戦利品はどうしよう?
今回は前回の補完と、次回への繋ぎのような幕間的な話になります。ちょっと、短いです。
第30話です。どうぞ。
アンドレイとの戦いの後、ルミナリア達四人は、フィアナがよく通うと言うギルド近くの喫茶店へと移動していた。
「ふぅ、やっと一息つけるね……」
「ん、ちょっと疲れたかも」
「ふふ、二人とも派手に目立っちゃったからしかたないわね」
そう、ルミナリアとアルルメイヤは、新人冒険者である二人を自分達のパーティーに誘おうとする人々に囲まれてしまったのだった。
「必要としてくれることはありがたいんだけどね」
「しつこいのは、や……フィアナ、ありがとう」
「私はなぁーんにもしてないわよ? ただ、私の妹が困ってるんだけどって声をかけただけだから」
グリムは、二人に優しく微笑んでいるフィアナを見て先程のことを思い出す。困ってる二人と、冒険者達の間に入り込み、冒険者達に見せた心の底から恐ろしい殺気を感じる微笑みを。グリムはその微笑みを見てしまった。そのときのフィアナの眼は雄弁に語っていたのだ。
――私の妹達を困らせてたら、ぬっ殺すわよ♪と。
「……おーこわっ」
「グリムさん、どうかしたの?」
ルミナリアが、青い顔をしたグリムの様子に気づく。
「い、いや、何でもねぇよ……それよりも、やつの魔導器はどうするんだ?」
「それなんだけど……アルル、どうする?」
「ん、とりあえず剣は無理」
「だね、ということでグリムさんにあげるよ」
「ん、はいこれ、重かった」
アルルメイヤが持っていた剣をグリムに渡す。
「おいおい、さすがにこれは受けとれねぇよ!? これ魔剣の類いだぞ!? 売れば結構な値段になるはずだぜ!?」
剣を返そうとするグリム。
「じゃあお礼ってことで」
「ん、それで」
「お礼? 何のだよ?」
「最初に角兎から助けてくれたし、アルルを鎧猪からも助けてくれたよね」
「ん、お礼がまだだった」
「いや、でもよ……」
「もう、グリム、貰っちゃいなさいよ。今の剣、ヒビが入ってるから新調する予定だったんでしょ?」
そう、今のグリムの剣は、鎧猪を殴り付けたときにヒビが入ってしまっていたのだ。
「だーわかった! 確かに俺にとってもありがたい話だよ! じゃあ貰うぞ!」
「「どぞどぞ」」
「さて、あとは指輪と腕輪ね」
フィアナがテーブルの上に置かれていた綺麗な装飾の入った指輪を手に取る。
「ふぅん……この指輪、プロテクションの魔法が込められてるのね。これで魔法の防御をしてたって訳ね。で、こっちの腕輪はファイアーボールね……地属性だけは自前の魔法だったみたいだけど、アイツが複数の属性魔法を使ってたのはそういうことね」
「お姉ちゃん、その魔導器ってすごいの?」
魔導器の価値が良くわからないルミナリアが首を傾げる。
「そうだな、魔法の才能があまりないやつでも、魔力さえあれば簡単に、かつ無詠唱で魔法が撃てちまう道具っていうとどうだ?」
「あ……!」
ルミナリアは、その話を聞いて、魔導器の利便さと危険性を理解した。
「ん、これは使い方次第では非常に危険」
「だね……どうしよっか?」
「せっかくだから使っとけよ?」
「じゃあアルル、腕輪預けるね」
「ん、わかった」
「最後に指輪だけど、お姉ちゃんにあげるね」
「あら、ありがとう。身に付けてさえいれば使えるみたいだし、ネックレスにでもしようかしら」
戦利品の分配が終えた後、ルミナリアが気になっていたことをアルルメイヤに問いかけた。
「ねぇアルル、あいつって貴族だったの? 身分隠してるけど、アルルに攻撃してきたりしたけど大丈夫なのかな?」
「ん、あいつはもう貴族じゃない。貴族らしからぬ思想を持ってるってことで、二年前におとーさまに貴族の爵位を剥奪されてるはず」
「あ、だから貴族崩れ、何て言われてたんだね……」
「あと、私は今王家の人間じゃなくて、アルルメイヤ・ブランっていう個人の扱い。だから今回の事は特に何かあるって訳じゃない。……でも、ねーさまが知ったら暴れるかもだけど……」
「ふふふふ……」
アルルメイヤが注文していたプリンを嬉しそうにつつきながら話す。どうやらプリンに夢中で、怪しい笑みを浮かべて見つめているフィアナには気付いていないようだった。
「「……」」
ルミナリアとグリムが、そっと自分の飲み物を持ってアルルメイヤから少し離れる。
「ん、あまあま♪」
アルルメイヤは、幸せそうにプリンを食べている。
「ふふふふふ……アルルちゃんかわいいわ……」
フィアナがじりじりとアルルメイヤへと距離を詰めていく。
「アルル、強く生きて……」
「お前らよく一緒に暮らせてるな……」
ルミナリアが虚ろな表情で生贄から目をそらす。
「アルルちゃーん♪」
フィアナが、アルルメイヤに飛び付き、頬擦りを始める。
「んーっ!?」
アルルメイヤはその時点になって気づいた。ルミナリアが自分から距離を置いて目を逸らしていることに。
「ル……ル……ルミナーっ!?」
「くっ……」
「うふふふふふふふ」
しばらくの間、アルルメイヤの悲しい声が続くのだった。
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「アルル~許してよ……」
「ん! 私を見捨てたルミナなんて知らない!」
その日の夜、ルミナリア達の部屋でアルルメイヤはむくれていた。
「だって……ああなったお姉ちゃん怖いんだもん……」
「そ、それは同意する……でもルミナはひどい」
ぷいっとそっぽをむくアルルメイヤ。
「ア、アルルさま……明日、私めが甘いデザートを用意するということでいかがでしょうか?」
「……」
アルルメイヤは無言のままだった。しかし、ルミナリアにはアルルメイヤの興味を引けていると言うことに確信があった。
ゆらゆら。
そう、アルルメイヤの髪が揺れていたのだ。
「いつもより美味しいパンケーキ用意してあげるから……」
「……」
ふりふり。
「シロップとクリーム付きで」
「……!」
ぱたぱた!
「どうかな?」
「ん、それなら許す……」
アルルメイヤは、それだけ言うと、またつんとそっぽを向いてしまったが、アホ毛は嬉しそうに揺れ続けていた。
「よかった……」
なんとか許しを得てほっとしながらも、あの髪、どうなってるんだろうなぁ、と心の中で思うルミナリアなのであった。
「よし、明日は買い物にいかなくちゃね!」
「ん、それは私も行きたい」
「わかった。じゃあ、今日も色々と疲れたし、寝よっか」
「ん、おやすみ」
そう言って二人で布団を被る。すぐに寝息をたて始めたアルルメイヤが、いつものようにルミナリアに抱きつく。
「やっぱり……すぐには慣れそうにないよ……」
アルルメイヤの柔らかな感触にドキドキしてしまうルミナリアなのであった。
次回、ルミナちゃんとアルルちゃんは街に繰り出します。
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では、また次回で会いましょう。




