出来ちゃった……
ルミナリアが出来ちゃったようです……
第48話です。どうぞ。
「……あれ? これって……」
ルミナリアの背で光の翼が揺れる。それは、以前出現した時よりも格段に小さなものだった。
(今回はちゃんと制御できそう……かな?)
ルミナリアの身体の奥底から湧き出る力の奔流は、前のものを噴き出る間欠泉だと表現するならば、今回は湧き続ける泉のようだと言えるレベルのものだった。そして、今なお湧き出る力はしっかりとルミナリア自身で制御できていた。
「嬢ちゃん……あんたは……いや、ありがとう……ありがとう……!」
今この場にいる人々の視線はルミナリアへと注がれていた。いや、正しくはルミナリアの背にある光の翼へとだろう。
「ルミナ……また翼が……」
「ルミナちゃん!」
アルルメイヤとフィアナもまた、ルミナリアを見詰める一人だった。その表情は周囲の人々のような驚愕の表情ではなく、不安の色が濃いものだった。ルミナリアはアルルメイヤとフィアナのその表情に気付くと、力を制御し光の翼を消した。
「アルル、お姉ちゃん、心配しないで。今回は大丈夫」
「ほんと?」
「魔力切れは?」
「うん、大丈夫そう」
ルミナリアが微笑みかけると、アルルメイヤとフィアナの表情もふっと緩んだ。なお、事情を把握しきっていないグリムは周囲の人々と同じく困惑したような表情になっていたが。
「お、おい! とりあえずそいつを運ぶぞ! どこかに場所はないか!?」
先ずは剣士をどこかで休ませるべきだ、と判断し声を上げた。
「それならうちにきな! ちょうど客を見送ったところで部屋が空いてんだ! 怪我人から金とるようなケチ臭いことなんかしねぇからよ!」
グリムの声に反応したのは口許に髭を生やしたずんぐりとした体型の茶髪の男だった。
「すまない、助かる」
「いいさ、そこの嬢ちゃんたちも来るといい」
「はい」
「ん」
大男が再び剣士を抱える。その顔色は依然として悪かったが、先程のような苦悶の表情はなく、穏やかな様子だった。
ルミナリア達は、馬を厩舎へと預け、男性の案内で宿へと向かった。
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宿に到着したルミナリア達は、大男達が部屋へと案内された後、髭の男性、宿の主人に部屋の振り分けについて話していた。
「部屋はどうする? 今ならどう使ってもかまわんよ」
「そうね、ルミナちゃんとアルルちゃんは私と同じ部屋でいいかしら?」
「うん」
「ん」
「じゃあ俺は別の部屋で頼む」
「わかった、じゃあ普通の部屋と大部屋に案内する。こっちだ」
宿の中は広々としていた。入り口を入ってすぐの食堂のような所を抜けた先の廊下に扉が並んでいた。
「大部屋はここだ。ゆっくりしてってくれ」
「グリム、荷物を置いたら来てもらえるかしら?」
「ああ、わかった。んじゃまた後でな」
バタンと部屋の扉が閉まり、ルミナリア達だけになる。
「とりあえず荷物を下ろしましょうか」
ルミナリア達が持っていた荷物を片付け、備え付けのソファーに腰をおろしたところで部屋の扉がノックされた。
「俺だ、いいか?」
「今開けるわ」
フィアナが扉の鍵を開け、扉を開くと鎧を脱ぎ身軽な服装になったグリムが立っていた。
「そこのソファーに座って」
「おう」
四人がテーブルを囲むようにソファーへと座ったところで、グリムが早速とばかりに口を開いた。
「で、さっきのは一体なんだったんだよ?」
「そうね、ルミナちゃん、話してもいいかしら?」
「うん、大丈夫。グリムにも知っていてもらった方がいいだろうし」
「そうね、じゃあ――」
それからルミナリア達は、ホリティアに到着し、グリムと別れてから起こったことを説明した。女神像のこと、豊穣祭での出来事のこと、そしてこの中で現れた光の翼と魔力切れを起こしてルミナリアが倒れてしまったこと。流石にルミナリアが男だったことは話せなかったが。
「おいおい、知らねえ間に随分と大変だったみたいだな……なあルミナ、さっき光の翼が出てたみたいだけど魔力切れは大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫みたい……というかこれ多分……ちょっと見てて」
「ルミナ?」
「ルミナちゃん、何をするの?」
ルミナリアが突然ソファーから立ち上がり、杖を構える。
(たぶん……こう、だよね?)
