それは目覚め
ルミナリアの危機に駆けつけたフィアナ達は……
第37話です。どうぞ。
「ふぅ……間に合ってよかったわ……」
フィアナは、ボロボロの様子のルミナリアを見て安堵した。あと少し、ほんの少しだけ遅くなっていたら、あの鋭い爪がルミナリアに振り下ろされていただろう。
「ルミナちゃん!」
「ルミナ!」
フィアナとアルルメイヤが、ルミナリアへと走る。
「お姉ちゃん……アルル……」
ルミナリアも、ふらつく足取りでフィアナ達へと向かう。しかし。
「あっ……」
ルミナリアの視界が一瞬暗転する。
「うあっ……!」
「ルミナちゃん!?」
「ルミナ!!」
ルミナリアが地面へと派手に転倒する。起き上がろうと地面に右手をつくが、思ったように力が入らず、再び倒れてしまう。
「ルミナちゃん! 酷い傷……!」
「ん、すぐに治す!」
「アルルちゃん! お願い!」
フィアナとアルルメイヤが、傷ついたルミナリアの元へとたどり着く。アルルメイヤは、ルミナリアの側に座り、傷だらけの身体を抱くと、治癒の魔法を行使し始めた。
「私はあっちを!」
治癒の魔法が使えないフィアナは、その場をアルルメイヤに任せ、倒れた巨体への警戒を始める。
「これは……一体なんなの!?」
フィアナは、全くわからない敵の姿を今一度確認して驚愕した。
「まさか、殆ど傷がないなんてね……」
そう、その巨体には二つの大威力の魔法が直撃したとは思えないほど傷がなかったのだ。
「ここは城壁に護られたホリティアの内側……一体どこからこんな化け物が入り込んだのかしら……?」
「ヴゥゥ……」
「……! なるほど、見た目通り頑丈みたいね!」
頭の中で疑問を巡らすフィアナの眼前で、倒れていた巨体が動き始めた。
「ヴゥゥゥァァァ!」
起き上がり、禍々しい紅い眼でフィアナを見据えた巨体が、雄叫びをあげる。
「まだ燃やされたりないって訳ね! いいわ! 燃やし尽くしてあげるわ!」
フィアナは、目の前の敵をルミナリア達の元へと行かせるわけには行かないと、怪物へと火球を放った。
――ズドン!
「ヴゥゥ!」
しかし、その火球は容易く腕で払われてしまう。
「そう……なら!」
フィアナは、多くの火球を目の前に出現させると、次々に怪物へと放つ。
――ズドドドドン!!
怪物が派手な爆発に包まれる。
「ヴァァァァ!!」
炎は一気に燃え盛ったが、巨体が咆哮と共に腕を振り回すと、爆炎は引き裂かれてしまう。だが、フィアナはそれを予想していた。
「こっちが本命よ! 食らいなさい!――フレイムピラー!!」
先程の爆発は本命の魔法を放つための時間稼ぎでしかなかったのだ。怪物の足元に深紅の魔方陣が出現し、光輝く。
「ヴゥゥ!?」
「もう遅いわよ!!」
怪物がその場を離れようとするが、それを待たずに、魔方陣から火山の噴火を思わせるような炎の柱が吹き上がった。
「ヴゥゥゥァァァ!!!」
「これならどう!?」
吹き上がる炎の中で怪物が腕を振り回し苦しむ。
「これだけやって燃やせないなんて……ホントにとんだ化け物ね……ルミナちゃん、どうしてこんなのと一人で戦おうとしたの……!」
フィアナが、先程突然いなくなったルミナリアのことを考える。どうして自分に一声かけてくれなかったのか、と。そんなとき。
「ルミナァァァ!!」
背後から、アルルメイヤの絶叫が聞こえた。
「ルミナちゃん!?」
その声に、フィアナが集中を切らし、振り返ってしまう。
「ヴゥゥゥァァァァ!!!」
しかし、ここは戦いの場。それは致命的な隙だった。
「しまっ――」
炎の柱から解放された巨体がフィアナに向かって突進する。回避するまもなく衝突したフィアナの身体は、簡単に宙を舞った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ヴゥゥゥァァァ!」
アルルメイヤは、聞こえてきた咆哮で、先程の怪物が再び起き上がったことに気づいた。
