私は僕で、だけど私で
前回のお話を書き直すか悩んでいましたが、そのままにすることにしました。
さて、改めまして更新です。
第28話です。どうぞ。
追記:今までの話の中で、パーソナルバングルについて書かれている部分をちょっと書き加えました。パーソナルバングルは身分を表してしまうため、見えないようにリボンやスカーフなんかを巻いている表現を加えました。
ルミナリアが身体の内に生じた衝動を抑えられなかった翌日。ルミナリアは気だるさを感じながら、いつもより遅めに目を覚ました。
「朝……起きなきゃ……」
言葉とは裏腹に身体は重く、起き上がる気力が湧いてこない。そして徐々に思い出すのは昨日の出来事と、今も隣で眠るアルルメイヤへの罪悪感だった。
「ん~……すぅ……」
「アルル……アルルは女の子同士の友達として僕に接してくれているんだよね。それなのに……あんな……」
ルミナリアは、自分を友達として接してくれているアルルメイヤを裏切ってしまった、という心境だった。
「確かに私の内側は僕だ……でも、今は私として振る舞わなきゃ……」
ルミナリアが、アルルメイヤの頭をそっと撫でる。すると、アルルメイヤの目が薄く開かれた。
「ん……ルミナ?」
「起こしちゃった? ごめんね?」
眠そうに目を擦るアルルメイヤは、欠伸をすると身体を起こした。
「ルミナ、おはよー」
「うん、おはよう」
ルミナリアは、アルルメイヤに微笑む。自分を友達と呼んでくれるこの子を裏切るようなことはやめよう、と心の中で静かに決意しながら。
「ルミナ、お腹すいた。朝ごはん食べよ?」
ベッドから降りたアルルメイヤがルミナリアに手を伸ばす。
「そうだね、じゃあ行こっか!」
その手を掴んだ身体は、不思議と先程の重さを感じずに動くのであった。
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「あれ、お姉ちゃんいないね」
「ルミナ、これ」
一階に降りると、フィアナの姿はなかった。
「手紙? 昨日はお疲れ様。ギルドには私とグリムが説明に行くから、二人はゆっくり休んでてね。遊びに行ってもいいけど遅くならないようにね? だって……」
ルミナリアは、今日ギルドに行くことになるだろうと思っていたのだが、どうやらフィアナとグリムが二人に気を使い、代わりに行ってくれたようだった。
「……どうしよっか?」
「ん、とりあえずごはん食べよ?」
「そうだね、じゃあ座って待ってて。なにか食べたいものはある?」
ルミナリアがエプロンをつけながらアルルメイヤを見る。すると、そこには目をキラキラとさせ、犬の尻尾のように髪の毛が揺れているアルルメイヤの姿があった。
「ん! パンケーキ!」
「うん、わかった。そういうと思ったよ」
ルミナリアは予想通りの注文に、苦笑しながら料理を始めるのだった。
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「相変わらずアルルはよく食べるね」
「ん、ルミナのパンケーキは幸せ……」
机に突っ伏してふにゃりと蕩けているアルルメイヤに、ルミナリアは苦笑するしかなかった。
「さて、じゃあ今日は何をしようか?」
「んー……」
本来の予定がなくなったが、やりたいことも特にない、というのが今の状態だった。
「お姉ちゃん達がギルドに行ってくれてるけど、私達も行く? どんな仕事があるか気になるし……」
行く必要はなくなった、とはいえ、やはりギルドのことは気になっていたのだ。
「ん、今後いろんなところでお世話になると思うし、いいと思う」
「ギルドって色んな町にあるんだよね? 今のうちに色々覚えとこうか。じゃあ準備したら行こっか」
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家を出た二人がギルドにやってくると、ざわつくギルドの中で大声を出している人物がいた。
