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宿とお風呂といつもの姉と

本当に長らくお待たせいたしました……またよろしくお願いします!

ルミナリアはお風呂に連れてこられてしまいました……


第49話です。どうぞ。

 そこは大浴場へと続く脱衣場の片隅。もちろん入り口には女湯と書かれている。そこではルミナリアが裸のフィアナ(魔王)によって追い詰められていた。


「やだ……やだ……こないでぇ!!」

「ふふふふふふ……ルミナちゃぁん♪」


 目に涙を浮かべながらじりじりと後退するルミナリア。全裸のフィアナもそれに合わせてじりじりと近づいていく。


「お姉ちゃん! ちょっ……!」


 フィアナの胸で揺れる柔らかそうな二つの膨らみが少しずつルミナリアへと迫っていく。ルミナリアが真っ赤になりながらその光景から目を逸らす。その視線の先には。


「!!」


 小柄ながらも大変立派な膨らみを持つアルルメイヤが、下着姿でルミナリアを見詰めていた。ルミナリアが思わずまじまじとアルルメイヤの全身を見てしまっていると。


「ん……ルミナのえっち」


 アルルメイヤが楽しそうにニヤリと笑う。


「ご……ごめ──」


──ガシッ。


 ルミナリアが慌ててアルルメイヤへと謝ろうとしたとき、ルミナリアの両肩が掴まれた。


「ふふふふふふふふ……」


 ルミナリアの耳に聞こえてくるフィアナ(魔王)の笑い声。ルミナリアがギギギと音がしそうな程ぎこちなく声の主を見る。


「さぁ、脱ぎ脱ぎしましょうねぇ?」

「ひっ……!」


 この日ルミナリアが着ていたのはオフショルダーの紺と紫の服だった。動きやすいがひらひらして足が見えそうになるのが悩みどころではあったが、フィアナとアルルメイヤが旅立ちに合わせて選んでくれた物だったため購入した服だった。だったが。


──ヒュン!



「なっ!?」


 あっという間だった。抵抗する間も無かった。フィアナは恐るべし速度でルミナリアを下着姿にしてしまった。脱がされた服は近くに置かれている篭の中に既に綺麗に畳まれた状態で置かれていた。


「ルミナちゃぁぁん……」

「今のなにぃ!?」 

「さぁ下着も脱ぎましょうねぇ?」

「待っ──」


 ──ヒュン!!


「……ふふひっ」

「……えっ?」


 微動だに出来ぬまま立ち尽くすルミナリア。そして、両手にブラとパンツを持ちいよいよもって危ない表情のフィアナ。そう、ルミナリアは一瞬で一糸纏わぬ姿にされてしまったのだ。


「あ……ああぁ……」


 透明感のある白い肌と照明に煌めく銀の髪がよく映えている。恐らくこの場にルミナリア達以外の人がいたならば間違いなく目を奪われていただろう。


「ルミナちゃぁん、お風呂に行きましょうねぇ?」

「ん、私もいく」

「先に待ってるわ!」  


 ──ガバッ!


「わっ! ちょっと!? アルル!助けてぇぇぇぇ!」

「うふふふふふふふひひ!」 


 フィアナに抱かれたルミナリアがそのまま浴場の方へと連れ去られていく。一方残されたアルルメイヤは、先程自分がふと言ったことについて考え事をしていた。


「ルミナ真っ赤になってた」


 ルミナリアがアルルメイヤの方を向いたとき、アルルメイヤは体を隠すことなどしていなかった。そのため、ルミナリアの目はしっかりとアルルメイヤの全身を見ていた。その小柄な身体に似合わぬ豊満な胸や、まだ毛の生えていないすべらかな股間も。


「男の子の視線で見られちゃった、のかな……でも、今は女の子で……うーん?」


 ルミナリアをどう見たらいいんだろう、と悩むアルルメイヤ。


「……とりあえず私もお風呂」


 アルルメイヤは答えを出せないままフィアナ達の後を追った。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






 それから後、フィアナに身体中を洗われたルミナリアは、大騒ぎの後に温かいお湯の中にいた。フィアナから解放された安心感と久々の湯船に、まったりとしていた。なお、現在フィアナは遅れて入ってきたアルルメイヤの髪を洗いながらうっとりとしている。


「はっふぅぅぅぁぁぁ……やっぱりお風呂はいいねぇ……」


 ルミナリアはこの世界に来て初となる湯船に浸かるという行為を楽しんでいた。その表情は普段ならば絶対に出てこないような蕩けるような笑顔だった。


「この世界にもちゃんと湯船があってよかったぁ……お姉ちゃんの家には無かったからなぁ」


 実は元の世界では様々な入浴剤を楽しむという趣味があったルミナリアにとって湯船に浸かる機会が無くなってしまっていたことはちょっとした悲しみのひとつではあったのだ。ルミナリアがこの絶好の機会を楽しんでいると、湯船にフィアナとアルルメイヤの二人もやって来た。


