アルルメイヤの回想
戦いを終えた後、何があったのかというお話しです。
第39話です。どうぞ。
時刻は真夜中。僅かな照明の明かりに照らされる部屋の中央。ホリティア城のアルルメイヤの私室に設置されている広めのベッドの上には二人の少女の姿があった。
「すぅ……すぅ……」
「ん、よく寝てる……そういえば、ルミナが寝てるところ、初めて見る」
いつも同じベッドで眠っている二人だが、アルルメイヤはルミナリアよりも早寝遅起きだったため、寝顔を見たことがなかったのだ。
「ルミナは寝る前になるとそわそわしてなかなか寝ないから……えいえい」
「んゅ……」
アルルメイヤが、よく眠っているルミナリアの頬をつんつんとつつくと、ルミナリア少し嫌そうな顔をする。
「ふふ、変な顔」
「むに……」
アルルメイヤが普段は見られないルミナリアの寝顔に、ささやかないたずらを続ける。
「つんつん、これは一人で行っちゃったルミナが悪い。つんつん」
「にゅ……」
全く目覚める様子のないルミナリアの様子を見ながら、アルルメイヤが今に至るまでのことを思い返した。
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ルミナリアが二人の側を離れてすぐ後のこと。フィアナとアルルメイヤは、ルミナリアが人混みに流されていってしまったのだろう、と気楽に考えていた。
「ルミナちゃんどこに行っちゃったのかしら?」
「ん、全然気がつかなかった」
二人は人だかりから離れると、ルミナリアの位置を調べるためにパーソナルバングルの連結を起動させた。
「おー」
アルルメイヤが、バングルの上に光の矢印が浮かび上がるのを見て驚く。
「んー……ルミナちゃん結構遠くまで行っちゃってるわね……でもこの日にあっちに行く人はいないはずよね?」
「ん、墓地があるだけ。もしかして迷った?」
「それだけならいいんだけど……」
アルルメイヤとフィアナが矢印の示す方向へと視線を向ける。
「うん、なんにせよ迎えに行ってあげましょう」
「ん、わかった」
こうして、二人がルミナリアの後を追った先の墓地で見たものは、黒い怪物に追い詰められ絶体絶命のルミナリアだった。
ルミナリアがフィアナの治療を終えたと同時に倒れた後、アルルメイヤは、フィアナが倒れている間に起きたことを説明していた。
「ルミナちゃんのあの翼……なんだったのかしらね……」
「ん、わからないけど、あのときのルミナは物凄い魔力を使ってた。今はもう感じない。それどころか、魔力が枯渇してる……?」
「そうね、これは魔力欠乏を起こしてるようね。普通なら休んでいれば自然に目覚めるとは思うけど、直前の状況が状況だけに心配ね……」
アルルメイヤとフィアナが、ルミナリアの状態を案じていると、二人の前に同じ鎧で武装した三人の騎士が現れた。その中の一人が、ライトの魔法を発動させると、周囲が明るくなる。
「お前達! この墓地で何をしている! 墓を暴くことは重罪だぞ!」
三人の中の一人、がっしりした体格の男が、腰の剣に手をかけながら、野太い声で叫ぶ。
「待ってください。私たちは墓を荒らしにきたわけじゃないわ」
「と、言われましてもねぇ……流石にこの状況は怪しいと言わざるを得ないですよ?」
さらに、もう一人、髪を後ろでまとめた小柄な女性がフィアナへと話しかける
(確かにそうね……でもこれをどう説明すればいいかしら……黒い怪物に襲われたと正直に話す? そんなこと信じて貰えるわけないわね。ここはあの城壁の中なんだから)
フィアナの背中に嫌な汗が伝う。戦いによって破壊された後のある墓地にいるのは自分達だけ。そんな自分達の怪しさは、客観的に見ても不味いものだと理解していた。フィアナがこの事態をどうするかと考えていると、隣に座っていたアルルメイヤが立ち上がり、三人の中の一人、長い金髪の女性の前へと歩み出た。
「ん……エル姉? ちょうどよかったかも」
「あらー?アルル? 何でこんなところにー?」
「「「………えっ!?」」」
突然の事態に困惑する二人の騎士とフィアナ。そう、その女性は、アルルメイヤの知り合いだった。
