治癒の魔法
気付けは20話……ここまで早かったような長かったような……
読んでくださっている皆さまには本当に感謝感謝です!
それでは、第20話です。どうぞ。
午後、ルミナリアたちは、神官長に会うために神殿を訪れていた。午後の神殿には、観光目的や祈りを捧げに来た人々でそれなりに賑わっているようだった。そんな中、ルミナリアたちは、受付の手伝いをしているシリルを見つけた。
「こんにちは、シリルさん」
ルミナリアが挨拶をすると、それに気づいたシリルがルミナリアたちへ振り向く。
「ん? あぁ、ルミナちゃんとフィアナ……とアルルメむぐっ!?」
シリルは、ルミナリアたちと一緒にいたアルルメイヤの姿に気が付くと、驚きのあまり大声を出しそうになった。しかし、フィアナがシリルの口を塞いだため、目立つような事態にはならなかった。
「シリル、事情は説明してあげる。でも目立っちゃうのはさすがに不味いわ」
フィアナの囁きに、こくこくとシリルが頷くと、フィアナはシリルの口を塞いでいた手を離した。
「ぷはっ……やー驚いたよ……なんで一緒にいるの?」
「ん、私もフィアナの家に住むことになった」
「……フィアナ」
「なにかしら?」
「誘拐は不味いよ?」
フィアナが無言で小さな火の玉を指先に浮かべる。
「待った待ったごめん!! 冗談だって!?」
「わかればいいのよ、もぅ」
フィアナは溜め息を吐くと、火の玉をその場から消した。その様子に気づいた周囲の神官達が笑っているところを見る限り、今のはよく見る光景なのだろう。
「神官長さまの所にいきましょう、そこで説明するわ」
「わかった、ちょっと待ってて」
シリルは、一度この場を離れることを他の神官に伝えると、すぐに戻ってきた。
「おまたせ、じゃあいこっか」
「ん、よろしく」
ルミナリアたちは、シリルの後に続き、歩き始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
神官長の部屋の前まで来ると、シリルが扉をノックした。
「神官長、フィアナたちが来ましたよ」
「そうか、入ってくれ」
「失礼します」
四人が部屋に入ると、アルルメイヤの姿を見た神官長が不思議そうな顔をした。
「おや? アルルメイヤ様、なぜこちらに?」
「ん、私もルミナの女神様に会う旅についていくことにした。今は私もフィアナの家に住んでる。もちろん、とーさまから許可はもらってる」
「そうでしたか。ほっほっほ」
アルルメイヤが、事情を説明すると、神官長は楽しそうに笑った。
「フィアナ……ホントなの?」
「国王様直筆の手紙があるけど、読む?」
「いや、いいよ……それにしても王女様と暮らすなんて大丈夫なの?」
「シリル、今の私はただのアルルメイヤ・ブラン。王家とは関係ない」
「え?」
「そうよ! 今はアルルちゃんも私のかわいい妹なんだから!」
「フィアナ……なにやってんのよ……確かに昨日より可愛いなって思ってたけど、また着せ替えてたのね……」
シリルは、その一言で近くにあったソファーに座り込んでしまった。ルミナリアは、その様子に苦笑するしかなかった。
「ほっほっほ。さて、では本題に入ろうかの」
神官長が、話を切り出すと、シリルがソファーから立ち上がった。
「じゃあ私は受付の方に戻りますね。豊穣祭の前で人が多くて……」
「うむ、頼むぞ」
「じゃあいってきます! ルミナちゃんも頑張ってね!」
「はい、ありがとうございます」
シリルは、小さく手を振ると、そのまま受付へと戻っていった。
「まずは、ルミナリアがどれだけ魔法が使えるのか知りたいのじゃが……教えてもらってもよいかな?」
「えっと、今のところ自分の意思で使えたのはライトと、朝使えるようになったオリジナルの二つです」
「ふむ、オリジナル? どんな魔法じゃ?」
「ん、たぶん見てもらった方が早い。ルミナ」
「うん、――きて」