ルミナリアが目を閉じて集中する。イメージするのは奥底にある門に触れるような感覚。
(これだ!)
――カチリ
今回は自らの意思でその門の鍵を外し、ゆっくりと開いた。そして、目を開けたルミナリアが自分の背中側から伸びる翼を確認する。
「あはは……出来ちゃった……」
ルミナリアがどこか照れたように笑う。
「こりゃすげぇな……」
「ん、ルミナ綺麗……」
「そうね……自分で制御出来るようになったの?」
「うん、今なら調節が出来そう」
(またあのときみたいに飛んだりできるかな?)
ルミナリアはそう思いながら背中の羽へと意識を向けてみた。すると。
「おっと!」
ルミナリアの足が地面を離れ、その場にふわりと浮遊した。
「おいおい、まさか空まで飛べるのか?」
「わかんない、どこまでやれるんだろ?」
ルミナリアがふわりと着地し、翼を消す。
「うーん……飛ぶだけなら魔力の消費は気にならないかな。でも……翼があるときだけ使える全力の魔法は結構魔力を消耗しちゃうみたい……」
「ルミナ、無理はしないで」
「そうね、それなら余程のことがない限り控えた方が良さそう」
「ルミナの奥の手ってやつだな。でもその翼ってなんなんだろうな? 見た感じルミナの魔法ってわけでもなさそうだよな?」
「確かにこれは魔法とは違う感じ。一番近いのは門を開いていく感じ……かなぁ?」
ルミナリアの説明に首を傾げる三人。
「うーん、魔力を感じる時みたいに集中すれば門があるんだけど……何て言えば良いんだろ?」
その感覚は、ルミナリアからしてもうまく伝えられないものだった。アルルメイヤとフィアナも目を閉じ集中してみるが。
「ん、ちょっとわかんないかも……」
「そうね……もしかするとそれはルミナちゃん特有の感覚なのかも……」
その後、アルルメイヤのお腹の音が鳴り、夕食へと向かうまでの間、一行は明日の予定について話しながら過ごしたのだった。
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「おいしかった……」
「アルルは相変わらずよく食べるね……」
「昨日に続き鹿料理なのには驚いたぜ」
「ここ最近になって近くに出るようになったらしいわよ? 厨房の人が言ってたわ」
「ふーん……さて、俺は一度部屋に戻るかね」
「私達も戻りましょう」
ルミナリア達は食堂で夕食を堪能した後、グリムと別れ部屋に戻った。
「さて、じゃあ準備して行きましょうか」
部屋に戻ると同時にフィアナが突然宣言した。
「どこに行くの?」
「そんなの決まってるじゃない。お風呂よ!」
「ん、そういえば大浴場があるって」
アルルメイヤが部屋の壁に貼ってある張り紙を指差すと、確かにそのことが書いてあった。
「この宿の名物らしいわよ! さ、みんなで行きましょうか!」
「ちょ、ちょっと待って! お風呂は別がいいかなーって! だって僕は──」
がしっ
無情にもルミナリアの肩にフィアナの手が置かれる。
「うふふふふふふ」
「ひっ……」
「さぁ、お姉ちゃんとお風呂に入りましょうねー? うふふふふふふ」
「ルミナ」
「アルル……助け──」
「諦めは……肝心……」
アルルメイヤは涙目のルミナリアに首を振るしかなかった。ルミナリアの苦難の時間が始まる。
お風呂に連れていかれたルミナリアは……!?
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では、また次回で会いましょう。




