豊穣祭の賑わい
豊穣祭一日目、ルミナちゃん達は広場の舞台へとやって来ました。
第33話です。どうぞ。
「さぁさぁお集まりいただいた皆様! これよりお見せしますは磨きあげた妙技の数々! ぜひぜひお楽しみくださいませ!」
ルミナリア達は、街の大広場にやって来ていた。広大な広場の中央には円形の舞台が設置されており、その周囲を囲むように数多くの丸テーブルと椅子が設置されていた。
「あの人……ここから見てもおっきいねー……あ、よく見たら頭の上に耳がある」
ルミナリアが見つめる舞台の上に立っているのは、身長は軽く2メートルを越えているであろう大男だった。その大男の頭の上には獣人族の特徴である耳が見えていた。
「獣人族は種族毎に体格も大きく変わるって特徴もあるのよ。あの人はたぶん熊族ね」
「そうなんだ……」
「ん、何か始まるみたい」
ルミナリアが、フィアナと話をしていると、アルルメイヤが舞台を指差した。舞台の上には、先程の大男とは別に、尖った三角の耳と、ふさふさの尻尾を持つ若い男と、彼より年下であろう女の子が立っていた。
(あれは……犬、いや狼族だったり?)
ルミナリアがそんなことを考えていると、舞台の上で若い男が目隠し、一本の剣を手に取っていた。
「さぁさぁご注目! この兄妹が挑むのは目隠しをした状態で飛んできた物を斬る、というものでございます!」
「びっくりさせちゃうんだから!」
「見ててくれよー!」
大男が声を上げると、若い男はその場で見事な剣舞を披露し、その横に立つ女の子は、果物のジャグリングをし、互いに存在をアピールしていた。
「それではどうぞ!」
大男のその言葉を合図に、二人は互いに距離をとり向かい合った。女の子の横には、大量の果物が入った籠が置かれ、男の後ろには果物を落とさないようにするためだろう網が張られている。
「あの男の人すごいね、目隠ししてるのにスイスイ歩いていったよ」
「それだけ日々の積み重ねがあるんでしょうね。あ、始まるわよ」
果物のジャグリングを続けていた女の子が、ひょいっと果物を放り投げる。すると、目隠しをしている男は、まるで見えているかのように飛んできた果物へと剣を一閃すると、果物は後ろのネットへと入っていった。広場が一瞬静寂に包まれる。大男が網の中に手入れ、果物を取り出す。その手にあったのは、見事に両断された果物だった。それが見えた瞬間、広場は歓声で沸いた。
「ん、お見事」
「すごいね!」
ルミナリアとアルルメイヤも、周囲の人々と同じくパチパチと拍手をする。
「みなさま、驚くのはこれからでございます! では、続けてどうぞ!」
女の子は、ジャグリングをしていた果物を再び男の方へと放り投げる。今度は二つの果物が放物線を描き、男の方へと飛んでいく。男は、次もまた見事な剣裁きで二つの果物へと二度剣を振るう。そして、網から出てくる果物はやはり綺麗に両断されていた。再び広場が歓声で包まれる。
「じゃあどんどんいくよー!」
「よし! こい!」
女の子は楽しそうに宣言すると、果物を次々と男へと投げはじめる。男の振るう剣は、タイミングもばらばらに飛んでくる様々な果物を次々と両断していった。
「これで終わり!」
「よっ!」
女の子が最後に投げた果物が、男の剣を通過し網へと入っていくと、男は目隠しを外し、女の子と網の方へと向かっていく。そして果物を手に取り、周囲の人々に見えるように真上に掲げる。
「ほーら、一丁あがりだ!」
「じゃーん!」
「今一度、彼ら兄妹に拍手をお願いします!」
周囲の人々は、それを合図にしたかのように再び歓声をあげた。
「ありがとー! あ、この果物はテーブルに座ってる人たちに配られるから楽しみにしててね!」
「この次の人たちもすごいから、見てってくれよー!」
兄妹は、観客たちに手を振ると、舞台から降りて行った。ルミナリアも、元の世界のテレビでも見たことのない技に夢中で拍手をしていた。
(すごい! まるでサーカスみたいだ!)
