ハニーフルーツ ※イラスト有
第52話です。どうぞ。
翌日の早朝、ルミナリアが目を覚ますとアルルメイヤがいつものように抱き付くようにしてすやすやと寝息をたてていた。
(いつもながらアルルがくっついてるのはドキッとするよ……)
アルルメイヤはルミナリアにぴったりとくっついており、ルミナリアのすぐ目の前にはアルルメイヤの無防備な寝顔があった。
「んー……」
アルルメイヤがもぞもぞと身体を動かす度に、抱きつかれているルミナリアへ柔らかな感触が伝わる。
「もー……アルル、起きて、朝だよー」
「うー……」
ルミナリアがアルルメイヤを揺さぶると、アルルメイヤの瞼がうっすらと開いた。普段通りならば、ここからが長いのだが、今日のアルルメイヤの反応は普段とは違っていた。
「ほら、朝だよ」
「んぅ……ひぅ!?」
「わっ!?」
アルルメイヤの反応は劇的だった。うっすらと開いた眼がルミナリアの顔を捉えた瞬間、アルルメイヤの色白の頬が朱に染まり、驚いたかのようにビクリと身体が跳ね、ルミナリアに密着していた身体を離した。
「アルル……どうしたの?」
「んっ! ななななんでもない……えっと……ちょっと変な夢みただけ……」
「うーん……? そう?」
「うふふふふ……ふひ……」
「「!!」」
ここまで動揺した様子のアルルメイヤを見ることは今までになかったルミナリアだったが、同室の隣のベッドから聞こえてきた怪しい笑い声に思考を中断させられてしまった。
「私の妹たちはなんでこんなに可愛いのかしら……うふふ……」
「お、おはよう……お姉ちゃん……」
「ん、フィアナ、おはよ……」
ルミナリアとアルルメイヤがドン引きしたような表情で、危ない表情をしたフィアナへと挨拶をすると、フィアナの表情が駄目姉モードからお姉ちゃんモードに切り替わった。
「ふふ、二人ともおはよう。さ、ご飯にしましょ」
「うん、今日も頑張らないと、だね」
フィアナとルミナリアがベッドから降り、寝間着から着替えを始める。しかし、アルルメイヤだけはこっそりと頭まで布団にくるまり、そこに残るルミナリアの香りに、昨夜の事を思い出していた。
(あれ、なんだったんだろう……ルミナ……)
「こーら、アルル、早く着替えないと朝ごはん食べられなくなっちゃうよ?」
「ん、それは困る」
ルミナリアに促されて、アルルメイヤも着替えを始める。アルルメイヤの胸のうちにあるその感情がなんなのか。今のアルルメイヤにはわからなかった。
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準備を整えた一行は再び山を探索していた。目的は昨日ルミナリアが発見した気配の根元に続く洞窟だ。
「ルミナちゃん、昨日言ってた場所ってどの辺かわかるかしら?」
「うん、昨日調べたからかな。今日は昨日より方向がわかる気がする」
ルミナリアは、依然として漂う気配を感じながらも、その根元の方向をなんとなく捉えることができていた。
「ふむ……黒いハニーベアの方はどうだ?」
バルドに聞かれ、ルミナリアが周囲の気配へと集中する。しかし。
「うーん……やっぱりそっちの方は駄目みたいです……」
「そうか……」
やはり黒いハニーベアの気配を捉えることが事はできなかった。
「またいきなり襲われる可能性も十分ある。警戒していこうぜ」
「うん、何か感じたら直ぐに言うよ」
と、言う会話をしていたのが少し前の事。ルミナリア達は黒いハニーベアから襲われる事なく歩みを進めていた。そんな中、ルミナリアの隣を歩いていたアルルメイヤのアホ毛がピンと立った。
「ん……なんか甘い匂いがする」
「え? ……あ、ほんとだ」
「この山にはハニーフルーツが自生している。その匂いだろう。ちょうどこの先にあるんじゃないか?」
そう言ってバルドが指差す先に、艶々とした朱色の木の実のなる木があった。
「んー! 甘い香りね!」
「ん、おいしそう……」
一行が木に近づくと、濃密な甘い香りがルミナリア達を包み込んだ。ルミナリアが木の下に立ち、木の実を見上げていると、木の実から何やら粘度の高い液体が垂れていることに気がついた。
「バルドさん、木の実から落ちているのはなんですか?」
「それがハニーフルーツの特徴の蜜だ。デザートに使われたりすることが多いな」
「いくつか採っても問題ないですか?」
「ああ、大丈夫だろう。採ったらそのままでも食べられるぞ。だが珍しいな。この実はハニーベア達の餌でもあるから、見つけられたとしてもここまで大量になっていることはそうないぞ?」
「そうなんですね……よっと!」
ルミナリアが空中にナイフと篭を作り出す。そのナイフと篭を木の実のすぐ側まで移動させ、木の実を五つほど採って篭を手元に下ろす。その光景をみたグリムが思わず。
「ルミナ、やっぱお前便利だな……」
と、苦笑した。
「じゃあ少しだけ休憩にしましょうか」
「ん! 賛成!」
フィアナの提案にアルルメイヤが嬉しそうに賛成する。その頭の上ではアホ毛がぱたぱたと揺れていた。
「ルミナ! ルミナ!」
「あはは! ちゃんとあげるよ!」
ルミナリアがハニーフルーツをアルルメイヤに渡すと、早速とばかりにぱくりと齧る。
「んーっ!」
「ふふ、アルルちゃん美味しそうね? ルミナちゃん私にもいいかしら?」
「おう、俺にもいいか?」
ルミナリアが全員にハニーフルーツを渡し、自分も篭から取り出したハニーフルーツを一口齧る。
「すっごく甘いね!」
そのハニーフルーツはまるで桃のように瑞々しいながらも、濃密なのに爽やかな甘味を備えていた。気がつくと、あっという間にハニーフルーツを食べ終わってしまっていた。アルルメイヤは食べ終わってなおその余韻に浸り幸せそうな様子だった。
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小休止を挟み、移動を再開して間もなく。洞窟の入り口を探して歩く一行の前についに洞窟の入り口が現れたのだった。
「ここ、だね」
洞窟の入り口に立ったルミナリアには、奥から曖昧だった気配が漂ってきていることがはっきりとわかった。
「ルミナの感覚が正しいなら何が起こるかわからねーな。気を付けろよ」
「じゃあ、行こう」
ルミナリアが周囲にライトの魔法を発動させ、明かりを確保すると、一行は洞窟の中へと進んでいった。
「──グルゥ……」
遠くから一行を見つめる紅い相貌もまた、静かに移動を始めたのだった。
洞窟の中でルミナリア達を待つものとは……!?
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。
のんたさんにアルルメイヤのイラストを頂きました!




