騒がしい日常と旅立ち
長らくお待たせいたしました。
第46話です。どうぞ。
旅の準備を進めていたとある日のフィアナ家での夜のこと。入浴を終えたルミナリアがアルルメイヤの正面の椅子に腰掛け、お茶を飲んでいた。アルルメイヤは一番に入浴を済ませており、フィアナはルミナリアと入れ替わりになる形でお風呂へと向かった。
「じー」
アルルメイヤは、目の前に座るほんのりと上気したルミナリアをじっと見詰めていた。
「ん? アルル? どうかした?」
その妙な視線にルミナリアが気付くと、アルルメイヤが突然質問をしてきた。
「ん、ルミナ、聞いてもいい?」
「何を?」
何を聞かれるのだろう、と考えながらルミナリアがお茶を口に含む。
「ルミナは……えっと、男の子、だったんだよね? 正直女の子になってどうなの?」
「ぶっふぁ!?」
ルミナリア、予想外の質問にお茶を噴く。
「やっぱり色々変わっちゃった?」
アルルメイヤも王族とはいえ年ごろの女の子。この手の話に興味が無いわけではなかったのだ。
「変わっちゃったって……まぁ確かに変わったことはたくさんあるけど……」
「ん、例えば?」
「えっと……」
「お風呂とか?」
アルルメイヤの言葉で思い出してしまったのは、ルミナリアの初めてのお風呂のとき、一人で夢中になって致してしまったときの記憶。自分の身体だとはいえ、初めて女の子の身体を触ったのだ。そのときの記憶は今でも鮮明にルミナリアに残っていた。
「――っ!」
ルミナリアが瞬間湯沸し器のように真っ赤になってしまう。
「ん、ルミナ真っ赤」
「いや、あの、これは」
しどろもどろになるルミナリアを見てアルルメイヤが実に楽しそうな顔になり、頭の上のアホ毛もふりふりと揺れていた。
「ねぇルミナ、ルミナは……その、男の子のときに恋人がいた、みたいな話はしてなかったよね? もしかして、女の子の身体を見たのって、初めてだった?」
「アルル、待って!? 待って!?」
真っ赤になって困り果てるルミナリア。しかし、アルルメイヤの攻勢は止まらない。
「ルミナ、もしかして……色々と触っちゃった?」
「――っ!!!!」
「……ふふり」
「アルルーー!!」
ルミナリアをからかうアルルメイヤは、実に楽しそうであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぁ……」
その日、ルミナリアはいつものように目を覚ました。
「朝か……アルル、起きて」
ルミナリアが同じベッドの上で毛布にくるまり寝息をたてているアルルメイヤへと声をかける。
「んぅ……」
「アルル、今日は大事な日なんだから」
「うーあーうー」
なかなか目を覚まさないアルルメイヤの身体を揺さぶるルミナリア。それでも起きないアルルメイヤに、ルミナリアが最後の手段をとることにした。
「起きないのなら仕方ない……」
ルミナリアはアルルメイヤの耳元へと顔を近づけ、こう囁いた。
「アルルのパンケーキは食べちゃおっと」
ガバッ!!
反応は劇的だった。
「ルミナ! ルミナ!! パンケーキ!! やだ!!」
「やっと起きたね?」
先程までの眠たげな様子はどこへやら、勢いよく目を覚まし、そのままルミナリアを押し倒すアルルメイヤ。ルミナリアのお腹辺りにはアルルメイヤの胸ふにふにと当たっている。ルミナリアとしてはそれに苦笑いをする他なかった。同時に思い出すのは、先日散々からかわれた日のこと。ルミナリアは少しばかり逆襲をすることにした。
「あーあ、アルルがもう少し早く起きてれば良かったのに」
「ル……ルミナ……?」
「今日はせっかくの自信作だったのになぁー? アルルが食べられなかったのは残念だなー」
未だに押し倒されたままのルミナリアが横目でちらりとアルルメイヤを見る。
「ルミナの……自信作……」
アルルメイヤ、涙目であった。
「アルルが好きそうなシロップも果物も用意してたけど仕方ないよねー?」
「う……」
「う?」
「うぇぇぇぇぇん!!」
「うわわわわわ!?」
アルルメイヤは遂に泣き出し、ルミナリアの胸元に抱きついてきた。
「ル゛ミ゛ナ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ごめ゛ん゛な゛ざぁ゛ぁ゛ぁ゛い゛」
「アルル、冗談だってば!」
「ふぇ?」
アルルメイヤがルミナリアの胸元から顔を離す。
「今から作るところだからちゃんとアルルの分はあるよ。この間アルルがからかったのが悪いんだからね?」
「ル゛ミ゛ナ゛ぁ゛……」
「あらら……そんなにパンケーキが好きなんだね……」
「ルミナのパンケーキ……好き……」
「はいはい、作ってあげるから早く準備しよ?」
「ん……わかった……」
その後、ルミナリアのパンケーキは作るそばからアルルメイヤが食べていってしまった。そんな二人の様子を見ていたフィアナは。
「ふふ、二人とも仲良しね。こんなに可愛い妹がすぐ側にいるなんて……うれしいわ……うふふふふふふふ」
怪しい笑みを浮かべるフィアナがルミナリアとアルルメイヤへと近づいていく。ルミナリアとアルルメイヤの騒がしい朝はまだ終わりそうになかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
騒がしい朝を終えたルミナリア達は、ホリティアの街を巡っていた。旅に出る前に、お世話になった人たちに会っておきたいとルミナリアが希望したのだ。偶然の出会いに救われたグリム。神殿のシリルと、治癒魔法を教えてくれた神官長。何度も食事に行った食堂のサリア。日々お世話になった商店街の人々。アルルメイヤの両親である国王夫妻にはアルルメイヤを通して手紙を出した。それらを終える頃には夕日が沈もうとしていた。その帰り道。
「ねぇお姉ちゃん、アルル」
「なにかしら?」
「なに?」
「ありがとう、これからもよろしくね」
いつもすぐ側で支えてくれ、自分を受け入れてくれた二人に感謝をするのだった。
「ん」
「ふふ、こちらこそ。さぁ、明日は出発よ。帰りましょう」
「うん!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日の早朝、ルミナリア達の姿はホリティアの街の門の前にあった。
「ルミナ、アルル、馬の乗り方は大丈夫だな?」
「うん、教えてもらったから」
「ん、私も」
「じゃあ行きましょうか!」
一行は門番のビルに見送られながら、白の都ホリティアを後にした。目指すのはホリティアの隣国。黄の国アムドリア。
ホリティアからの旅立ちです。
旅の道中でルミナリア達を待つものとは?
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




