世界の希望? ※イラスト有
更新が遅くなってすみません……
第41話です。どうぞ。
「なんでこんな……うぅ……落ち着かない」
メイド達によって綺麗な空色のドレスに着せ変えられ、散々観賞会をされた後、ルミナリアはアルルメイヤの案内で城の廊下を歩いていた。国王夫妻に今回の事の詳細を話すことになっているのだ。
「ん、大丈夫、綺麗になってる」
「うん、それは……確かにそうだけど……なんというか心の問題というか……ね?」
ルミナリアが鏡を見た直後、綺麗になっている自分の姿に思わず見とれてしまったのは確かだった。綺麗だと思うと同時に、これが今の自分の姿だということを考えてしまい落ち着かない気持ちになってしまったのだった。
「ん、ルミナは可愛い服は嫌い? 昨日もサリアの所で嫌がってたけど」
「嫌いというか……抵抗がある、かな。ほら、なんだか落ち着かなくって、あはは……」
元々男であるルミナリアからしたら、可愛い服、というよりは女性用の服を着ることに抵抗がある、と言った方が正しかったが。
(言えないよねぇ……あはは……)
苦笑して乗りきるしかないルミナリアであった。
「ところで、ルミナ、身体は大丈夫?」
「うーん……まだ少し身体が重く感じる、かな」
「ん、何かあったら言って」
「うん、そのときはお願い」
それから少し歩いたところでアルルメイヤが立ち止まり、扉を指差した。
「ん、着いた。そこの部屋。とーさま達が待ってる」
「アルル、待って! 礼儀作法とか全然わかんないんだけど大丈夫かな?」
ルミナリアが困った様子でアルルメイヤを見るが。
「ん、別に気にしなくていい。だってあのとーさま達だし」
アルルメイヤのその言葉で、ルミナリアは昨日のちょっぴり残念な国王夫妻を思いだし、なぜか納得してしまった。
「あー……」
「ね? じゃあ行こ」
アルルメイヤが扉の前の兵士に声を掛ける。
「ん、ルミナを連れてきた」
「アルルメイヤ様。中へどうぞ」
「ありがと」
「し、失礼しまーす……」
アルルメイヤががちゃりと扉を開け部屋へと入る。ルミナリアもそれに続く。部屋の中では、国王夫妻とフィアナがソファーに座っていた。扉から入ってきたアルルメイヤ達に気づいた三人がアルルメイヤ達の方へと顔を向ける、そしてルミナリアを見ると同時に驚いたような表情でピタリと固まる。
「え……えと……この度はご迷惑をおかけしました……」
ルミナリアが無言の圧力に負けてペコリと頭を下げる。すると、ルミナリアに誰かがぶつかるような衝撃が襲ってきた。
「わわっ!?」
「……よかった」
それは、今にも泣きそうな表情をしたフィアナがルミナリアを抱き締めた衝撃だった。
「お姉ちゃん……ごめんなさい」
「もう一人であんなことはしないで……お願い……」
「うん……アルルからも怒られた、もうあんな無茶はしないようにする」
「そう、ならいいわ。アルルちゃんならきっと私が言いたかったことも言ってくれてると思うから」
「ん、大丈夫」
フィアナの言葉にアルルメイヤが頷く。そして再びフィアナがルミナリアを強く抱き締める。
「お姉ちゃん……」
「うん、もう大丈夫。じゃあ昨日のことを教えてもらってもいいかしら?」
「うむ、我々からもお願いしよう。そこに座ってくれ」
「あ、わかりました」
アストン王に促されてルミナリア達がソファーに座る。
「ふむ、確かルミナはフィアナと出会うまでの記憶を失っている聞いている。君の記憶がどこからあるのかというところから話してもらっても構わないだろうか?」
「はい、あれは――」
それから、ルミナリアは自分がこの世界で目覚めたときからの、もちろん前の世界でのことは除いて、可能な限りの話をした。
フィアナとグリムに救われたこと。女神像に触れたときのこと。フィアナの妹になったこと。初めて魔法を使ったことや、鎧猪と戦ったこと。アンドレイと戦ったこと。そして、光の翼と黒い怪物のこと。それらを話し終わる頃には、昼近くになってしまっていた。
「――以上です」
