森に響く轟音
久々の投稿です。長い間投稿止まってしまっててすみませんでした。
これからもちまちまと更新していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
さて、角兎を倒したルミナちゃんたちに迫るものとは……
第24話です。どうぞ。
ルミナリアたちが角兎との初めての戦いを終えた後。一行は、その後も角兎を探しては戦う、といったことを繰り返していた。
「よし、とりあえず角兎は安定して倒せるようになったな」
ルミナリアとアルルメイヤは、最初の戦闘を含めて、十匹の角兎を倒していた。
「うん、なんとなくだけど、二人で戦うっていうのがわかってきた気がする」
「ん、最初より合わせやすくなってきたと思う」
「そうね、二人ともいい感じにお互いをサポート出来ていたわ。特に最後の方はとっても良かったわ」
「そうだな、これだけ戦えるようになったなら、とりあえず今日の目標は達成ってとこだな。おつかれさん!」
ぽん、とグリムがルミナリアとアルルメイヤの頭に手を置くと、二人の頭をわしゃわしゃと乱雑に撫でた。
「わわっ……グリムさん!? やめてよー! あはは!」
「んー! やーめーてー! ふふ!」
ルミナリアとアルルメイヤは、やめて、と言いながらもその手を振り払うことはなく、楽しそうに笑っていた。
「もう! あんまり私の妹たちをいじめないでもらえるかしら? うふふ」
「ははは! わかったわかった、こわーいフィアナ先生にしかられる前にやめるとするか!」
グリムはそう言うと、二人の頭から手を離した。
「さてと、じゃあ今日はここらで切り上げて、帰るとしようぜ。ま、今ならゆっくり歩いても陽が沈む前には帰れるだろ」
ルミナリア達がホリティアに向けて移動を始めると、静かだった森に突然轟音が響き渡った。
それは、木が倒れる音、力強く大地を叩く音、岩を砕く破砕音。それらがルミナリア達の方へと近づいてきていた。
「この音……何?」
「さっきのゆっくりってのはやめだ! 走るぞ!」
キョロキョロと周囲を窺うルミナリアとアルルメイヤに、グリムが叫び、急いで移動を始める。
「グリム! 近づいてるわ!」
「わかってるよ! くそっ!」
先程までの角兎狩りのときは、ずっと余裕の表情を浮かべていたグリムとフィアナの顔は険しく、息を切らして走るルミナリアとアルルメイヤは、間違いなく危機が迫っている、と理解した。
「なんだってんだ! ……おいおい冗談だろ!? なんでこんなやつがここにいるんだよ!」
殿にいたグリムが走りながら振り返ると、そこには自分達の後ろを追いかけてくる角兎と、更にその後方に周囲の木を薙ぎ倒しながら近づいてくる巨体が見えた。
「グリム! 何がいるの!?」
先頭を走るフィアナが振り返らずに叫ぶ。
「……鎧猪だ!! それもかなりのサイズだ!」
「そんな……!? 鎧猪はまだ遠くの森に生息してたはずでしょう!?」
「本来なら鎧猪は角兎なんかの小さな魔物を襲う魔物だ! 多分最近の角兎狩りで数が減っちまったもんで移動してきたんじゃねーか!?」
「はぁっ……はぁっ……いつまで……走れば……!?」
「俺たちの後ろを角兎が走ってる! いや、ありゃあいつらも逃げてるんだ! 嫌な予感がする、あいつら鎧猪を俺たちに擦り付けるつもりか!」
グリムがそう言って再び振り返ると、既にどこかの草むらにでも飛び込んだのか、角兎の姿はなく、見えるのは、轟音を響かせて迫る鎧猪だけであった。
「あぁくそ! 角兎は既にいねぇ! 完全に俺たちに狙いを定めてやがる!」
「そんな……!」
状況は悪くなる一方だった。障害物をものともせず、猛烈な勢いで近づいてくる鎧猪に対し、逃げるルミナリアたちは木や草むらを回避しなければならなかった。
「はぁっ……はぁっ……ルミナ、もう……ダメ……」
「私も……もう……」
「あっ……!?」
必死の逃走だったが、ついにアルルメイヤの足が縺れ、その場に転んでしまう。
足を止めて振り向くルミナリア。倒れているアルルメイヤに猛然と迫る鎧猪。あと何秒かあれば、アルルメイヤの倒れている場所に到達するだろう。そうなれば、アルルメイヤは鎧猪の後ろに見える木や岩のように悲惨な末路を辿るだろう。
