アルルメイヤの涙
豊穣祭三日目の朝です。
第40話です。どうぞ。
「ん……」
豊穣祭三日目の朝、眠っている間にルミナリアに抱きついていたアルルメイヤが目を覚ました。
「すぅ……すぅ……」
「ルミナ、まだ起きないの?」
アルルメイヤの目の前には未だに眠り続けているルミナリア。その様子は、まるで精巧な人形のようで、そのルミナリアと、並んでいるアルルメイヤの二人を見る人がいたならば、芸術品ではないかと思わされる程の美しさがあった。
「ねぇ、起きて、豊穣祭が終わっちゃうよ?」
「う……ん……」
アルルメイヤが身体を起こし、ルミナリアの身体を揺すると、ルミナリアが薄く反応を返した。
「ん……お祭り……?」
「あ……!」
ルミナリアの瞼がゆっくり開き、身体を起こす。しかし、まだ寝ぼけているのか、その瞳は焦点が合っていない。
「ん、お祭り!」
「僕も起きないと……優羽、起こしてくれてありがとう……」
アルルメイヤを誰かと勘違いしているのか、ルミナリアがアルルメイヤへと話し続ける。
「……ルミナ? 何言ってるの?」
アルルメイヤが再びルミナリアの身体を強く揺する。
「え……ぅあ!?」
「ん、起きた?」
「う、うん、起きた……」
「……!」
「わっ!?」
ルミナリアがアルルメイヤへと頷くと、アルルメイヤは、ルミナリアに抱き付き、そのままベッドへと押し倒した。
「ルミナ……ルミナ……よかった……」
ルミナリアを強く抱き締めながら泣き始めてしまうアルルメイヤ。
「そっか……あの後アルル達が助けてくれたんだね……」
「ひっく……私、怒ってる!」
「アルル……」
「なんで……なんで一人で行くの! 私、あのとき何もできないままルミナを助けられなかったらって考えたら! 怖かった……」
アルルメイヤが嗚咽を漏らしながらルミナリアへと思いを吐露する。それは、今までに見たことがないアルルメイヤだった。
「アルル、ごめんね……何故かわからないけど、一人で行かなきゃダメなんだって思ったんだ」
「ねぇルミナ、ルミナは私の友達だから、ルミナが困ってるなら助けてあげたい! だから、一人でいなくならないで……」
ルミナリアは、その言葉に自分を友達と呼んでくれるアルルメイヤを裏切らないようにしよう、と決意していたことを思い返した。
「アルル、もう置いていったりしないから……ごめんね……」
アルルメイヤは、ルミナリアが無事に目覚めた事への安堵や自分達を置いて一人で行ってしまった事への怒り、大事な友達を失うかも知れなかった恐怖など、様々な感情が込み上げてきてどうしていいかわからなかった。
「ああああぁぁぁぁ………」
「アルル、勝手な事をして心配かけてごめんね……」
アルルメイヤは、しばらくの間ルミナリアに抱かれながら泣き続けた。
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アルルメイヤが泣きやんだ後、アルルメイヤはルミナリアが倒れた後にあったことを説明していた。
「そっか、じゃあここはアルルメイヤの部屋なんだね……すっごい広いね……」
ルミナリアが部屋を見渡す。その部屋は、普段ルミナリア達が使っている部屋の五倍は広かった。
「ん、でも私はフィアナの家の部屋の方が好き。広くても誰もいないのはちょっとさみしい。ルミナ、そろそろ行こ」
「そうだね、お姉ちゃんにも謝らないと……」
アルルメイヤとルミナリアがベッドから降りる。
「ん……?」
「ルミナ?」
そこでルミナリアは気付いた。自分が薄手のネグリジェ姿であることに。
「流石にこれでみんなのところには行けないよね!?」
「ん、昨日用意してもらったけど、そういえばルミナの着替え無いんだった」
昨夜、ルミナリアがアルルメイヤの部屋に運ばれる際に、侍女達によって着替えさせられていたのだ。
「ん、待ってて、服用意してもらってくるから」
アルルメイヤは、そう言うとその場でネグリジェを脱ぎ捨て、下着姿になってしまう。ルミナリアは、不意のことに驚きながらも目をそらす。
「ん、じゃあいってくる」
「お、お願い……」
アルルメイヤがバタンと扉を閉める。ルミナリアは、ベッドに後ろ向きに倒れると、脳裏に焼き付くアルルメイヤの白い肌を振り払うべく枕に顔を埋めた。その布団からは女の子の、アルルメイヤの香りがし、逆にドキドキさせられてしまうルミナリアなのだった。
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「ねぇアルル」
ルミナリアが手渡された服を見つめながら、アルルメイヤへと話しかける。
「ん、ルミナ、どうしたの?」
アルルメイヤがキョトンとした様子で首をかしげる。
「服を用意してくれたのは嬉しいけどね?」
「けど?」
「なんでこんな立派なドレスなの!?」
ルミナリアは、手渡された空色のドレスを掲げながら怒りの声を上げた。
「それと! 後ろにいるメイドさん達は何なの!?」
ルミナリアが指差すアルルメイヤの後ろには、五人のメイド達が控えていた。
「ルミナリア様のお着替えをお手伝いしに参りました♪」
「ん、そういうこと」
その中の一人が嬉しそうに返事をした。五人のメイド達は、全員が優しく微笑みながらルミナリアを見つめていた。ルミナリアは、その微笑みの向こうに見慣れた気配を感じていた。
「ア、アルルからも言ってよ! もう少し普通の服を用意してほしいって!」
「ん、似合うと思うけど……みんな、ルミナが……なんでもない」
ルミナリアがあまりに嫌がるため、後ろのメイド達に声をかけるため振り返り――そのまますっと目を逸らした。アルルメイヤも感じたのだ。暴走するフィアナと同じ気配を。
「アルル……友達を……見捨てるの……?」
ルミナリアが震えながらアルルメイヤを見詰める。それに対し、アルルメイヤは。
「(ふるふる)」
目を合わせることなく、静かに首を振った。
「では、お着替えを手伝わせていただきますねー?」
「ひっ……!」
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メイド達が楽しそうにルミナリアを着せ替えていく。ルミナリアは既にいつもの虚ろな表情になっている。
「ルミナ……ごめんね、無理なことは、ある」
アルルメイヤは、どんどん可愛らしく、そして綺麗になっていくルミナリアを見詰めながら考えていた。
「ルミナ、ユウって誰……? それに、僕って……記憶喪失、なんだよね?」
アルルメイヤの中で、疑問が渦を巻き始めていた。
着せ替えルミナちゃん再び。
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では、また次回で会いましょう。