「ふむ……」
全ての話を聞き終わったアストン王は難しい顔をして話し始めた。
「もう一度聞きたいのだが、話の中に出てきた黒い怪物。あれには攻撃がほとんど通用していなかった、と言ったな?」
「はい、炎で焼き続けても燃え尽きることはありませんでした」
フィアナは、炎の柱の中で苦しみながらも倒れることのなかった怪物を思い出した。
「もしかするとあれは神界戦争の中で語られる魔物だったのかもしれん……」
アストン王のその話に全員が息を飲んだ。
「実はあの後の墓場の調査で地下室が見つかってな、そこでゆっくりと消えていく謎の黒い繭が見つかったらしい。今ではもう残っておらんようだがな」
「とーさま……それは……!」
はっとした表情になるアルルメイヤ。
「まさかそれが魔物と関係しているんですか?」
ルミナリアの問いに、アストン王が頷く。
「王家に代々伝わる話になる。神界大戦の際に現れた邪神の僕達。それは、元々普通の生き物達だったのだ。しかし、邪神達の力によって変質させられたのだ。それこそが邪神の僕達だ。邪神の力を受けたものは黒い繭に包まれ、生まれ変わるのだと言う。もしかすると、あの繭がそうだったのかもしれん……」
「では、街の外にいる魔物達は?」
フィアナがアストン王へと疑問を投げ掛ける。
「あれは、大戦を生き延びた魔物達の子孫だろうと言われているよ」
「そうだっんですね……ということは、あれは完全に新しく生まれた魔物だった、ということですね?」
「そうなるだろう……」
「あの……だとしたら、あれはいったい何から生まれたんですか?」
ルミナリアの言葉に重い沈黙が訪れる。しかし、その沈黙をアストン王が破った。
「かつての大戦で、邪神達を除いてもっとも脅威的だと言われた存在がある」
「それは?」
「邪神の力を受けた人々、魔族と呼ばれる物達だ。彼らは通常の魔物達と違い、高い知性を持っていたという。しかし、真の魔族となれるのは極一部しかおらず、その他は知性を持たぬ醜い怪物になったという。魔族もどきとでも言うべき存在だ」
「もしかして……あの怪物は……」
フィアナの言葉にアストン王が再び頷く。
「そん……な……」
ルミナリアは、あの禍々しい存在が人だったとは信じたくなかった。
「いったいどうして!? このホリティアでどうしてそんなことが!?」
「すまないがそれはわからない。今までにこんなことは起きたことがなかった。もしかするとこの世界になにかが起きようとしているのかもしれん。そして、それを解決する鍵になるのは……」
アストン王がルミナリアをじっと見つめていた。
「ルミナリア、君ではないかと私は思っている」
「私が?」
「ああ、突如現れた君は女神の声を聞いただけでなく、光の翼を持ちあの怪物を討ち果たした。今の我々にとって君という存在こそが希望だと思っているのだ」
ルミナリアは、アストン王の言葉を聞いて、この世界に来たときにされた"お願い"のことを思い出した。もしかすると、あれはそういうことだったのだろうか、と。
「私は……私には今どうするべきか、なんてわかりません……でも、今は自分や世界のことを知るために世界を巡る、ということをしようと思います」
「ん、ルミナが女神様たちの声を聞けるなら、他の国でも何かわかるかも」
(自分に何ができるかなんてわからない……でも、この世界に来た意味がわかるかもしれないなら、やろう)
ルミナリアが心の中で静かに決意を固めたとき、アルルメイヤのお腹の鳴る音が部屋に響いた。
「ん、お腹すいた……」
「ふふふ!」
「あはははは!」
「むぅ、だって朝からなにも食べてない」
「ははは、そうだな、難しい話はここまでにして昼食にするとしよう」
こうして、ルミナリア達は城で昼食を用意してもらうこととなった。食事を終えたあと、ルミナリアは完全に油断していた。今の自分がどんな格好をして、それがどれだけ目立つ存在になっていたのかを。そんなルミナリアを狙う邪な者がいるということを――