「ルミナちゃん随分気持ち良さそうね?」

「ルミナ、なんか見たことないくらい緩んでるけど大丈夫?」

「わわっ!?」


 ルミナリアが表情を引き締め、なるべく二人の方を見ないように背を向ける。


「ん、ルミナ、何で壁ばっかり見てるの?」

「いや、だって……ね?」

「ね? じゃわかんない」


 アルルメイヤがルミナリアの背後に近づき、その背中をつんつんとつつく。


「そうよ、こっち向いてお喋りしましょう? うふふ」

「許してー!」

「仕方ないわね……今日のところは許してあげましょう」


 ルミナリアがフィアナのその言葉にほっと息を吐く。


「そうね、赤の国は温泉地帯でもあるし、その時にでも──」

「温泉があるの!? あわわ……」


 ルミナリア温泉という言葉に反応し、フィアナ達の方を向くも、すぐに壁の方へと向き直る。


「ええ、色んな国に温泉はあるけど、やっぱり赤の国が一番有名よ。私の故郷にも近いし、そのうち案内してあげるわ」

「やった! お姉ちゃんありがとう!」

「ルミナ、温泉好きだったんだ?」

「うん! 楽しみだなぁ!」

「でもその前に、温泉は私たち以外にも人がいるんだから早く慣れないとダメじゃないかしら?」

「うぐっ……」


 フィアナの指摘にルミナリアが固まる。


「ルミナも今は(・・)女の子なんだから気にしないでいいと思う」

「そう言われてもね……突然は難しいよ……」

「ん、じゃあゆっくり慣らしていけばいい。私がルミナといるから」


 ──むにゅん。


「なっ!?」


 ルミナリアの背後からアルルメイヤが抱きつく。突然のことにルミナリアが固まる。


「ちょ……ちょっと! アルル!?」

「あ、ずるいわ! お姉ちゃんも混ぜなさい!」

「わああああああ!?!?」


 こうしてお風呂は再び大騒ぎとなった。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「ったく、あいつらなに騒いでんだ?」


 一方、男湯では一人でゆっくりお湯を楽しんでいたのだが、時折聞こえる騒ぎ声には呆れるほか無かった。


「どうせフィアナのやつがルミナとアルルにでも手を出してんだろうが……」


 そこまで考えたグリムがふと気づく。


「よくあいつら今まで一緒に生活できてたな!?」


 グリムが今更なことを考えていると、浴場の扉がガラリと開かれ先程の大男が現れた。


「お、あんたか。連れはどうだ?」

「今は落ち着いて眠っている。本当に助かった」

「俺はなにもしちゃいねぇよ。礼ならあの二人にしてやってくれ。自己紹介がまだだったな。俺はグリムだ」

「俺はバルドだ」

「さて、早速だが聞きたいことがあるんだが、いいか?」


 グリムが湯船からシャワーを浴びているバルドの背中へと声をかける。


「あぁ、なんだ?」

「あの傷、いったい何にやられたんだ? ちょっと普通じゃないぞ」

「それが……わからないんだ……」

「わからない?」


 バルドの言葉にグリムが眉をしかめる。


「どういうことだ?」

「いや、それは正確ではないかもしれんな……あれは恐らくハニーベア……だろう……」

「ハニーベア? おいおい、そりゃ冗談が過ぎねぇか? ハニーベアは人を襲ったりはしねぇだろ」


 ハニーベアは、その名の通り蜂蜜を主食とする熊であり、その性格も温厚なため、無害な動物として有名なのである。


「だからわからない(・・・・・)んだ……俺達のいた近くの山はハニーベアや鹿が多く生息している場所なんだが、最近様子がおかしいようで調べにいってこの様だ。あんたは聞いたことないか? ここ最近鹿が山以外の場所に現れるようになってきているって」

「あぁ、それならわかるぜ。昨日林で鹿が見つけてるからな」

「そうだったか……」

「もしかしてあんた、また山にいくつもりか?」

「そのつもりだ……なぁ、相談なんだが、俺に力を貸してくれないか? このままあいつを放置していたらもっと大きな被害がでないとも言い切れない。何より、あいつをあんな風にしたツケを払ってもらう必要がある!」


 バルドがグリムに勢いよく頭を下げる。


「ふむ……この場で俺だけが決められる話でもないな……このあと食堂で話を聞かせてくれ、全員で話を聞かせてくれ」

「わかった。そのときにちゃんと話す。あの黒いハニーベアのことを」


 バルドが強く握りしめた拳は、力を入れすぎて震えていた。






 

感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。

では、また次回で会いましょう。

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