「ん、あれじゃ足りないなんて……ルミナ、なんで一人でこんなのと戦ってたの……!」
アルルメイヤは、フィアナが派手な魔法を放ち敵の注意を引いている様子から、足止めをしてくれていることに気付き、治癒の魔法に専念する。しかし。
「ん……! なんで……傷が塞がらない……!」
アルルメイヤが懸命に魔力を込め続ける、しかし、ルミナリアの傷の治癒は遅々として進まない。
「……ぅぁ」
「ルミナ! しっかりして! ルミナ!」
朦朧としているルミナリアの目の前で、アルルメイヤが今にも泣き出しそうな顔で叫ぶ。
(なんで……身体が動かないのかな……なんで……何も……聞こえ……ない……)
ルミナリアの視界が徐々に滲んでいく。そして、アルルメイヤの目の前で、ルミナリアの瞼が静かに閉じた。
「ルミナァァァ!!」
アルルメイヤがルミナリアへと叫ぶ。その直後、アルルメイヤのすぐ側に何かが吹き飛んできた。
「そん……な……」
それは、足止めをしてくれていたはずの自分達の姉。フィアナだった。
「フィアナ! フィアナァ!!」
アルルメイヤがフィアナへと叫ぶも、ぐったりとした身体が動くことはない。
――ズン…
「ヴゥゥゥ……」
「あぁ……」
そして、アルルメイヤの眼前に、巨体がゆっくりと歩いてきた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(あれ……ここって……)
意識を失ったルミナリアは、暖かい空間に漂っていた。そこは、ルミナリアの記憶の中にもある場所だった。
(確か、あのとき女神像に触れたときにきた場所……だよね? どうしてここ……に……)
ぼんやりとした様子のルミナリアが、直前までの自分の状況をだんだんはっきりと思い出す。
「そうだ……! あれからお姉ちゃん達が来てくれて……でも、どうなったの!?」
「気がつきましたね」
聞き覚えのある声に、ルミナリアがはっとする。それは、聞き間違うはずもない、和樹が最後に聞いた声。
「あなたは……!?」
「負けないで……」
ルミナリアがまるで誰かに抱き締められるかのような温もりに包まれる。そのとき。
――カチリ
ルミナリアは、身体の内側から、まるで鍵が外れるかのような感覚を覚えた。
「これ……は……」
ルミナリアは、それがなんなのか、自分を包む存在へと問いかけようとするも、優しい眠りへと包まれていく意識を保つことができなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ヴゥゥゥ……」
アルルメイヤへと徐々に近づいていく巨体。アルルメイヤは、泣き出しそうだった目元を拭うと、ルミナリアをそっと地面に横たえ、フィアナとルミナリアを庇うように立ちふさがった。
「ん……させない……!」
アルルメイヤが、今にも震えだしそうな恐怖を堪えて巨体を睨み付ける。
――ズン
怪物が、アルルメイヤへと徐々に近づいていく。
――ズン
「ん!」
アルルメイヤが、周囲に雷球を展開する。
――ズン
その雷球を気にも止めないといった様子で歩みを進める巨体。
――ズン
そして、今にも戦いが始まる。といったそのとき。
「ヴゥゥ……?」
歩みを止めることなかった巨体が、アルルメイヤの背後へと眼を向け突然動きを止めた。
「え……」
アルルメイヤが、疑問を感じているとの目の前に、光の羽がはらりと舞い落ちてきた。その羽は、地面に落ちると、光の粒子となって散ってしまう。目の前の巨体は、その羽から距離を置くかのように一歩、また一歩と後退する。
「ん、怖がってる……?」
アルルメイヤが、後ろで起きている事態を確認するため振り返る。そこには。
「ルミ……ナ……?」
神聖な気配を身に纏い、半透明な光の翼を広げたルミナリアが立っていた。
危機の中でルミナリアが目覚めます。
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