ルミナリアの脳裏に、濁流に落ちていく優羽の姿がちらついた。また、あのときのように身近な誰かが消えてしまいそうになっている。その瞬間、ルミナリアの身体は勝手に動いていた。
「アルル!!」
「アルルちゃん!」
「くそっ!」
この状況をどうすれば乗りきれるか。そんな知識など全くない。もちろん自信もない。しかし、身体は止まらなかった。ルミナリアはアルルメイヤを庇うように立っていた。
「させない! プロテクション!!」
ルミナリアが魔法の防壁を作り出す。その数は七枚。
鎧猪が、ルミナリア達の間に、重なるようにして配置されたプロテクションに接触する。その瞬間、ルミナリアには世界がまるでスローモーションになったかのように見えた。
一枚目。まるでそこには何も存在しないかのように粉砕された。
二枚目。勢いは全く落ちることなく、一枚目同様砕かれる。
三枚目。鎧猪が、首を振り、破壊される。
四枚目。僅かに勢いが落ち始めたが、止めるには至らず砕かれる。
フィアナの炎弾が、鎧猪の顔に当たる。一時的に視界を塞がれたのか勢いが更に落ちる。
五枚目。鎧猪を一瞬止めるも、押し砕かれる。
先頭を走っていたグリムが、ルミナリアの横を駆け抜け、鎧猪に向かっていく。
六枚目。鎧猪の勢いは落ちてはいるが、やはり止めるには至らない。
「うおらああああああああ!!!」
グリムが鎧猪の斜め前から、その鼻っ柱を横から殴るつけるように剣を叩きつける。
「ブモオオオオ!」
鎧猪の進路がずれる。そして、その巨体は七枚目のプロテクションを砕き、ルミナリアとアルルメイヤの横を走り抜けていった。
「はぁっ……はぁっ……アルル、立てる?」
「うん……」
「よし、とりあえず今のはなんとかなったか……」
「でも、まだ私たちを見逃してはくれないみたいね」
ルミナリアが、アルルメイヤを助け起こしながら鎧猪の走り抜けていった方向を見ると、かなりの距離を走り抜けて止まった鎧猪がゆっくりと方向転換をして、ルミナリア達の方へと頭を向けようとしていた。
「ちっ……この森で逃げるのは難しい、ならやるしかないってことか……!」
グリムの言葉に息を飲むルミナリア。
「鎧猪は、全身を硬い毛で覆っているのが特徴なの。あの毛は武器はもちろん、魔法も威力を出しづらいわ」
「どうやって倒すの?」
フィアナの説明に質問するアルルメイヤ。
「弱点があるの。それは、顎の下から腹にかけて。そこだけはあの硬い毛に覆われていない弱点になるわ」
「なんとか弱点を狙えるようにしないと、ってことだね……」
「もうひとつ弱点があるとすれば、あの巨体は急な方向転換が出来ないってことだ。あの突進は横に動けば避けられないことはない……さて、あいつ、こっちを向きやがった! 来るぞ!」
鎧猪が、狙い定め、ルミナリアたちに走ってくる。
「ブモオオオオ!!」
「こっちだ!」
ルミナリア達は、グリムの指示通り、鎧猪に対して、右方向に走り始めた。鎧猪も、ゆっくりと方向を変えるが、対応しきれず、ルミナリア達の後方を駆け抜けるのみだった。
「このままじゃ埒が明かねぇ……何か手は……」
グリムの言葉にアルルメイヤがキョロキョロと周囲を見渡す。
「ん……あれ、使えない?」
アルルメイヤの指差した先にあったのは、四メートル程の高さの崖だった。
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動きを止め、鎧猪は再び獲物のいる方向へと首を向けていた。
「おら! かかってきやがれ! 俺たちはここだぞ!」
そんな鎧猪の視界の中に、自分から飛び込んで行ったのはグリム一人だけだった、。
「ブモオオオオ!」
姿の見えないほかの人物はどうしたのか、と考えるような知性はなく、その姿に迷わず突進を始める鎧猪。
「こっちだよ! 来いよ!」
グリムが鎧猪から逃げるように走る。鳴り響く轟音がグリムを追いかけていく。
「この辺か! フィアナ! 頼む!」
しばらく走ると、グリムが叫んだ。
「任せて!」
