豊穣祭と信頼の魔法
再び長らく更新が止まってすみませんでした…
今回から豊穣祭が始まります。
第32話です。どうぞ。
その日の朝、ホリティアの上空で数度に渡る爆発があった。その音を切っ掛けとして、ホリティアの街は大騒ぎとなった。しかし、それは何者かによる攻撃や、悪戯などではない。何故なら、その音はホリティアの豊穣祭の開幕を知らせるものであったからだ。
「ん、ルミナ、フィアナ。あそこの屋台に美味しそうなものが……」
「ちょっとアルル! 勝手にいかないでよ!?」
「ふふ、心配しなくてもお菓子は逃げないわよ」
街はホリティアへとやって来た人々によって、普段にも増して賑わっていた。そんな中、ルミナリア、アルルメイヤ、フィアナの三人も街に繰り出していた。
「ん、ついつい……」
「もう、気を付けてよ? はぐれちゃったらどうするの?」
「うん……そうね、ルミナちゃん、アルルちゃん、はぐれても連絡がとれるようにしておきましょうか」
「どうするの?」
「二人ともバングルを出してもらえる?」
「うん、わかった」
「ん」
ルミナリアは、右腕に巻いていたスカーフを外し、パーソナルバングルを出した。
「じゃあ皆のバングルを近づけて」
ルミナリアとアルルメイヤは、フィアナの指示通りにお互いのバングルを近づけた。
「こうして並べると綺麗だね」
「ん、確かに」
「さて、じゃあ行くわよ───連結」
その瞬間、ルミナリア達のバングルがほんのりと光った。
「お姉ちゃん、何したの?」
「光った?」
「冒険者達が使ってる魔法なの。効果は……実際に見た方が早いわ。バングルを開いてみて」
「うん……あ、これって……」
ルミナリアは、バングルに魔力を流すと、今までなかったものが表示されていることに気がついた。
「ん、これ、お互いの位置がわかるようになった?」
「そう、有効距離はそこそこあるから、見失うことはないと思うわ。そしてもう一つ機能があるわ」
フィアナがそう言うと、ルミナリアのバングルから、振動が伝わってきた。魔力を通すと、フィアナとアルルメイヤの名前が表示されていた。
「そこで、連絡を受けるか拒否するか念じるの。今は受けてみて」
「うん」
ルミナリアとアルルメイヤが受けるよう念じると、バングルの振動が止まった
「どうかしら?」
「ん、変な感じ」
「だね……」
ルミナリアたちの違和感も仕方がなかっただろう。耳から入ってくる声とは別に、頭の中に直接聞こえてくるような感覚があるのだから。
『じゃあこれでどうかしら?』
「ん、今のって……」
今度は耳からは何も聞こえなかったが、頭の中にフィアナの声が直接響いて来た。
『そう、これが念話機能。二人ともできる?』
『こう、かな?』
『ん、聞こえた』
ルミナリアとアルルメイヤが頭の中に言葉を思い浮かべてみると、お互いの言葉が頭の中に響き、まるで直接会話をしているかのようだった。
『すごい……バングルってこんな機能があったんだね……』
『念話を終わるときはバングルへ魔力を流すのをやめたらいいわ、練習はこの辺にしときましょうか』
ルミナリア達がバングルへの魔力供給を止めると、バングルの淡い光りも収まり、念話は聞こえなくなった。
「一応注意しておくけど、この連結は簡単にいろんな人としちゃダメよ?」
「そうなの?」
「ん、便利だけど危険」
「そう、これは最初にお互いのバングルを見せ合う必要があるの。そして、お互いの位置がわかってしまうようになる」
「あっ……」
ルミナリアは、そこまで聞いて、その危険性に気付いた。バングルは身分を示す。そしてその相手の位置がわかってしまう。悪人がそれを知ればいくらでも悪用のしようがある恐ろしいものなのだ。
「わかったみたいね? これはそれだけの危険性のある魔法。この魔法は信頼のおける相手としかしないの。だから、こう呼ばれるわ」
フィアナがルミナリアとアルルメイヤの頭にぽんと手を置く。
「"信頼の魔法"って」
「……お姉ちゃん、ありがとう」
「ん、ありがと」
「ふふ、さぁ! お祭りは始まったばかりよ! 行きましょ!」
ルミナリア達は、再び人混みの中を歩いていった。
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ルミナリア達が豊穣祭を巡り始めてしばらく。時刻は既に昼になっていた。三人は街の至るところに設置されている休憩所で昼食をとっていた。昼食後、ルミナリアがクレープを食べている隣では、アルルメイヤが幸せそうにクレープを食べている。
「アルル……ホントに甘いもの好きだね……」
「ん、大好き」
「あはは……見てるだけでお腹一杯になっちゃいそうだよ……」
「そ、そうね……」
「ん、じゃあちょっとちょうだい」
「あっ……」
アルルメイヤが、ルミナリアの持っていたクレープをぱくりと一口食べる。そんなアルルメイヤにドキリとしてしまうルミナリア。
「ん、ルミナのも美味しい」
「間接キス……ってやつ……かな……」
「ん? ルミナ、何か言った?」
「ななななんでもないよ!? ちょっとビックリしただけだよ!」
「ん、そう?」
なお、静かなフィアナは、そんな二人の様子を見て怪しい笑みを浮かべていた。
「ねえお姉ちゃん。この後はどうするの?」
「そうねぇ……今はお腹一杯になったことだし広場に設置されてる舞台に行ってみましょうか」
「舞台?」
「ん、聞いたことある。いろんな国から集まった人たちが舞台の上で色んな出し物をするって。私も行ってみたい」
「うん、おもしろそうだね!」
「ふふ、じゃあ行ってみましょうか」
(この世界の出し物ってどんなのだろう……楽しみ!)
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ルミナリア達がお祭りを楽しんでいる中、とある場所では、一人の男が暗い部屋で踞り、震えていた。
「これは……なんなんだ……これはぁぁぁ!」
その男、アンドレイの周りには、黒い靄のようなものがまとわりついていた。
「あいつ……いったい何を……この魔導器は……ぐあああああ!!」
アンドレイが叫び声を上げながら握りしめているその魔導器、ネックレスからは、アンドレイにまとわりついている靄がじわじわと滲み出していた。
「ぐっ……こんな……があああああああ!!」
その靄がアンドレイの全身を覆うと同時に、アンドレイの声は途絶えた。そこに残されたのは、深い闇色の繭のようなものだった。やがて、誰もいなくなったはずのその場所に、コツコツと足音が響く。
「ふふふ、やはりダメでしたね、まぁ予想はついていましたが」
現れたのは、アンドレイにネックレスを渡したフードの人物だった。
「では、さようなら――」
フードの人物は、目の前にある繭を一撫ですると、その場から去っていった。
豊穣祭は三日間行われるお祭りです。
賑わう街でお祭りを楽しむルミナちゃん達は…
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では、また次回で会いましょう。




