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突然の戦い ※イラスト有

豊穣祭二日目の夜です。


第36話です。どうぞ。

 豊穣祭二日目の夜、ルミナリア達はサリアの手伝いを終え、屋台を巡っていた。


「ん、おいしい」

「ホントにアルルちゃんはよく食べるわね……」 


 アルルメイヤは、両手に持った串焼きをもきゅもきゅと食べながら不思議そうな顔をした。


「ん、これくらい普通」

「えー……私なんてさっきサリアさんのとこでご馳走になってお腹いっぱいなのに」


 サリアの手伝いを終えた際、ルミナリア達のおかげで今日は大変繁盛した、とのことで、約束よりも多い金額と食事まで貰ってしまったのだ。それがつい先程の事。


「ん、あれも美味しそう……」

「ちょっと!? アルルー!?」


 また、食指を刺激する何かを見つけたのか、再びアルルメイヤが屋台へとふらふらと移動していく。


「アルルちゃん、慌てちゃダメよ? ふふ」

「もう! 後で食べ過ぎたーなんて言わないでよ! あはは!」

「ん、大丈夫」


 アルルメイヤとフィアナが屋台へと歩いていくその後ろ姿を、ルミナリアが笑いながら追いかける。豊穣祭の楽しい時間。そんな時間が緩やかに過ぎていた。そんなとき。


――チリッ


「……! なに、今の……?」


 ルミナリアの脳裏に、焼き付くような嫌な感覚が走る。思わず足を止めキョロキョロと周囲を見渡すも、周囲には祭りを楽しんでいる人々が視界に入るのみ。


「気のせい……かな?」


 気のせいだったようだ、とルミナリアがアルルメイヤ達のもとへと向かおうとする。しかし。


「これ、気のせいじゃない!?」


 再び嫌な感覚がルミナリアを襲う。それは、先程よりも明確な感覚。


「これ……あっちだ……」


 ルミナリアには、何故かその感覚がどこから来ているのかがわかった。そして、それは恐ろしいものであること、しかし、立ち向かわなければならないものだ。ということが直感でわかった。


(これは、このままにしちゃダメだ。なんで、こんなことがわかるんだろう……でも、行かなきゃ)


 ルミナリアは、前方で屋台に並ぶフィアナとアルルメイヤに背を向け、人混みへと踏み出した。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「ここだ……」


 ルミナリアが、感覚に従い歩き続けた先にあったのは、広大な墓地だった。そんな場所でルミナリア以外に動く影などない。豊穣祭が開催されている今、わざわざ墓地にくる物好きなどいないだろうが。ルミナリアは、魔法の明かりを周囲に浮かべて歩いていく。


「なんで、こんなことしてるんだろ」


 全身に広がる嫌な感覚は、もはや恐怖を感じる程のものとなっていた。頭ではわかっていた。ここは危険だと。しかし、行かなければならない。そんな考えが頭から離れないのだ。


「ここは……お墓、だよね」


 ルミナリアは、ここに墓地がある事は知っていたが、実際に来るのは初めてだった。それなのに、向かうべき場所がわかる。わかってしまう。


「はぁ……はぁ……」


 恐怖で身体が震える。しかし、歩みは止まらない。そして、ルミナリアは大きな墓石が並ぶエリアの一角へとたどり着いた。そこは、貴族など、身分の高いものが使用するエリアだった。


――ヴゥゥゥゥ!


「何!?」


 突然ルミナリアに聞こえてきた唸り声。それは小さなものではあったが、強烈な存在感を伝えてくるものだった。ルミナリアが周囲を見渡すが、何も見つからない。


「これ……下!?」


 ルミナリアが感覚を頼りに目を向けたのは、今まさに目の前にある大きな墓石の下だった。そして、目を向けると同時に。


――ドォンッ!!!