「だから私にそれを証明してみろ! ホントはそいつらじゃなくてお前達がやったんだろ? どうせ金で雇われでもしてたんだろ!」
大声を出していたのは、派手なマントを纏った男だった。
「なんだろう? 喧嘩でもしてるのかな?」
「ん、ルミナ、あそこにフィアナ達がいる」
「え?」
アルルメイヤが指差す方を見るルミナリア。すると、そこには大声を出している男の前で疲れたような表情をしているフィアナとグリムの姿があった。
「はぁ……何度もいってるけど、私達は金で雇われたりなんてしていないわ……」
「ふん! どうだかな! お前達は最近名を揚げてきて調子に乗っているみたいだからな! そんなやつら程金目的で何をするかわからんだろう? 」
男は、フィアナ達をを見下すようにニヤリと笑う。同時にルミナリアの周囲の人々がヒソヒソと話している声がルミナリア達の耳に届いた。
「あれ、貴族崩れのアンドレイだろ? あいつこそ金の力で好き放題やってるってのに……」
「アンドレイのやつ、またやってるのかよ……」
「最近フィアナさんとグリムは調子良さそうだったもんな」
「ちっ、それが気に入らないんだろうな。みっともないってもんだぜ」
周囲から聞こえてくる声から、あのマントの男はアンドレイと言うらしいということと、あまりよくない噂が多いようだということがわかった。そして、今回はフィアナとグリムを標的としているようだった。
「あいつ……!」
「ルミナ、いこう」
フィアナとグリムが自分達のために言われたい放題になっていることに納得がいかなかったルミナリア達は、アンドレイのいる方へと歩き出した。
「ねぇ、そこの人」
「ん? なんだ、ガキか。ここは託児所じゃないぞ? ははっ!」
ルミナリアが、アンドレイに話しかけると、アンドレイは相変わらずの小馬鹿にしたような顔でルミナリアとアルルメイヤを笑った。
「あなた達!? どうしてここに!?」
「ん、今後のためにギルドのことを知ろうって話して来た」
「ちっ……お前らをこんなことに巻き込みたくなかったんだがな……」
ルミナリア達を見たフィアナは驚いた顔をし、グリムは苦々しい表情をしていた。
「なんだ、お前達は知り合いだったのか?」
「そうだよ、昨日の鎧猪の話をしてるんだよね?」
「そうだが、まさかお前達が鎧猪を倒したとか言うんじゃないだろうな? 馬鹿馬鹿しい! こんなガキが倒した? はっはっは! これで嘘が証明されたな! こんなやつらが鎧猪を倒したなんてあり得ない!」
ざわつくギルドの中にアンドレイの笑い声が響く。周囲の人達も、さすがに信じられない、といった表情だった。
「じゃあ……」
「ん? なんだ?」
「じゃあ、どうやったら信じられる?」
アルルメイヤが、アンドレイへと強い瞳を向ける。その力強い視線に一瞬怯むアンドレイ。
「……! ふん! 気に入らん眼をしおって! では、この私に勝てたのなら認めてやろう! 直々に冒険者というのがどういうものなのか教えてやる!」
「待ちなさい! それは……」
「ほう! 止めるのか? ではやはり嘘だったということか!」
「くっ……!」
「お姉ちゃん。ここは私たちに証明させて」
「でも!」
「ん、大丈夫」
「フィアナ、こいつらの実力ならわかってるだろ? 信じてみようぜ」
「ん、グリム、ありがと」
不安気なフィアナに微笑み、ルミナリア達が前に出る。
「ふん! ハンデをやろう! 二人同時に相手してやる! それくらい認めんと子供をいたぶるだけになるからなぁ? ではギルドの裏の広場に来い! 周りの連中もだ! 証人は多いほどよいからなぁ?」
アンドレイは完全にルミナリア達を見下していた。
「アルル、やろう。お姉ちゃん達のためにも負けられない」
「ん、勝つよ」
ルミナリア達は、アンドレイに続いて歩き始めた
さてさて、次回は厄介な人に絡まれたフィアナとグリムのためにルミナちゃんとアルルちゃんが頑張ります。
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