「アルルちゃん、知り合いなの?」
「ん、エル姉は昔からの知り合い。騎士の家系で代々うちに仕えてる」
「そうよー、アルルが家から出て居候してる、とは聞いてたけど、あなたがそうなのねー? 私はエルメア。よろしくー」
金髪の女性は、ふんわりとした笑みをフィアナへと向け、握手を求め手を差し出す。
「私はフィアナ。よろしく」
フィアナが手を取り、握手をする。
「エルメア、これはどういう状況なんだ?」
「うん、私たちにも教えてほしいですね」
エルメアの後ろで困惑している様子の騎士達が、質問を投げ掛けた。
「あぁーそうですねーこの子、アルルは私の知り合いなの。で、アルル、ここでなにがあったのかしらー? それに倒れてるその子はー?」
「私から説明させて貰うわ、でも……ちょっと信じがたい話になると思うわ。構わないかしら?」
アルルメイヤとフィアナは、自分達がここに来てから見たことを説明した。ただし、ルミナリアの翼の件についてだけは話さなかった。ただ、怪物はルミナリアが倒したが、魔力切れを起こしてしまったようだとだけ説明した。
「なるほどー……確かにそれは信じがたいですねー」
エルメアがうーん、と困ったように唸る
「そうですねぇ、とりあえずここは本部に連絡して調査してみましょうかー」
「おいおい、今の話を信じるのか? 流石に証拠もなしに信じろってのは難しいぜ?」
エルメアの意見に、騎士の男が待ったをかけた。
「何か残ってるものでもあればよかったんだけどー……アルル、その怪物を倒したのはどの辺かしらー?」
「ん、確かもう少し向こう」
アルルメイヤの先導で、全員が怪物が燃え尽きた辺りへと歩いて行く、眠っているルミナリアは、フィアナに背負われていた。
「……! こ、これは……!?」
「あらあらー……」
「おいおい、なんだよこいつは……」
騎士達が驚きの声をあげる。そこにあったのは、焼け焦げた黒い巨体だった。
「なるほどな、わかった。確かにこりゃ本物だ。疑って悪かったな」
男がアルルメイヤとフィアナへと謝罪する。フィアナたちは、疑うのは当然のことだというと男はありがとう、とだけ返した。
「さてー、じゃあ私はこの子達をお城に案内するから、本部への連絡は任せていいかしらー?」
「ああ、任せてくれ」
「では」
二人の騎士がその場を後にする。
「じゃあ私たちも行きましょうかー」
こうして、アルルメイヤとフィアナは、眠ったままのルミナリアを連れて城へと向かうことになるのだった。
城に着いてから、アルルメイヤはすぐに父、アストン王のもとへと報告に向かった。ルミナリアが倒れてしまった経緯と状態を伝えると、アストン王がすぐに宮廷医を手配し、ルミナリアの診察が行われることとなった。診察の結果、休めば自然に治るだろう、とのことだった。始めは来客用の部屋で休んでもらい、目が覚め次第話を聞かせてもらう予定だったが。
「ルミナが起きて知らない場所にいたら不安だと思う。だから私の部屋にルミナを連れていって。私がついてる」
と、アルルメイヤが言ったため、ルミナリアはアルルメイヤの私室へと運ばれることとなった。なお、フィアナは。
「フィアナさん、最近のアルルの様子を聞かせてもらえないかしら?」
「わかりました……まさかこんな形で国王陛下達とお話しすることになるとは……」
と、国王夫妻に呼ばれていってしまったのだった。
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アルルメイヤが回想を終える。
「ん、結局ただの魔力欠乏だって先生も言ってたし、きっと大丈夫……ルミナ……」
アルルメイヤが、眠ったままのルミナリアを抱き締める。もしかしたら失われてしまっていたかも知れない温もりに、今まで感じたことのない何かを感じながら、アルルメイヤも眠りについた。
そして、夜は更けていきます……。
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では、また次回で会いましょう。




