異世界流接客術?
ネット小説大賞1次選考突破ならずでした…そりゃ簡単に突破できるようなものじゃないですよね!
と、いう事で気を取り直してこれからもがんばります!
第34話です。どうぞ。
豊穣祭二日目の昼。ごった返す人々の間に、とある飲食店でとんでもない美少女達が働いている。という噂が流れていた。
「なんでこんなことに……」
「ほら、ルミナちゃん! 料理上がったから持って行っておくれ!」
「は、はい!」
「忙しいったらありゃしない! あんたたちのおかげでうれしい悲鳴だよ! あっはっは!」
物憂げな様子のルミナリアは、厨房で腕を振るっているサリアの声で、頭を仕事モードに切り替え、皿の配膳を始めた。
「えっと、お客様、お待たせいたしました」
「おぉ……」
「うわぁ……」
ルミナリアが料理をテーブルに乗せると、座っていた二人の男がうっとりしたような表情になる。ただし、男たちが見ているのは、料理ではなく、可愛らしいメイド服に身を包んだルミナリアだった。
「ご、ごゆっくりどうぞ!」
男たちの視線に耐えられなくなったルミナリアは、慌ててその場を離れ、客たちの視線から身を隠せる物陰へと身を隠した。
「ホントに、なんでこんなことに……!」
ルミナリアは、サリアの手伝いをすることを決めた翌日の朝、豊穣祭二日目の朝のことを思い返す―――。
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朝、開店前のサリアの食堂の扉が開き、カランカランというベルの音が響く。店の奥の厨房では、サリアを含めた何人かが朝の仕込みをしているようだった。
「おはよう。せっかくのお祭りだっていうのにこんな頼みを聞いてもらってすまないねぇ」
「おはようございます。サリアさん、気にしないでください!」
「ん、お手伝いも楽しそう」
「この子たちもこう言ってるし、今日はよろしくお願いします」
ルミナリアたちのその言葉に、申し訳なさを感じていたサリアは、安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ今日はよろしく頼むよ!」
サリアの嬉しそうな声に三人が頷く。
「じゃあ私たちは何をすればいいですか? さすがに料理は手伝えないですよね?」
フィアナが厨房を覗き込みながらサリアに話しかける。
「うん、あんたたち三人には注文を聞いて来たり、料理を配膳してもらったりっていうのをしてもらうよ。そうすりゃ私たちは料理に集中できるからね」
「そうですか、アルル、今日はなるべく動きやすそうな服で来てよかったね」
「ん、確かに」
ルミナリアとアルルは、可愛らしさはないが、動きやすい服装を選んでいた。ルミナリアは、女の子らしい服を着なくて済むことにこっそりと安堵していた。
「あぁ、今日はあんたたちに服を用意してあるからそっちに着替えてもらってもいいかい?」
「あら? サリアさん、ここに制服なんてあったかしら?」
フィアナは、今まで通ってきた中で、店員が制服を着ているといったことの記憶などなかった。今厨房で働いている店員たちにしてもそうだ。各々が違う格好で動き回っている。
「いや、本当はないんだがね。昨日姉さんにあんたたちのことを話したら、自分の店の服を貸してくれるってさ。こっちだよ、ついておいで」
サリアはそういうと、厨房の奥の扉を開け、中へとすたすたと歩いていく。
「サリアさんのお姉さん? お姉ちゃん、何か知ってる?」
「うーん……私も聞いたことないわね……」
「ん、たぶん行けばわかる」
「そうだね、行ってみよう」
ルミナリア達が、サリアに続いて部屋の中に入っていく。そして、サリアが部屋の中にあるカーテン付きのクローゼットから一着の服を取り出した。
「さ、あんたたち! これに着替えておくれ!」
「え゛……」
「ん、かわいい」
「あらあらあらあら」
それは、いわゆるメイド服だった。ただし、王宮やお屋敷などで着られる正式なものではなく、現代日本におけるメイド喫茶で着られているようなものだ。
「姉さんの経営している喫茶店で使ってる服なんだとさ。可愛いって評判がいいらしくてねぇ、ほら、着てみておくれよ!」
(いくら女の子になったとはいえ、あれはさすがに嫌だぁぁぁ!)