 その墓石が吹き飛んだ。


「何……!?」

「ヴゥゥ……」


 地面から天へと伸びていたのは、鋭い爪を持った黒い腕だった。その腕の持ち主は、ゆっくりと地面に手をつき、地上へと這い出てきた。姿は人間に近いが、ルミナリアの三倍はあるだろう闇色の身体に、醜悪な角、怒りを感じさせる煌々と光る紅い目が、人とは違う存在なのだ、ということを雄弁に語っている。


「ヴゥゥゥゥ!」


 その紅い眼が、真っ直ぐルミナリアを捉えていた。


「ひっ……」


 思わずルミナリアが後退る。その瞬間、目の前の腕が振りかぶられ、ルミナリアへと振り下ろされる。


「きゃあああああ!!」


 無意識にプロテクションを展開する。しかし、それは一瞬だけ動きを止めるもあっさりとプロテクションを粉砕してしまう。ガラスが割れるような音と共に、ルミナリアの小さな身体が吹き飛ばされる。幸いにも並ぶ墓石に激突することはなかったが、地面を派手に転がっていくこととなってしまった。


「あぐっ……痛……い……」


 ルミナリアがなんとか身体を起こす。全身からは鈍い痛みが伝わってくるが、なんとか五体無事で済んでいた。


「っ……!」


 しかし、鋭い爪が当たってしまった左腕だけは酷い有り様だった。三つの深い裂傷からだくだくと血が流れていた。


(もし、プロテクションを使えてなかったら……)


 ルミナリアから血の気が引く。しかし。


「ヴゥゥゥゥ」


 紅い眼は変わらずルミナリアを見詰めていた。


「くっ……これなら!!」


 ルミナリアが剣や槍を創り出し、射出する。


「ヴァァ!!」


 しかし、その巨体は地面を強く蹴り、大きくジャンプしその場から逃れてしまう。目標を失った武器たちがドスドスと地面に突き刺さる。


「ヴゥゥゥゥ!!」

「そんな……! 速い!」


 ルミナリアは左腕を庇いながら杖をついて立ち上がると、再びルミナスブランドを発動する。


「これなら、どう!?」


 先程とは違い、変則的な動きを加えて武器を射出していく。巨体がそれを避けていくが、ルミナリアが放った一本の剣が、巨体の死角。背後で反転し、その背中を捉え、突き刺さる。


「そこだよ!!」

「ヴゥァァァァ!!!」


――ジュゥゥゥゥ!!


「えっ……焼けてるの!? どうして!?」


 背中に突き刺さった剣は、まるで熱していたかのように巨体の背中から煙をあげていた。


「ヴゥアアアウ!」


 巨体が背中へと腕を回し、剣を抜き投げ捨てる。その際も、剣に触れた手からやはり煙が上がっていた。


「この魔法にそんな力が……うぁ……」


 様子を見ていたルミナリアの足元がふらつくが、杖を頼りに倒れずにすむ。


(血が……止まらない……) 


 ルミナリアの顔色は明らかに悪くなっていた。腕から流れている血が止まっていないのだ。


「治さなきゃ……あ……」

「ヴゥゥゥゥ!」


 ふらつくルミナリアへと巨体が歩き出す。


「こないでよ!」


 再び創り出した武器を射出する。しかし、やはり簡単に避けられてしまう。


「なら……!」


 ルミナリアが、武器に紛れて光球を飛ばす。それは目眩ましの魔法。フラッシュ。


――カッ!


「今のうちに!」


 魔法が炸裂すると共に背を向け移動を始めるルミナリア。足元はふらつき、目の前が霞みつつある今、素早く走ることなどできなかったが、出来る限りの速度でその場を離れようとする。しかし。


――ドスン!


「えっ……?」


 ルミナリアの目の前に、黒い巨体が立ちふさがり、腕を振り上げていた。


「ヴァァァァ!!!」

「なん……で……!?」


 ルミナリアの失敗は二つだった。一つ目は、相手がまるでその魔法を知っていた(・・・・・)かのように、目を手で覆って守っていたこと。二つ目として相手への効果を確認せずに背を向けてしまったこと。この二つは、ルミナリアの致命的な状況を作り出してしまっていた。


「もう……ダメかな……」


 ルミナリアが自分に向けて振り下ろされるだろう巨大な腕を見上げる。震えながら涙を流すルミナリアを見て、まるで笑うかのように口許を歪める巨体。そして、その腕がルミナリアへと振り下ろされる。まさにその時。


――ズドン!! バチバチィ!!!


 巨大な火球と、白い雷撃が巨体へと直撃し、たたらを踏んで地面へと倒れた。


「私の妹に手を出さないでもらえるかしら? 醜い怪物さん?」

挿絵(By みてみん)

「お姉ちゃん……アルル……」


 魔法が飛来した場所に立っていたのは、フィアナとアルルメイヤだった。







戦闘は次回に続きます。


感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。

では、また次回で会いましょう。


羅兎さんにフィアナさんのイラストを描いていただきました!

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