アルルメイヤに促され、ルミナリアが宙から一本の杖、フィアナの家に置いてあるルミナリアの杖と同じ形のものを引き抜いた。それを見ていた神官長の目が驚愕で見開かれた。
「なんと……!?」
「これが私の魔法、ルミナスブランドです」
「これは私にも出来ない。ルミナ専用といってもいいような魔法」
「アルルメイヤ様にも出来ないほどの魔法を使えるとは……いったい何がきっかけでそんな魔法を?」
神官長の質問にピタリと固まるルミナリアとフィアナ。ルミナリアが、ちらりとフィアナを見ると、既にだらだらと冷や汗をかいていた。
「え……えっとー……その、朝すごく驚くことがあって、反射的に……?」
「ふむ、それが切っ掛けになったのじゃな……」
ルミナリアが、朝の出来事をぼかして伝えると、フィアナは安心したような顔をしていた。
「ふむ、それほどの魔法を使えるのならば大丈夫じゃろう。では、まずは治癒魔法について説明していくかの――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「治癒の光よーーーヒール」
ルミナリアが、右手に魔力を集中し、呪文を唱える。すると、右手に暖かな光が宿った。
「うむ、ではそれをフィアナの傷へと当ててみるのじゃ」
「はい」
ルミナリアは、神官長から初歩の治癒魔法、ヒールを教えてもらい、その実践を行おうとしていた。対象はフィアナ。先程、小さなナイフで指先を突き、傷を作ったのだ。ルミナリアは失敗するかもしれない、と遠慮したのだが。
「ルミナちゃんのためだもの! 私にやらせて頂戴」
と譲らなかったのだ。
「じゃあ……いくよ」
「ええ、お願い」
ルミナリアが、フィアナの指先をそっと撫でる。すると、先程まであったはずの傷は綺麗に消えてしまった。
「ん、成功」
「まさか本当に初めてで成功するとはのぅ……」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
ルミナリアが不安そうな顔をしていると、フィアナが、ルミナリアの頭をそっと撫でる。
「もちろんよ、ふふ」
「よかった……これが治癒の基本魔法なんですね?」
ルミナリアが安堵の息を吐き、神官長に話しかける。
「うむ、その魔法で治せるのは小さな傷までじゃ。大きな傷を治すとなると、更に強力な魔法が必要になる。その魔法にどうたどり着くかは人それぞれじゃ。それは魔法全てに言えることじゃがの。これからは、思い付いたことがあれば試してみるのも良いじゃろう」
「はい!」
「さて、今日はここで解散とするかのぅ」
神官長の一言に窓の外を見るフィアナ。外はまだ明るく、夕方にすらなっていない。
「あら、まだそんなに時間は経ってなかったのね」
「ホントだ……」
「うむ、フィアナよ、その子たちはまだ若い。ここで学ぶだけでなく、町で遊ぶこともよい経験になるじゃろう」
「神官長さま……ふふ、そうですね。ルミナちゃん、アルルちゃん。町に遊びに行きましょう」
「「うん!」」
フィアナと神官長は、嬉しそうな二人を見て優しく微笑んでいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ルミナリア達が去った後、神官長は窓の外を眺めていた。そこには仲良く歩くルミナリアたちの姿がある。
「あの子がここに来る度に驚かされるのぅ……あの魔法、ルミナスブランドといったか。今まで存在していた基本魔法からの派生ではない魔法か……さて、この先どんなことをしてくれるかわしも楽しみになってきたの。ほっほっほ」
神官長は、楽しそうに笑うのだった。
どんどん魔法を覚えていくルミナちゃん。次回、町に繰り出したルミナちゃんたちは何をするのでしょうか?
感想やご意見、誤字脱字の報告等ございましたらよろしくお願いします。
では、また次回で会いましょう。