今でさえ女の子の服を着ている現状に抵抗があるルミナリアは、今目の前で提示されているふりふりの可愛いミニスカメイド服を着るなど、絶対に断りたい事であった。
「えっと……私にはその服は似合わないと……思います……よ?」
「ん、そんなことないと思う」
「ぅ……いや……あっ! そうだ! サイズが合わないんじゃないですか!? 私見ての通り身長が低くて!」
ルミナリアはこれならどうだ、とばかりに意見を出す。確かに、今サリアが持っているメイド服はルミナリアやアルルメイヤではぶかぶかになるだろうサイズであった。
「なんだ、そんなことかい。安心しな!」
サリアはそう言うと、横のクローゼットのカーテンを開け放った。そこにあったのはふりふりのメイド服の軍勢だった。
「いろんなサイズを揃えておいたからねぇ、あっはっは! これでサイズが違っても大丈夫さね!」
「ん、お見事」
「あぁぁぁぁぁぁ……」
目の前に広がる圧倒的戦力に思わず後ずさるルミナリアと、楽しそうに服を選び始めるアルルメイヤ。そんなルミナリアの肩にポンと手が置かれる。
「うふふふふふふ♪」
「……!」
ルミナリアの背後から聞こえる姉の楽しそうな笑い声に、ギギギと音がしそうなほどぎこちなく振り返るルミナリア。
「お姉……ちゃん……?」
そこにいたのは天使のような顔をした大魔王だった。
「お着替えしましょうね~♪」
「ひっ……!」
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「……ナ! ルミナ! 起きて!」
「はっ!」
虚ろな目をしていたルミナが、アルルメイヤにがくがくと肩を揺さぶられて正気を取り戻す。
「ん、ルミナ、今回もちゃんと戻ってきた……よかった……」
「いったいどんな状態だったんだろう……ってその恰好……」
ルミナリアは、目の前のふりふりのメイド服姿のアルルメイヤを見て、素直に可愛いと思った。アルルメイヤの綺麗な金髪は、ポニーテールになっており、普段よりも活発な印象を与えてきた。
「アルル、可愛いね」
「ん、ありがと。ルミナもかわいい」
「……えっ」
アルルメイヤのその一言に固まるルミナリア。
(そ、そういえば足元がすーすーする……)
そう思いながら、部屋にあった姿見へとゆっくり振り向く。
「……!」
そこにいたのは、アルルメイヤと同じく、メイド服を着ている自分の姿だった。ニーソックスとミニスカートの間から覗く太もも、頭の両側で結わえられ、見事なツインテールとなった銀髪。その姿は非常に愛らしく、見慣れないその姿にルミナリアは一瞬固まってしまう。しかし。
「あぁぁぁぁぁ……」
それが今の自分の姿だと思うと、膝から崩れ落ちそうになるルミナリアなのだった。
「ルミナ、もうすぐ開店の時間」
「い、今からでも着替えて仕事を……」
「ん、さっきまで着てた服はフィアナが持って行った」
「お姉ちゃん容赦ないよぅ!」
ルミナリアが悲しみの叫びを上げていると、部屋の扉が開き、サリアが顔を覗かせた。
「ほら、二人とも、今から店を開けるよ! 頼んだよ!」
「ん、ルミナ、行こ!」
アルルメイヤが小走りで部屋を出ていく。見えそうで見えない絶妙な位置で揺れるスカートに思わずドキリとさせられながらも、今自分も同じ服を着ていることを思うと気が滅入りそうになるルミナリア。
「やるって言っちゃったもんね……今行きまーす!」
しかし、サリアを手伝うと決めた以上は頑張らなければ、と自分を奮い立たせ、部屋の外へと歩き出した。
「すーすーするぅ……!」
しかし、ふりふりと揺れるスカートには慣れそうにないルミナリアなのだった。
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ルミナリアが厨房を抜け、ホールに出ると、厨房のスタッフを含めた店の全員が揃っていた。ルミナリアを見て怪しい笑みを浮かべているフィアナも同じメイド服姿になっている。
「よし、みんな揃ったね! 今日も張り切っていくよ! 開店だよ!」
サリアが全員の顔を見て開店を宣言すると、店の外からちらほらと客が入り始めた。
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ!」
サリアや他のスタッフがはきはきと客を迎えていく。
「よし、いらっしゃいませ! お席にご案内しまーす!」
「ん、いらっしゃいませー」
フィアナとアルルメイヤも、同じように接客を始める。
「ぁ……ううううぅぅぅぅ……! ぃらっしゃいませぇ……」
ルミナリアも恥ずかしさを何とかこらえながら接客へと向かっていった。
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それが全ての始まりだった。朝にやってきた客たちから徐々にルミナリアたちの噂が広まり、気づけば一日目を遥かに凌ぐ客入りとなっていた。
「こうしてても仕方ないよね……戻らなきゃ……」
ルミナリアが回想を終え、物陰から仕事に戻る。しかし、客が増えたことによる弊害が現れだした、今まではいなかった質の悪い客がちらほらと現れだしたのだ。
「おーい! この皿下げてくれねぇかー? へへ……」
「あ、はい! 少々お待ちください!」
物陰から出てきたルミナリアに声をかけてきたのは、酒に酔った三人の男たちだった。その男たちは、下品な笑い声を上げて、周囲から顰蹙を買っているのだが、どうやら当の本人たちにその自覚はないようだった。ルミナリアが男たちのテーブルへと向かう。
「ではこちらのお皿をお下げいたします」
「あぁ、たのむぜぇ~……」
男たちのにやにやした視線を感じ、すぐにその場を離れようとしたルミナリアが男たちに背を向ける。その瞬間。
「おっとぉ~!」
「ひゃぁ!!」
男の一人が、ルミナリアのお尻をすっと触る。ルミナリアはそのことに驚き、悲鳴をあげしゃがみこんでしまった。
(ちょっとおおおおおお!?)
「あー悪い悪い、手が当たっちまったなぁ~。大丈夫か~? へっへっへ……」
「ちょ……!」
「ルミナ!」
「ルミナちゃん!」
そう言いながらルミナリアへと手を伸ばしてくる酔っ払い。事態に気づいたアルルメイヤとフィアナが近づこうとするも、間に合いそうにはない。だが、その手はルミナリアへと届くことはなかった。
バシィッ!!
「あいてぇぇぇぇ!!」
「え……?」
ルミナリアが見上げた先には、身なりのいい老紳士が立っていた。その老紳士が、持っていた杖で男の手を払ったのだ。
「女の子には優しくするものだよ。お嬢さん、立てるかな?」
「あ……ありがとうございます……」
ルミナリアが老紳士の手を借りて立ち上がる。
「さて、君たちには灸を据える必要がありそうだね?」
今回はルミナちゃんがちょっとひどいめにあうお話です。
そして、この老紳士の正体はいったい……!?
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




