして、その隣に立ち、首を傾げながらアホ毛を揺らすアルルメイヤは、薄着をしているせいで、ただでさえ凶悪なその胸に揺れる果実が殊更強調されているようだった。更に、風呂上がりのため薄らと赤らむ頬と透明さを感じさせられるような無垢な表情のアンバランスさが何とも言えない魅力を醸し出している。
「ルミナ?」
「ルミナちゃん、どうかしたの?」
普段から見ることの多い二人の湯上り姿にドキッとしてしまったのは、シャワーを浴びながら考えていたことのせいだろうか。ルミナリアは一度深呼吸をして思考を整えると、二人へと返事を返した。
「ううん……なんでもない。おかえりなさい」
「そう? ルミナちゃん、髪を整えてあげるわ」
微笑みながらルミナリアの後ろに回ったフィアナは、ルミナリアの櫛を手に取ると、優しい手つきでルミナリアの滑らかな銀糸のような髪を梳いていく。一度、二度と梳いていくたびに抵抗など全く感じさせずに流れるその髪はどれだけの女の子たちの羨望を集めるだろうか。
「ふふ、ルミナちゃんの髪はやっぱり綺麗ね。どう? 気持ちいい?」
ルミナリアは髪を流れる櫛の感覚に心地よいものを感じながら目を閉じていた。
「うん、お姉ちゃんありがとう」
フィアナが鼻歌を歌いながらルミナリアの髪を梳いていると、フィアナのパーソナルバングルが静かに震えた。
「グリムからの連絡が来たわ。これからこっちにくるみたいよ」
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「なるほどな……信仰としてじゃなく、伝統として女神の話が残ってたってわけか。そりゃ神官に聞いてもわからねぇ訳だ」
ルミナリア、アルルメイヤ、フィアナの三人が喫茶店で聞いた話をグリムへと伝えると、腕組みをしながら椅子に座るグリムがうんうんと頷く。
「言い方はあれだが、黄の国と言えば信仰よりも採掘って印象の方が強いもんな。確かにそっちからあたるべきだったな」
「こっちで手に入った情報はこれだけよ。グリムの方はどうだったの?」
ルミナリアの座る椅子の横に立つフィアナが、問いかける。
「ああ、俺はギルドに行ってたんだよ。あの黒い魔物や黒い結晶について知ってるやつがいないかと思ってな。残念ながらそれらしい情報は無かったがな」
「あんなに強い魔物、目立たないはずないよね?」
ルミナリアが不思議そうに首を傾げる。それに対してグリムが首を振る。
「そうだな。なんたってあの強さと異常さだからな。もしくは……いや、なんでもない」
もしくは、出会った奴らはみんな……なんてことも十分あり得る話だ――グリムはそう続けようとしたのだが、敢えてそのことを話さなかった。それは、あんなとんでもない怪物が今もどこかで、もしかするとすぐ傍にいるかもしれないという現実はできれば勘弁願いたいと考えたからだ。そう考えながらグリムがベッドの端に座るアルルメイヤをちらりと見る。
「ん……」
グリムをじっと見つめるその深いエメラルドの瞳。アルルメイヤは、普段は感じさせないその聡明さからグリムが敢えて話さなかった事に思い当ったが、何も言うことはなかった。
「それはそれとして、今は今日聞いた手がかりの方から考えましょうか」
フィアナが不自然に言葉を切ったグリムの内心を察し、話題を切り替える。
「そうだな、黄の女神の残した道具とやらはどこに残ってるかってのはわからなかったんだよな?」
「ん、黄の国の鉱山なんてたくさんありすぎる」
「だから今度はその場所探しをしないといけないってことみたいだね」
「ふむ……まぁなんにせよ、何もわからなかった状態からは一歩前進ってとこだな!」
「ええ、と、言うわけで次の目的地の目星はついたわね。この国で一番鉱山の情報が集まる場所」
「つまり、黄の国の王都アムドリア、だな」
グリムの言葉にフィアナが頷いた。
「さて、そうなると出発は早い方がいいだろ。明日の朝にでも出発と行くか。じゃあ、また明日の朝な。おやすみ」
椅子から立ち上がったグリムがひらひらと手を振りながら部屋を出ていく。
「さて、明日は早起きになりそうだね」
「そうね、今日はもう休みましょうか」
「ん、早起きは苦手……うぅ」
「アルルってばホントに起きないもんね……あはは」
「眠いんだから仕方ない。うん」
そうして、ルミナリア達の夜は更けていった。
気づけばもうすぐ「小説家になろう」で「のにあれ!」を投稿し初めて一年なんですね……早いものです。
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では、また次回で会いましょう。




