アルルメイヤとサンドイッチ
手がかりを求めて行動を開始したルミナリア達は……
第60話です。どうぞ。
ありがたいことにレビューを頂きました!今後もよろしくお願いします!
翌日の昼過ぎ、ルミナリア、フィアナ、アルルメイヤの三人の姿は、星屑の里にある小さな喫茶店にあった。
「うーん……ハズレだったね……」
「そうね、手がかりになりそうな情報は得られなかったわね」
そう、ルミナリア達は、星屑の里の教会を訪れたものの、昨晩アルルメイヤが話していた内容以上の話を聞くことは出来なかったのだ。ちなみに、ここにいないグリムは。
「俺はギルドの方を当たってみる、お堅そうな方はお前達に任せた!」
と、宿から出発する際に一人で行ってしまったのだった。
「やっぱりアルルもお姫様として色んな事を知ってるんだね」
「んむ?」
ルミナリアの言葉に、肉と野菜の詰まったボリューム満点のサンドイッチを食べているアルルメイヤが首を傾げる。頬にソースを付けているその姿は非常に愛らしいものだった。
「ほら、ほっぺたにソースが付いちゃってるよ。こんな姿からはとてもそうは思えないんだけどね、あはは……」
「んむ……ルミナ、ありがと」
ルミナリアの言う通り、ルミナリアに口元を拭われているアルルメイヤの姿は、とても一国の姫だとは誰も思わないだろう。なお、二人ともそうそう目にかかれないレベルの美少女であるルミナリアとアルルメイヤは店内の数名の客達から注目を集めていた。そして同時に。
「うふ……うふふふふ……いいわ……いいわぁ……」
二人のすぐ側で怪しい表情を浮かべるフィアナも違う意味で注目を集めているのだった。
「お待たせいたしました、鉱夫の活力サンドイッチです」
そんな独特の雰囲気を放ってしまっている三人のテーブルに、ウェイトレスの女の子が新たに注文されたサンドイッチを持ってやって来た。その頭の上で獣人族特有の耳、犬の耳が揺れている。
「ん、それ私の」
「えっ……えっ?」
女の子は、今まさに大きなサンドイッチを食べているアルルメイヤを見つめて目を白黒させる。
「驚かせちゃったかも知れないですけど、アルルのであってます。ふつう信じられないですよね、あはは……」
「ん、ごはんは大事」
「は、はぁ……ではどうぞ……」
アルルメイヤの目の前に大きなサンドイッチの載った皿が置かれる。
「ん、ありがと」
「お客様、よく食べるんですね……あっ! すみません、つい……」
「いいのよ、よく言われてる上にホントのことだから」
「そうなんですか……」
そんな会話をしている間に、アルルメイヤは先ほどから食べていたサンドイッチをペロリと平らげ、今運ばれてきた新たなサンドイッチを食べ始めた。
「んーっ! 美味しい」
「アルル、またほっぺたにソースが……」
「美味しそうに食べてもらえてるみたいで私も嬉しいです」
「ん、ボリューム満点。満足」
「ふふ、元々は鉱山で働く人たち向けに作られたメニューなんですよ。それを父さんが……」
女の子がサンドイッチの話をしようとしたところに、大柄な犬耳の男が歩いてきた。
「いつまでお客さんとはなしてるんだ、向こうも手伝ってくれよ?」
「あ、父さん、ごめんなさい! ではごゆっくりどうぞ!」
女の子がぺこりと一礼し、厨房の方へと歩いていく。
「うちの娘がすまないな、なかなか同年代のやつと話す機会がないから嬉しかったんだろう。許しやってくれ」
「大丈夫、かわいい女の子はいつでも歓迎ですから、ふふ」
フィアナが先程までの怪しい表情が嘘のように微笑む。
「そうだ、さっきこのサンドイッチの話を聞いてたんですけど、元々は鉱山で働く人たち向けのものだったんですか?」
「ああ、そうだ。この店は昔は鉱山のすぐ側にあったんだ。俺もその頃は鉱山で働いてたんだが……」
「この人ったら、私と結婚してほしいって言ってきたのよ! それで、なるべく一緒にいる時間を作りたいってそのまま鉱山の仕事をやめちゃったのよ!」
「お、おい! お前なぁ……」
「なかなか帰ってこないと思ったら懐かしい話をしてると思ってね?」
会話に入ってきた半神族の女性は、厨房にいたその男の妻だった。
「素敵なお話じゃないですか! それからどうなったんです?」
(やっぱりお姉ちゃんもこういう話は好きなんだな……)
フィアナが目を輝かせて話の続きを促す。ルミナリアは、その様子を見てクラスメイトの女子達が恋愛話で盛り上がっている光景を思い出してしまうのだった。
「あー……もう、いいじゃないか? な?」
男が恥ずかしいのだろう、そわそわとしながら話を切り上げようとする。しかし、妻は嬉しそうに話し続ける。
「なに恥ずかしがってるのよ! それからしばらくはその店で働いていたんだけど、今は妹にその店を任せてこっちに出店したのよ!」
「まぁ、そんなところだ……」
「ふふ、思い出すわ……この人ったら、私にプロポーズしたときも真っ赤になってたのよ。私が返事をしてすぐに採掘道具を埋めにいっちゃって……」
「ん、採掘道具を埋めるって?」
「あ、あぁ、鉱山で働くやつの伝統なんだよ。鉱山に関わりのない人間は知らないだろうがな。鉱山の仕事から離れるときは、自分の最後の仕事場に使ってた道具を埋めるんだ。一緒に働いた仲間達のへ感謝と、後に続く人達への安全の祈りを込めてな」
「へぇ……そんな伝統があるんですね」
「一番最初の鉱山を開いた黄の女神様と王様から続いてる伝統だからな」
「「「ん?」」」
その言葉にルミナリア達三人がピタリと固まる。
「えっと……まさか、黄の女神様も同じように道具を残してたり……?」
「ああ、そうやって伝わってるな。……変な顔してどうしたんだ?」
ルミナリアの質問に答える男が不思議そうな顔をする。それもそうだろうルミナリアとフィアナは夫婦の馴れ初めの話から飛び出てしまった情報に表情をひきつらせていたのだから。なお、アルルメイヤは驚いた様子はあったものの、再びサンドイッチを美味しそうに食べていた。
「その話……詳しく教えてもらってもいいでしょうか?」
「構わないぞ、今なら客も少ないからな。昔の事、この国ができた時の話らしいんだが──」
こうしてルミナリア達は、思わぬところで情報を得るのだった。
(まさかこんなところで話が聞けるなんて……これはアルルのおかげかも?)
ルミナリアは、隣に座るサンドイッチを食べ終えて幸せそうなアルルメイヤを見て笑うのだった。
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では、また次回で会いましょう。