フィアナの声と共に飛んできたのは数発の炎弾だった。
「ブモオオオオ!?」
その炎弾は、鎧猪の目の周囲に辺り、僅かな時間だが、その視界を奪った。その視界が晴れる頃には、グリムの姿はなくなっていた。
「ブルルルル……」
消えた獲物を、探そうと方向転換を始める鎧猪を見つめながら、ルミナリアは背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。
「大丈夫……大丈夫……うまく行く……!」
自分に大丈夫だと言い聞かせる。失敗すれば、命すら危ういだろう。しかし、絶好の好機を逃すわけにもいかない。
「……いこう!」
ルミナリアが隠れていた草むらから飛び出す。
「どこ見てるの! こっちだよ!」
ルミナリアが、大声で鎧猪を挑発する。
「ブモオオオオ!!」
獲物に逃げられ続け、怒り心頭といった様子の鎧猪がルミナリアの方へと頭を向け、突進を始める。
「よし! あとはあそこに……!」
ルミナリアが真っ直ぐ向かっているのは、森の中にある崖の上だった。グリムとルミナリアの誘導で、鎧猪を崖から落とす作戦だった。
「見えた!」
ルミナリアの視線の先に、目的の崖が見え始める。後ろを振り向くと、猛然と追いかけてきている鎧猪。ルミナリアは、鎧猪に向けて、二つの小さな光の球を飛ばした。
「フラッシュ!」
その光の球は、ルミナリアの宣言と同時に炸裂し、一瞬だけ強烈な光を放つ。ルミナリアが、鎧猪の視界を奪うために先ほど作ったライトの魔法のアレンジ、フラッシュは、期待した通りの効果を発揮した。
「ブモオオオオ!?」
「よし! そのまま走って!」
鎧猪は視界を潰されながらも突進を続けていた。崖に近づいていることなど気づくこともなく。
そんな中、ルミナリアは、鎧猪の突進から走って逃げ続けていた。そして、ルミナリアが崖から大きくジャンプする。身体に感じる浮遊感に恐怖を感じる。そう、ルミナリアが向かっていたのは崖の下だった。
「ルミナスブランド! お願い!」
ルミナリアは、大きなクッションを身体の下に呼び出すと、そのクッションの上に落下した。ルミナリアは、すぐに起き上がると、近くで待機していたアルルメイヤに声をかける。
「アルル! やるよ!」
「ん! わかった!」
崖の上からは、鎧猪の足音と、鳴き声が近づいてきていた。
「ルミナスブランド!!」
ルミナリアが、自分の周囲に、十本の槍を作り出し真上に向ける。
「我が指先に宿るは裁きの雷――」
アルルメイヤも聖なる雷を詠唱する。
「くるよ!」
「ん!」
二人の真上を飛び越えるように、崖の上から飛び出す巨体。二人の目前にあるのは、鎧のような毛のない弱点。
「いっけええええええ!!!!」
ルミナリアが一斉に槍を放つ。
「ブモオオオオオオオオ!!!!」
その槍は、鎧猪の身体に深々と突き刺さっていく。
「アルル!」
「ん!――ホーリーボルトォォ!!」
アルルメイヤが、鎧猪に突き刺さった槍に向け、聖なる雷を放つ。迸る閃光に撃たれる鎧猪。やがて、鎧猪は地面に落ち、着地することなどできず、着地先の木を薙ぎ倒しながら転がってから停止した。
「……やった……の?」
「ん……たぶん……」
二人の見つめる先では、鎧猪が全身から煙を上げながら倒れていた。
「おい!どうなった!」
「二人とも大丈夫!?」
二人の元に、グリムとフィアナが走って近づいてきた。
「グリム」
「あぁ、確かめてくる」
剣を抜いたグリムが、ゆっくりと鎧猪に近づいていく。そして、何事もなく鎧猪に触れると、そのまま剣を納めた。
「よし!! 二人ともよくやった!!!」
その声を聞いた瞬間、ルミナリアとアルルメイヤは、その場に座り込んでしまった。
「はは……やったね……あはは!」
「ふふ……ルミナ、お疲れ様」
「うん! 二人とも本当によく頑張ったわ!」
緊張から解放された二人は、フィアナに抱き締められながらしばらくの間笑いあった
やっぱり戦闘シーンは難しいですね。というかちゃんと戦闘シーンになっているんでしょうか……(汗)
引き続き感想や誤字の報告等お待ちしております。
ではまた次回で会いましょう。