それからも、メンバーが変わる度に様々な技が披露され、その度に広場は驚きと歓声に包まれた。
「はい、フルーツをどうぞ!」
そんな舞台を夢中で見続けているルミナリア達にフルーツの盛り合わせを持った男が話しかけてきた。
「ん、ありがと……あなたはさっきの……」
アルルメイヤがフルーツを受け取る。そこにいたのは、先程舞台の上にいた男であった。
「さっきの見てましたよ! びっくりしました!」
「ああ! 見ててくれてありがとうな! 楽しんでもらえたみたいで何よりだ! もう少し舞台は続くからそっちもよろしくな!」
男は、嬉しそうに笑うと次のテーブルへと向かっていった。ルミナリア達は、それからしばらくの間、果物を食べながら舞台を楽しんだのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「んー、楽しかったわね」
「ん、もうこんな時間」
「うん、あっという間だったね」
ルミナリア達は舞台が一区切りしたところで広場から移動していた。街は夕暮れに染まりつつあったが、人々の賑わいは収まることなく続いていた。
(なんだか、優羽や圭祐と行った縁日を思い出すな……)
ルミナリアは、夕闇に染まりつつある街並みと、並ぶ出店を見て、ふと昔のことを考えてしまった。
「ルミナ? どうかした?」
「え? なんでもないよ?」
「ん、なんか寂しそうな顔してたから」
ルミナリアは、アルルメイヤのその一言に少しドキリとした。
「そ……そんなことないよ! ちょっと疲れたのかも、お姉ちゃん、そろそろ晩ごはんにしようよ!」
「ん、確かにお腹が空いたかも……」
「そうね、サリアさんの食堂の近くまで来てるし、今日はそこにしましょうか」
「ん! 賛成!」
フィアナの提案に嬉しそうなアルルメイヤの様子を見て、ルミナリアはほっとしていた。
(なんで話題を変えただけでほっとしたんだろう……やっぱり僕は寂しい……のかな……)
ルミナリアが俯きそうになっていると、アルルメイヤが、ルミナリアの手をとった。
「ルミナ、私もフィアナもいるから大丈夫……だよ?」
「……! そうだね、アルル、ありがと」
「ん、じゃあ行こう」
アルルメイヤは、フィアナの手も取ると、二人を引っ張るようにしてずんずんと突き進んでいった。
「アルルちゃん! 慌てないの! ふふ」
「わわ、アルル、食堂は逃げないよ!?」
フィアナは、笑い合う妹達をみて安堵していた。
(私が声をかけようと思ったけど、大丈夫だったみたいね)
どうやら妹達はしっかり支えあって行けそうだ、と。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ルミナリア達がサリアの食堂のドアを開くと、カランカランとベルの音が響いた。
「いらっしゃい! おや、あんたたちかい」
その音に気づいたサリアが、ルミナリア達の方へと歩いてきた。
「こんばんわ、サリアさん。今日はいつもより賑やかみたいですね」
「そうなんだよ! やっぱり豊穣祭はこうじゃなくっちゃね!」
フィアナが言う通り、店の中は客で一杯だった。
「ん、席空いてる?」
「丁度テーブルが一つ空いたところだよ、運が良かったね」
「うん、いいタイミングだったね」
ルミナリア達がサリアの案内でテーブルに座ると、食堂で働いている女性がサリアに話しかけた。
「サリアさん、ちょっといいですか?」
「どうしたんだい? 向こうで聞こうか。あぁあんた達は注文が決まったら呼んどくれ」
サリア達は、そう言うと厨房の方へと歩いていった。
「ん、ルミナ、フィアナ、なに食べる?」
アルルメイヤが、テーブルに置かれていたメニューを二人にも見せてくる。
「そうね……あ、豊穣祭限定メニューなんかもあるのね」
「わ、それ気になるね」
やがて、注文を決めたルミナリア達がテーブルのベルを鳴らすと困った顔のサリアがやって来た。
「待たせてすまないね」
「ん、サリア、どうかした?」
「あぁ、ちょっと明日の昼間、店に出てきてくれる予定だった子が急に出られなくなっちまってねぇ……」
「あら、それは大変ですね……」
「そうなんだよ……」
サリアは、そこまで言うと、ルミナリア達の顔をじっと見つめた。
「……なぁ、あんた達。明日、うちを手伝ってくれないかい?」
「「「えっ……!?」」」
それは、思ってもなかった展開であった。
食事に来たはずのルミナちゃん達でしたが…さぁ、豊穣祭二日目はどうなるのでしょうか?
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




