急襲
洞窟の中へと踏み行ったルミナリア達は……
第53話です。どうぞ。
コツコツと足音が響く洞窟内は、ルミナリア達の周囲に浮かぶ二つの光球によって照らされていた。
「この洞窟、入り口は狭いが入ってみれば広いんだな」
グリムが周囲をキョロキョロと見渡しながら呟く。ルミナリア達が歩く洞窟内は五人が広がって歩いても余裕がある程度には幅があった。
「この奥に何があるのかしらね?」
「うーん……それはわからないけど、この感じ、間違いなく近づいているかな。この一番奥に──」
「グォォォォ!!」
ルミナリアが言葉を続けようとしたとき。ルミナリア達が歩いてきた方向。入り口の方から咆哮と足音が響いてきた。
「おいおい、よりによってこんなタイミングかよ!」
グリムが剣を抜き襲撃に備える。
「まさか……俺達がここに入るのを待っていたのか!? だがやることは変わらん!」
「なんにせよやるしかないわね……! ルミナちゃん! アルルちゃん! ここは接近される前に叩くわよ!」
「うん!」
「ん!」
アルルメイヤとフィアナが詠唱を始め、ルミナリアも周囲に剣と槍を創り出し攻撃の準備を始める。
「グォォォォ!!」
再び入り口から響く咆哮。それは先程よりも近く、すぐ側まで迫っているようだった。ルミナリア達が迎撃のために備える。しかし、襲撃者が狙っていたのはまさにそのタイミングだった。
「──っ! そんな!! 後ろからも!?」
ルミナリアが洞窟の奥からも近づいてきた気配に気がつき振り返る。
「グゥゥ……!」
そこには、入り口から迫っているものとは別の、低い唸り声を響かせながら静かに迫る黒い巨体がいた。
「まさか……こいつら始めから二匹いやがったのか!! フィアナ! 入り口の奴は頼む!」
「挟み撃ちか……獣の癖に嫌らしいことをしてくれる!」
バルドとグリムが既に接近していた奥側の敵へと斬りかかっていく。
「この傷は! こいつは前回のやつか!」
「隠れて傷を治していたにしても回復が早いみたいだがな!」
バルドとグリムが足止めのためにも攻撃を続ける。
「ルミナちゃん! アルルちゃん! 私達は全力で入り口側を仕留めるわよ! こんな狭い場所で戦うことになったら……!」
「ん! やらせない!」
死ぬことになるかもしれない。フィアナが言わなかった言葉にルミナリアの背中に嫌な汗が流れる。
(そうだ、この世界はこんな危険な場所なんだ……こんなところで死ねない! 誰も死なせたくない!!)
「こんな場所で終われない!」
ルミナリアが洞窟の入り口側から見えてきた巨体を見据え、杖を握り直すと同時に光の翼を展開する。その瞬間の事だった。時が止まり、ルミナリアの頭の中に声が響いてきた。
「手を取り合うことの尊さを、大切さを感じられたあなたにはもう出来るはず。だから、乗り越えて──」
その声が終わると同時に再び時間が動き始める。ルミナリアには、今のが何であったのかはわからなかった。しかし、今の自分に何が出来るのか。それがはっきりと頭に浮かんでいた。
「──光あれ!!」
ルミナリアが杖を掲げ、高らかに声を揚げる。すると。
「えっ!?」
「なに……これ……?」
フィアナとアルルメイヤの腕輪を覆うリボンから小さな光の翼が現れたのだ。
「大丈夫! それよりも今はあいつを!」
「……そうね! いくわよ!──バーストスピア!」
「んっ!──ホーリーボルト!」
フィアナとアルルメイヤが入り口から迫る巨体へと魔法を放つ。そして、変化へと気がついた。
「えっ!?」
「これは……」
フィアナの炎は白く、アルルメイヤの雷は白銀となっていたのだ。
「グォォォォ!?」
高速で飛翔した魔法が黒い巨体へと直撃すると、巨体はあっという間に白い炎に包まれ転倒し転がると、動かなくなってしまった。
「グリム達は!?」
敵が動かなくなったことを確認したフィアナがグリムとバルドへと振り向くと、そこにはフィアナ達同様に戦況が大きく変化していた。
「ここだ!! バルド!」
「うおおおおおお!」
「グォォォォ!!」
グリムが側面から斬りかかり、そちらに気をとられた黒いハニーベアへとバルドが振りかぶった斧を叩きつける。ハニーベアも、斧を防ごうと腕を振るう。以前ならば防がれていただろう。しかし、その腕は見事に両断され、白い炎に包まれながら地面へと落ちていった。
「グリム達も……」
グリムとバルドの握る剣と斧が淡い光に包まれていた。
「ルミナ、これは……?」
「また声が聞こえたんだ。何故かはわからないけど、これは誰かを祝福する力。闇を払う力なんだってわかったんだ……でも、やっぱりかなり消耗しちゃうみたいだね……」
ルミナリアは、魔力を大きく消費し、軽い貧血のような感覚に襲われていた。
「ルミナちゃん、大丈夫?」
「うん、まだ大丈夫……相変わらず燃費が悪いや……」
「ルミナ……」
腕を落とされ、巨体がたたらを踏み大きく怯む。そこに再びグリムが走り込み剣閃を走らせる。グリムの斬りつけた場所からも白い炎が上がる。
「バルド!」
「これで決めさせてもらうぞ!!」
グリムがその場から飛び退き、バルドが踏み込み、輝きを増した斧を振りかぶる。
「うおおおおおおおおお!!」
「グォォァァァ……」
強烈に振り下ろされた斧に深々と斬りつけられた巨体は、ドスンと音を立てながら仰向けに倒れると、全身を白く燃え上がらせ動かなくなった。
「ルミナちゃん、まだ気配はある?」
「いまのところ他にはもういないと思う」
ルミナリアの言葉を聞いたグリムがその場にしゃがみこむ。
「はぁぁぁぁ……いやぁーヒヤヒヤしたぜ……こういうのは勘弁だな」
「そうね、今回もルミナちゃんの力に助けられたわね」
「そうだ! おいおいルミナ! さっきのなんだよ!? 身体が軽くなったと思ったら剣が光るわ燃えるわで驚いたぞ!?」
「だが、おかげで助かった。ルミナリア、ありがとう。これで借りを返せた」
そう言って、バルドは穏やかに笑うのだった。
「じゃあ後は奥の方にあるって言う気配を確かめるだけね」
「そうだね、これ以上何もなく終わってくれたらいいんだけど……」
そう言いながらも、ルミナリアはこの奥で何か大変なことが起きそうな気がしてならないのだった。
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では、また次回で会いましょう。
洞窟の奥で待つものとは?




