旅の再開と付与術
ルミナリア達の旅が再開されます。そして、ルミナリアの新しい魔法が……
第57話です。どうぞ。
まだ目覚める人も少ない早朝。ルミナリア達は旅の支度を整え、宿屋の食堂に集まっていた。
「あんたらも出発か。最初に怪我人を見たときはどうなるかと思ったが、こうして全員を無事に見送れてよかったよ」
食堂に集まっているルミナリア達を見渡しながら、宿屋の主人がにっこりと笑う。そんな主人に、ルミナリアが申し訳なさそう話しかける。
「ホントに代金は良かったんですか?」
「ああ、最初に言っただろ? 気にせんでくれ」
「そう言ってくれるのは助かるけど……」
「ホントに気にせんでいいんだが……そうだ、じゃあ一つ頼まれてくれないか?」
「ん、何?」
「簡単なことだ、あんたらはこれからも旅を続けるんだろ? ならその行く先々でうちの宣伝をしてくれ! どうだ? これならうちの利益に十分繋がるってもんだろ?」
主人がそう言いながら楽しそうに笑う。
「わかった、必ず宣伝させて貰うよ」
「ああ、頼んだ。そこのあんちゃんも元気になってよかったよ。正直最初見たときはもうだめかと思ったもんだ。本当によかった」
主人がライズを見て
「おかげで私もこうして動けるようになりました。ありがとうございます」
「俺からも礼を言わせてほしい。ありがとう」
バルドとライズが宿の主人へと頭を下げる。
「やめておくれよ。出来ることをやっただけさ。礼ならこの子達と同じようにうちの宣伝をしてくれるならそれだけで十分さ」
「そうか……わかった。ありがとう」
バルドとライズが交互に主人と握手を交わしていると、食堂の奥で調理を担当していた主人の妻がいくつかの袋を抱えてパタパタと走ってきた。
「おっと、待っておくれよ! 出発するならこれを持っていっておくれ!」
そう言いながら机の上に置かれたのは、人数分のサンドイッチだった。
「お昼ご飯に持っておいき!」
「いいの?」
アルルメイヤが目を輝かせながらサンドイッチを見つめる。宿の朝食に出ていたサンドイッチはアルルメイヤの好物となっていたのだ。
「ああ、もちろんさ! アルルちゃんはこれ大好物だっただろう? 食べておくれ。ルミナちゃんも、レシピは教えてあげた通りだよ。旅の途中でうちのことを思い出してくれたら私も嬉しいよ」
「んっ、ありがと」
「ありがとうございます」
アルルメイヤとルミナリアがサンドイッチを受けとる。
「ほら、そろそろ出発なんだろ? あんた達も持っておいき!」
全員がサンドイッチを受け取り、宿の玄関をくぐり、外へ出る。
「また来ておくれよ!」
「元気でやるんだよ!」
宿屋の夫妻に見送られながら、ルミナリア達は宿を後にしたのだった。
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ルミナリア達は、ホリティアのギルドに今回の一件を報告に行くと言うバルド達と別れ、馬に揺られ街道を進んでいた。
「それにしても、あれなんだったんだろうな?」
「他にも同じような事が起きてるのかな?」
「少なくとも私とグリムはあんなのは見たことと聞いたこともなかったわね」
「だな、アルルはどうだ?」
「ん、私も知らない。ただ、もしとーさまが言ってた事が本当なら……」
アルルメイヤの言葉に、ルミナリアがアストン王の話を思い出す。
「邪神の僕……ってやつのこと?」
「今は何とも言えないわね……」
答えのでない疑問に全員が黙ってしまう。そのとき、きゅう、というお腹の鳴る音が響いた。
「……ふふっアルルちゃん、お腹すいたのね?」
「とりあえずそろそろ昼飯にしようぜ」
「ん、待ってました」
「アルル、よだれよだれ!」
「ついつい……」
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ルミナリア達は昼食を終えた後、前回の戦闘の際に使用した魔法について話していた。
「ん、あのときルミナの使った魔法は付与術みたいだった」
「付与術?」
付与術、ルミナリアの知らない魔法ではあったが、その言葉はゲームや漫画の中で見たことのある言葉だった。
「確かにそうね……」
「お姉ちゃん、それってどんな魔法なの?」
「ルミナちゃんは魔導器の話は覚えてるかしら?」
そう言いながらフィアナが見せてきたのは、プロテクションの魔法が込められた魔導器の指輪。
「覚えてるけど、魔導器が関係してるの?」
「ん、魔導器は付与術を使って作られてる。でも永続的に付与し続けるような付与術を使えるのは本当にごく一部の職人だけ」
「冒険者で付与術を使えるやつは俺の剣みたいな使い方をしてるな。魔力の消費が大きいから連発は出来ないみたいだけどな」
「そうだったんだ……」
「ルミナちゃんの魔法はそれに似ていたわね」
「ルミナの場合は物というか俺達に直接付与されてたような感じだが……」
通常の付与術は物に使用されるものであって、ルミナリアが使用したように人に対しての付与術は存在していなかったのだ。
「とりあえずやってみるよ」
「翼は使っちゃ駄目よ?」
「うん、わかった」
「ルミナ、そこのナイフなんか丁度いいんじゃないのか?」
グリムが食器と一緒に置いてあったナイフをルミナリアに渡す。
(対象に魔法を込めるんだよね……こんな感じかな……?)
ルミナリアが魔法をイメージし、発動させる。
「付与!」
ルミナリアが付与術を発動させると、普通にライトを発動する際の何倍かの魔力がルミナリアの持つナイフへと流れ込む。
「ん、さすがルミナ」
「成功、さすがね!」
全員が見つめるルミナリアの手には、ぼんやりと淡く光るナイフが握られていた。
「あれ? イメージしたよりも光が弱いかも? それにたしかにいつもより多く魔力を消費しちゃうんだね」
「じゃあ今度は人に対してを試してみるか? 俺にやってみろよ」
「うん、じゃあ……」
ルミナリアが付与術を使用するため、イメージを頭に描く。そう、全身を光らせてその場に立つグリムを。
「え……エンチャント!」
ルミナリアが杖をグリムに向け付与術を発動させる。すると、魔法はグリムではなく、グリムの着ている物に対して発動してしまった。
「くっ……あははははは! 」
「ふふ、グリム面白い……くすくすくす」
「あらグリム、いつもより素敵なんじゃない? あははははは!」
グリムの着ている鎧と服が燦然と輝くというシュールな光景が生まれていた。
「なんだこりゃ!? って、お前ら! どんだけ笑ってんだよ!」
「だって、これはさすがに……ね? あはははは!」
「ルミナー! お前ら、待ちやがれ!」
「ん、にげる!」
グリムに掛けられた付与術が解除されるまでの間、ルミナリア達とグリムの追いかけっこは続いたのだった。
光輝きながら走り回るグリム……
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では、また次回で会いましょう。




